写真は文山壮族自治州の人里離れた奥地の村で暮らす子供。村の人は、かつて南京から移り住んだ苗族の子孫だという。一方で苗族だとも話す。この村まで車で通る道はなく、外界の人々との頻繁な接触は最近、始まったと、村の人々は話していた。これらの写真を見て、民族学の研究者は「目が少し青いようですね。不思議な民族ですね」と話していた。雲南の在来種はこのような人里離れた村々で、よく見つかっている。(2004年撮影。)
【雲南にしかない豆がある!】
さて、国連食糧農業機関のホームページにはオーストラリアと雲南農業研究所による共同研究が公表されています。
(「Collection of pea (Pisum sativum) and faba bean (Vicia faba) germplasm in Yunnan」
http://www2.bioversityinternational.org/publications/pgrnewsletter/article.asp?id_article=2&id_issue=156)
内容は、えんどう豆とそら豆を2004年、2005年に雲南各地の市場と農家で収集し、状況を詳細に聞き取り調査し、分析したものです。
フィールドワークの結果、えんどう豆、そら豆、それぞれ40種類あまりが発見され、うち1割ほどが研究所などで品種改良された新しい種で、残りはすべて彼らの求める雲南固有の在来種でした。(在来種は人里離れた自給自足の村により多く見られ、これらの中から今後の育種プログラムに有用なウイルス抵抗にすぐれた形質などを発見した、と締めくくられていました。)
地元の農家はこの在来種を「ご先祖さまから伝わった大切なもの」と考えていて、代々受けつがれた種子をとりわけては、また次の年に播種していました。
これは、逆の作用ももたらしていて種の保存を重視するあまり、
「地元の栽培条件に適応した種を、何世紀もかけて選抜していったもの、とは仮定できない」
つまり、雲南でもっとも栽培しやすい種が在来種、とは必ずしもいえないと、研究者は考察しました。
けれども、よく考えてみると、雲南の人の愚直さが、結果的に、他地域ではとっくに消えてしまった、昔ながらの種を保存していたのでは? と私は思うのです。
【豌豆粉はなぜ黄色い?】
以前、このブログでもご紹介した雲南のおやつに「豌豆粉」という、えんどう豆の甘くない羊羹があります。この写真を、雲南以外の地方出身の腕に覚えのある中華の料理人に見せると、
「ああ、満漢全席のスイーツの一つですね。作り方のコツは~」
とひとしきり説明した後、
「しかし、何でこんなに黄色いの? ぜったい何か入れていますね。」
と確信を持って答えます。
また、中国のブログなどを見ていると、雲南の「豌豆粉」の写真をブログのアップしている人に対して、北京や中国東北地方の人達が
「おいしそうですねえ。でもなんで、そんなに黄色いの?」
と、書き込んでいるのです。
雲南の人にとって黄色いのは、当たり前。けれど、それ以外の地域の人にとっては、その黄色はちょっと、普通じゃない、というわけ。
けれども、お互いにとって、えんどう豆の色はあまりに自明すぎて、会話が成り立っていないのです。
じつは、これこそが、雲南のえんどう豆の独自性を表しているのでした。
(つづく)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます