第一回目のStorytelling Camp in Canadaに参加した生徒のみなさん
初回にも関わらず全面応援を込めて生徒たちを参加させて下さった親のみなさん
ありがとうございました!
素晴らしい成果を上げたキャンプでした。
残念ながら参加を逃した方、来年こそはと考えている方に向けて完全レポートをお届けします。
StoryTelling Camp 2022 Complete Report
「参加した生徒たちの書いたストーリーの素晴らしい質」がこのレポートの主役です。
StoryTelling Camp目的
2022年Storytellingキャンプの目的は、参加生徒にいかにうまく学んでもらうか、でした。
人類は何千年もの間ストーリーを語り続けており、私たちの脳にはストーリーのDNAが備わり、ストーリーを認識し理解できるよう作られています。この地でこのキャンプで生徒たちが学んだように、ストーリーは情報や経験を共有するための素晴らしい媒体です。これまで蓄積して来た人類の歩み・学び(科学、テクノロジー、芸術、文学そしてビジネスにおいても)は、すべてストーリーの積み重ねです。
学んだこと
ストーリーとは?について次のことを学びました。
ストーリーとは何でどこから来たか
フィクションであれ、実話であれ、出来事について語ること
それぞれのストーリーには語り手と聞き手がいる
聞き手はストーリーを読む経験を通じ学んでいく
ストーリーを語るのは、情報・経験・態度・観点を伝え、楽しませること
人間は誰でもStoryTellerになれる
ストーリーの要素
登場人物(主要人物、その主要人物と敵対するもの)
設定(いつ、どこでの出来事か)
筋書き(何が起こったか)
ストーリーの流れ
紹介 ー サスペンス ー クライマックス ー 結末
ストーリーをいかに人を楽しませる面白いものにできるか
多様な文章構成
様々な長さの文章
ユーモア
サスペンス:アクション・冒険・対立など
最初にこのアルバータ大平原で生徒たちが学んだ様々なストーリー
キャビンの周りの大平原に生きる動物と、ロッキー山脈の動物のストーリー
どんな動物か
どこに住んでいるか
何を食べるか
どうやって生存しているか
ロッキー山脈
地球は常に階層を積み上げて来た
ロッキー山脈はどう出来たか
地殻変動プレート
はるか昔、世界の大陸はSupercontinentというひとつの陸地(Panagea)だった
それがどのようにして分かれ、移動したか
その動きにより地震がおこり、火山が出現し、山が出来た
The Badlands
遠い昔、恐竜が走り回っていた場所。今でも化石が出現している。
恐竜学
恐竜の歴史
文明
文明共通の側面と特徴
なぜ人間は街に住むのか
文明がどのように滅ぶか
優れたStoryWriterになるには、良いストーリーをたくさん読むこと。このキャンプでは、次のストーリーを一緒に読み、分析し、印象について語り合いました。
Jaws the Dog (by Robert McMillan)
Body Parts Jewelry Store Man (by Micheal Carter)
A Shocking Accident (by Graham Greene)
また、StoryWritingに必要な自分自身の観察を使うために、どうやって創造力を呼び出すかも学びました。特に次を観察しじっくり考えました。
大平原の大きな空の雲
この大平原で起こりうる対立
野生動物
昆虫
周りのあふれる自然
人間がいない環境
文明の利点とそれが滅び行く過程
今おそらく人間は人類の歴史上重要な文明崩壊に向かっているかも知れません。
気候変動や地球上の多くの種の絶滅により。
さぁ生徒たちが実際に書いたストーリーとは?
