石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇 (3)

2017-09-21 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0422BpOilGas2017.pdf

 

2017.9.21

前田 高行

 

(ほぼ10年周期で増加する埋蔵量!)

(3)1990年~2016年までの合計可採埋蔵量の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-1-G03.pdf 参照)

 1990年末の世界の石油と天然ガスの埋蔵量はそれぞれ1兆275億バレルと109兆㎥(石油換算6,880億バレル)で合計埋蔵量は1兆7,155億バレルであった。因みに両者の構成比率は石油60%、天然ガス40%であるが、この比率は2016年まで殆ど変っていない。

 

 埋蔵量は1991年に対前年比で6%増加、1兆8千億バレルとなりその後は年率1~2%で漸増、1999年には対前年比8.2%と大幅に増加して合計埋蔵量は2兆バレルを突破した。そして2002年に2.3兆バレル記録した後、数年間は低い増加率にとどまった。2010年には6%の大幅な増加率を示し合計埋蔵量は2兆8千億バレル弱になったが、その後2016年までは横ばい状態であり、特に2015年にはわずかではあるが前年を下回り、過去25年間で初めて埋蔵量が減少している。このように可採埋蔵量はほぼ10年周期で増加している。ちなみに2016年の埋蔵量は石油1.7兆バレル、天然ガス187兆㎥(石油換算1.2兆バレル)で合計埋蔵量は2兆8,802億バレルであり、これは1990年の1.7倍である。

 

 1990年から2016年までの過去26年間の平均成長率は1.9%である。次項に述べるとおり埋蔵量を生産量で割った可採年数は2010年まではほぼ一貫して上向いており、それ以降は漸減傾向を示している。このことから最近は石油及び天然ガスの探鉱・開発活動が低調に推移し、埋蔵量の追加が生産量の増加に追いついていないことを示している。

 

 これは最近の石油価格の下落により石油企業の業績が低迷、各社とも石油・天然ガスの上流部門の投資を削減したことが大きな理由と考えられる[1]

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp



[1] 「五大国際石油企業業績比較」P14 2009年~2016年設備投資額の推移 参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/0401OilMajor2016.pdf

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇 (2)

2017-09-20 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0422BpOilGas2017.pdf

 

2017.9.20

前田 高行

 

(世界一の埋蔵量を誇るイラン!)

(2)国別の石油・天然ガス合計埋蔵量

(表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-1-T01.pdf 参照)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-1-G02.pdf 参照)

 埋蔵量を国別に見ると、原油と天然ガスの合計埋蔵量が最も多い国はイランの3,691億バレル(以下いずれも石油換算)であり、世界全体の13%を占めている。イランは石油埋蔵量では世界4位(1,584億バレル)であるが、天然ガスの埋蔵量(34兆㎥、石油換算2,107億バレル)は世界一位である。

 

 イランに続くのがベネズエラ、サウジアラビア及びロシアであり、それぞれの埋蔵量はベネズエラ3,367億バレル(内訳、石油3,009億バレル、天然ガス359億バレル)、サウジアラビア3,195億バレル(石油2,665億バレル、天然ガス530億バレル)、ロシア3,125億バレル(石油1,095億バレル、天然ガス2,030億バレル)である。4カ国は原油と天然ガスの比率が各国により大きく異なっている。イランは原油と天然ガスの比率が43%対57%で比較的バランスが取れているが、ベネズエラは原油の比率が89%と圧倒的に高く、サウジアラビアも原油83%に対して天然ガスは17%に過ぎない。これに対してロシアは逆に原油35%対天然ガス65%であり、天然ガスの埋蔵量が原油の2倍近い。

 

 その他の国を原油と天然ガスの埋蔵量の比率で見ると、イランのように両者のバランスが比較的均等な国には米国(原油47%対天然ガス53%)があり、ベネズエラ或いはサウジアラビアのように原油の比率が高い国はカナダ、イラク、UAE、クウェイトなどである。一方ロシアのように天然ガスの比率が高い国にはカタール、トルクメニスタンなどがある。

 

 ロシアに次いで埋蔵量が世界で五番目に多いのはカナダの1,852億バレル(原油1,715億バレル、天然ガス137億バレル)である。これに続く6位以下の国とその埋蔵量はカタール(合計:1,781億バレル、石油:252億バレル、天然ガス:1,528億バレル、以下同じ)、イラク(1,762億バレル、1,530億バレル、232億バレル)、UAE(1,361億バレル、978億バレル、383億バレル)、クウェイト(1,127億バレル、1,015億バレル、112億バレル)、トルクメニスタン(1,105億バレル、6億バレル、1,099億バレル)の順である。

 

