prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「万引き家族」

2018年06月24日 | 映画
一見家族のようなこの六人が実はどんな関係なのか、わかってくるのがかなり後になってから、それも丁寧に説明するわけではなくちょっとしたセリフでわからせるといった作りで、疑似家族がどうやって家族のような体裁になったのかいう展開ではなく、まず家族のようなそうでもないような人間たちを置いて、その関係の揺れをずうっと細かく描いていく。

そのうちに何が家族なのか、というかおそらく人間同士のつながりの最小単位のさまざまな揺れの可能性に向けて開かれていくのが静かにスリリング。
筋立てで引っ張るよりディテールを味読するタイプと思える。

出だしの食事の場面のそれぞれの配置や向いている方向がバラバラというあたりですでに何か違和感を感じさせる。

食事のシーンが何度も出てくるが、お米を炊いて食べているところが確か一度もない。もっぱらカップラーメンかカップうどん、そうめんといった麺類か、糖質としてビールをご飯代わりに空けている。
いわゆる一つ釜の飯を食べる、といった関係ではないということだろう。
あるいは米みたいに買うにはある程度とまった金額が要るのを出し惜しむのか、それ自体味がないものは物足りなく感じるという貧乏根性のたまものだろうか。

とはいえ、そうめんなど同じ容器を何人かでつついて食べているシーンはいくつかあるので、今度見るときは注意してみよう。

フィルム撮影らしいけれど、画面のグラデーションの豊かさが場面のニュアンスの豊かさにストレートにつながっている。

煮染めたような襖や冷蔵庫の汚れの質感、小綺麗な割に安い服と、ディテールの説得力がすごい。

子供に万引きさせるあたりでちらっとチャップリンの「キッド」が頭をよぎった。
(☆☆☆★★★)

「万引き家族」 公式ホームページ

「万引き家族」 - 映画.com

ホームページ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。