英語が母国語でない生徒でありながら、みんな驚くほど素晴らしいa monomyth story, a “mountain” story, a post-civilization survival storyを書き上げました。
Monomythは生徒たちが最初に書いたストーリーです。Monomythとは一般的にヒーローのたどる道のりを指します。主役が冒険に旅立ち、危機に直面し、戦いの後その危機を乗り越え、変化を遂げより素晴らしい人間となって故郷に戻る過程のストーリーです。
生徒たちには自分のMonomythの主人公を自分自身にするように言いました。設定は大平原のキャビン。自分が乗り越えるべき危機を簡単に見つけることができるよう、カナダ大平原のキャビンで起こりうる危険について前もって話し合いました。生徒はその危機を乗り越えるための解決法を考えるのが役目です。またこの乗り越えた危機がいかに自分を変え、その変化した自分が日本に帰るという結末のストーリーになりました。
このような訓練はカナダの学校では普通に行われています。
カナダの教育制度は生徒に1)問題をみつけ・認識し 2)問題解決スキルを使い乗り越えていく ことを奨励しています。カナダがこのような教育を行うのには、問題解決のスキルセットを持ったカナダ社会の大人たちが将来の問題を解決していけるとの目的があるからです。生徒がカナダの大学に来る時には、同じ教育を受けたクラスメートと同じレベルで勉強できる準備が出来たことになります。
Monomyth
ある生徒のMonomythでは、日本の家を出てからここのキャビンまでの車と飛行機での冒険を描写しました。キャビンでも冒険が続きます。竜巻が起こるんです。そこから生徒は自分個人の問題を竜巻にも経験させる筋書きにしました。自分がトマトが大嫌い、そして大のきゅうり好きですので、竜巻もトマト嫌いで、トマトをきゅうりに変える役目にしました。竜巻がトマトみたいなきゅうりを食べると、真っ赤な顔になり、きゅうりをいっぱい出してくれるとうストーリーです。日本に帰った後は、いつどんな危険があるかも知れないことを意識する自分に変化し、非常食と非常用バッグと、もちろんきゅうりも忘れずに台風の準備を怠りなくできるようになった自分を描写しMonomythを終えました。。
これは非常に充実した創造性豊かなストーリーで、カナダの教育制度でもAをもらえるレベルです。
Mountain Story
Monomythの後、生徒たちは “mountain stories”について学びました。
”Mountain Story"では、サスペンスが上がりクライマックスをむかえます。それらの筋書きをグラフにするとまるで山のように見えるところから “mountain stories”と呼ばれます。
Protagonist(主人公)をみつけるために、生徒にキャビンの前に座ってもらい、大平原の草の真っ只中で、雲のパターンを観察しました。雲のパターンから興味深そうな主人公を見つけられるまで。そして、生徒たちは見つけた主人公の雲をじっくり見つめ、一体何をしているのかを想像しました。Machikoは空の雲からストーリーを想像する名人ですので、いくつか見本のストーリーも即興で聞かせてもらいました。
ある生徒は、雲をじ〜っと眺めた後、買い物袋を持ちスキップしている女の人のような雲のパターンを見つけ、自分の主人公に決めました。そののストーリーでは、その女性はファッションデザイナーであり、これまで一生懸命働いたご褒美にショッピングモールに出かけることになりました。そこでフクロウの形をした中古のバッグをみつけ、一目惚れして買ってしまいます。
サスペンス部分は、帰り道で起こります。泥棒がその女性の手からバッグを奪い取ろうとしました。女性は抵抗し、クライマックスでは「お気に入りのバッグ」が2つに裂け、泥棒が逃げ出しました。悲しくバッグを眺める女性。でも、何か中に隠されていることに気がつきます。お金でした!結末では、女性は金をバッグの中からかき出し銀行でお金に換え、色んな動物の形をしたたくさんのバッグを買いました。
このストーリーを書いた生徒は「語り説明する」形で書き始めました。例えば「女性はファッションデザイナーでした。一生懸命働きました、ご褒美としてショッピングモールにでかけました。」と。しかしながら、カナダの指導者たちはストーリーは「見せるもの。語るのではない。」と教えます。読者がまるで同じ場所にいるような気になるよう、ストーリーを目の前に見せるような書き方をすること。それにより、読者の注目をつかむことが出来ると、教えます。私も同じ指導をしました。そうすると生徒はストーリーの導入部分をこう変えました。「ある暑い日、オリジナルTシャツを一生懸命デザインしていた女性がいました。デザインを終えると自分へのご褒美として、巨大なショッピングモールにでかけました。」この書き方は、前のよりはるかに娯楽性に富んでいます。「語らず、見せること」が出来たことをとても嬉しく思っています。
a post-civilization survival story
