写真はポルトの川下りのハイライト・ドロワ川から大西洋側に涼む夕日。夕日にミルクをかけたような幻想的な光景だった。
【名橋をあおぐ】
さて「エンリケ航海王子」ゆかりの家を一通り見学して、外に出ると、目の前のドロワ川が夕暮れのまどろみ時でなんともいい雰囲気になっていました。
ふわふわとした気持ちで呼び子の声に誘われるまま、岸辺の簡易の机で売られているチケットを買い求めていて、気が付くと観光用の船に乗っていました。若夫婦と赤ちゃんも乗る平和な平船が、ゆっくり静かに進みます。
川の両岸には中世から抜け出したような修道院や家々が立ち並び、頭上には美しいアーチを描く鉄橋を仰ぎ見る贅沢な景色が続いていきます。いくつかある鉄橋のなかでも1877年の掛けられたドナ・マリア・ピア橋は、フランスのエッフェル塔を設計したエッフェルによって設計されたものです。
写真はドナ・マリア・ピア橋。
鉄の持つ硬質さのなかに優美さがあり、それが夕日に映えて、街をより高貴なものへと押し上げているよう。その景色のど真ん中を船はゆったりと通過していくのです。
そしてドロワ川の奥でUターンし、今度は川の河口を目指します。
白眉は1886年に建造されたドン・ルイス・1世橋。エッフェルの弟子によるもので優美さでも機能面でも負けていません。
写真はドン・ルイス1世橋。
そのうち川が広がり、まもなく大西洋というあたりで霧にけぶる甘いオレンジにミルクを溶かしたような色の夕日がまさに川に溶け込むように落ちていきました。そこから街を振り返るとすべての凹凸や苔むした丸みのある岩肌がやわらかい陰影を生み出して、まさに絶景。
夕日のオレンジが紫へと変わりかけるとまた桟橋へとUターン。振り仰いだ橋の上、建物のちょっとしたベランダの上、路上で人々がゆっくりと歩いています。みなが幸せそう。
しみじみと感じたのは世界遺産というものが世界をディズニーランド化させているなあ、ということでした。いうまでもなくディズニーランドは作りものだけど、こちらは本物。でもやがては本物らしさに寄せて、偽物の景色も作られていくところも出ることでしょう。その時はこれでいいのか、と、難しいことも考えたのですが、いま、その景色を思い出すと平和あればこそ、と尊くすら思えるのです。
(つづく)
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