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暴れる象と芸象9 「キングダム」の戦象

2016-05-08 09:17:56 | Weblog
写真は、20年ほど前に中国の会社との商談の際にいただいた贈り物。象牙の箸とうかがった。このような品をいただいていいのか、と驚いたのだが、使うにつれ、七宝の色は変わらないのに象牙とされる白い部分は茶色くなっていく。知人の見立てでは「牛の骨では?」と勝手気ままな憶測がとびかう。このとき日本側からはフィリップ社のひげそり機を送っている。

【『史記』のなかの象】
のちに秦の始皇帝となる人物がからむマンガ【キングダム】の戦闘シーンに象が戦争に使われるシーンがあるが、これは史実か、との質問をいただきました。

結論からいうと、秦国が象を戦象に仕立てて戦ったという詩や史実は残されていません。

秦の兵馬俑からも今のところ馬の兵団以外は発掘されていません。

試みに紀元前2000年頃の夏から前漢の武帝時代の紀元前91年頃まで書かれた『史記』を見ると、動物の象では、象牙製品にまつわる話とはるか西南にいる象の話の2種類があるのみです。

まず象牙製品。

《李斯列伝》には、秦国生まれでないものが重用されていることへの他の臣下の陰口に対して、秦出身ではない李斯が秦の始皇帝に、

「他国産のものですばらしいものは愛用しているではありませんか」

と弁舌する際に使われる「犀象之器」、異国の音楽の題名「象」。

李斯が「これらがなかったら、どうなさいますか?」とたたみかける弁論術から、始皇帝の心を動かすことができるほど象牙製品は最高の宝物の一つだったことがわかります。

《十二諸侯年表》の序文に書かれた

「殷の紂王に仕える箕子が象の箸をみた嘆き(紂為象箸而箕子唏)」。

これは『韓非子』にある話で
「象の箸に見合う様々なものを取りそろえはじめ、華美になっていき、最後に行き着く国の滅亡を予見した」
箕子の憂いという故事成語にもなっているエピソードです。

これらより殷末(紀元前1046年)や戦国末(~紀元前221年)の時代、象(牙)製品は国王が持つもののなかでも最上級に高価なものだったことがわかります。

【象に乗る国】
もう一つは西南の象。

《大宛列伝》で漢の武帝の命で張騫が西域から西南まで偵察した話のなかに出てきます。

大夏(現在のアフガニスタン北部の国)の商人から聞いた話として身毒(インド)の人民は象に乗って戦う(「其人民乗象以戰」)、と書かれています。

また、蜀(今の四川省)の南の昆明からさらに西に千里あまり行ったところに「乗象国」があり、名を「滇越」という報告されています。
その直後、漢は大夏への道を求めて「滇国」と通商を開始したとのこと。(然聞其西可千餘里有乘象國,名曰滇越,而蜀賈姦出物者或至焉,於是漢以求大夏道始通滇國。)

「滇越」と「滇」国が同じ国を指すのかですが、次回に。(つづく)
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