最後のストーリーでは、キャビンの5人と2匹の猫が文明崩壊後に生き延びた様子を書きました。
このストーリーへの設定と背景は私が用意しました:場所はここキャビン。90%の文明が突然新種のコロナウイルスにより滅んだという設定。生徒は生き残るために十分な食べ物をどう調達するかを考えることになりました。
生徒たちはストーリーのプランを立てる前にキャビンの周りを歩き回りました。どんな食べ物があるかを観察したようです。戻って来た生徒の顔には「アイデア湧いた!」と書いてありました。
生徒は素晴らしい創造性に満ちた解決を見つけました:キャビンのみんなは草を切り大きな丸い形にまとめる;2匹の猫は優れた嗅覚を使いファーマーを探し;私たち人間がその草を売るか、果物、野菜、肉とトレードする。もしファーマーが拒否したら、Machikoと私が楽しそうな世間話を始め、その間に生徒がそのファーマーが育てている「一番おいしそうな牛」を干し草の後ろに隠す。ファーマーが立ち去ったら、みんなでジャンボステーキを食べる、というものです。
Building a gate
身体を使ったプロジェクトも行いました。キャビンの門を作るプロジェクトです。穴を彫り、セメントで支柱の柱を固め、柱に穴を開け、門を取り付けることが必要でした。決して簡単なことではなかったです。この私たちのストーリーに生徒を巻き込むことを決めたのは、この作業から非常に多くのことを学べると思ったからです:道具を使い地面に穴をどうやって開けるか;コンクリートの混ぜ方;ドリルの使い方を学ぶ。私自身が愛媛に長年住んだ経験からもこのプロジェクトは生徒には非常に大きいと思いました。愛媛の土の色、硬さ、感じとニオイは私の育ったものとは相当異なりました。なぜか、その違いを理解することが、その土地(私の場合は愛媛、生徒の場合はカナダ大平原)やそこに暮らす人々を理解する大きな助けとなりました。
Critical Thinking
キャンプ滞在中にクリティカルシンキングの脳がすでに育ち始めた生徒もいました。素晴らしい質問が出来るようになったんです!
例えば:
カナダギース(雁)はなぜV字型のパターンで飛ぶのか、なぜ一列に並んで飛ばないのか
地層の色はなぜ違うのか
なぜアルバータの月はオレンジ色なのか
このようなクリティカルシンキングの質問はカナダの教育制度に適したものです。生徒たちは質問し、そこから自分で答えを見つけます。生徒には自分の質問の答えをどう見つけることができるかについても少し話しました。これが私の指導ゴールのひとつです。生徒に自分の疑問について自分自身でどう答えを探せばいいのかを教えていくゴールです。
まとめ
StoryTellingキャンプ指導を担当した私(Robert McMillan)には大きな驚きがありました。たった2週間で生徒みんな非常に良い出来のCreative Writingを書くことが出来たんです。自分自身の観察と英語力を使って。日本の生徒に聞くと、学校ではストーリーなど書かないとか。え〜〜〜!?と仰天でしたけどね。
そのハンディを考えると、生徒たちがこの限られた時間で生み出した結果はすごいことだと思っています。
特に驚いたのは、創造力です。日本の受身な教育制度にいる生徒に創造力を教えることは不可能に近いです。SotryTellingスキルは日本の教育制度では大して褒められるものではないかも知れません。その結果、日本の生徒全般、創造力ではカナダの同年代から大きく遅れています。
長年日本の生徒を指導し思うことですが、創造力は学校で教えられるものではなく、生徒それぞれに内在するスキルです。このキャンプでの生徒は周りを観察する時間が十分あり、しかも新しい周りに刺激を受け、Creative writing skillを発達させて行きました。この環境でこそ、可能な訓練だったと思っています。
キャンプで花開いたすごいスキルを消すことのないよう、これからも益々気合を入れて生徒たちを前に前に押し出して行きたいと思っています。
生徒たちが大きな宝物を手にいれたキャンプ。
私たちも大きな喜びをもらったキャンプ。
日本の生徒たち、こんなに伸びるんだぁ〜〜〜!
指導者冥利です。
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StoryTelling Camp の終わった大平原には秋がやって来ました。
草原は先っぽが黄色くなった草で覆われ、風に揺れ草がキラキラ輝いています。
生徒たちと水やりをしたひまわりは秋だけど「頑張る!」とどんどん花をつけています。
生徒が作った門の側の木の葉が日増しに黄色くなっています。
でかいオレンジ色の月が地平線から上るHarvest Moonももうすぐです。
さぁ、StoryTelling Camp 2023にはどんな顔が揃うでしょうか。
Robertはすでに来年の企画を立て始めました。
カナダStoryTelling Camp 2023にいらっしゃい!
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