 注目すべきことは同じGCC産油国でも天然ガスが豊富なカタールに対してUAE、クウェイトは少ない。これらの国はいずれも発電或いは海水淡水化プラントの燃料として国内の天然ガスの需要が大きい。このためUAE、クウェイトなどは夏場にピークを迎える電力・水のために天然ガスを輸入しなければならないのが実情である。また世界一の石油輸出国であるサウジアラビアでもガス不足は深刻な問題であり国内ガス田の開発が急がれている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(9月20日)

2017-09-20 | 今日のニュース

・原油価格上昇。Brent $55.68, WTI $50.21

・露Rosneft、イラク・クルド自治政府のガスパイプラインに10億ドル以上投資

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇 (1)

2017-09-19 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0422BpOilGas2017.pdf

 

2017.9.19

前田 高行

 

 

(石油と天然ガスは一体として考えるべきである!)

はじめに

 BPの「BP Statistical Report of World Energy 2017」をもとに本シリーズで石油及び天然ガスの埋蔵量、生産量及び消費量(天然ガスについては貿易量も含む)のデータを抜粋して解説したが、最後に石油と天然ガスを合わせた形でその埋蔵量、生産量及び消費量についての解説を試みる。

 

 石油と天然ガスは常温常圧の状態で前者が液体、後者が気体の違いはあるものの本来は同じ炭化水素資源である。石油は運搬・貯蔵等の利便性に優れ、また用途としては燃料用のほか、石油化学原料にもなるため古くから広く利用されてきた。

 

 これに対して天然ガスは主成分がメタン単体であるため燃料として使用されることがほとんどであり、石油化学原料(メタノール、エチレンなど)としての利用は広く普及していない。加えて天然ガスは大気中への拡散を防ぐため密閉状態で運搬しなければならない。このため従来は生産地から消費地までのパイプラインが必要であった。しかし運搬・貯蔵方法としてガスを極低温で液化するLNGの製法が普及した結果、遠く離れた消費地に大量のガスを供給するLNG貿易が確立した。世界的なエネルギー消費の増大に対して天然ガスは石油の代替エネルギーとして需要が拡大している。さらに天然ガスは石油に比較してCO2の発生量が少ないため環境問題の観点からも強い需要がある。

 

 石油と天然ガスはそれぞれの発展度合いの違いにより現在も別々に取り扱われることが多いが、エネルギーとして見れば両者は殆ど変わらないのである。石油生産国の多くは天然ガス生産国でもあり、また石油消費国も同時に天然ガスの消費国である。生産国と消費国はそれぞれが石油と天然ガスのベストミックスを探っている。

 

 本稿では石油と天然ガスを合わせた埋蔵量、生産量及び消費量についてBPのデータをもとに解説を試みることとする。なお天然ガスから石油への換算率は10億立方メートル(以下㎥)=629万バレル(1兆㎥=62.9億バレル)として計算した。

 

 

1.世界の石油と天然ガスの埋蔵量

(2016年末の石油・天然ガスの合計可採埋蔵量は石油換算で2.9兆バレル!)

(1)2016年末の石油と天然ガスの合計埋蔵量

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-1-G01.pdf 参照)

 2016年末の世界の石油埋蔵量は1兆7千億バレルであるが、これに対して天然ガスの埋蔵量は187兆㎥であり、これは石油に換算すると1兆1,740億バレルである。石油の埋蔵量が天然ガスより約5千億バレル多く、両者を合わせた合計埋蔵量は2兆8,802億バレルとなる。

 

 埋蔵量を地域別に見ると、中東は1兆3,127億バレルであり、世界全体の埋蔵量の46%を占めている。続く欧州・ユーラシアは5,181億バレル(18%)であり、この両地域で世界の埋蔵量の64%を占めている。その他の地域については中南米3,756億バレル(13%)、北米2,975億バレル(10%)、アフリカ2,176億バレル(8%)、アジア・大洋州1,587億バレル(6%)である。

 

 本シリーズの石油篇及び天然ガス篇で触れたそれぞれの地域別埋蔵量と比較すると、中東は石油埋蔵量が全世界の48%を占めているが、天然ガスのそれは43%であり、石油の比率が高い。これに対して欧州・ユーラシアの石油と天然ガスの埋蔵量はそれぞれ全世界の9%及び30%であり、天然ガスの比率が3倍以上である。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今週の各社プレスリリースから(9/9-9/16)

2017-09-16 | 今週のエネルギー関連新聞発表

9/11 Shell Shell and Petrobras sign technical cooperation agreement to strengthen deep water partnership  

9/13 国際石油開発帝石 幹部社員の人事異動について  

9/14 国際石油開発帝石/伊藤忠商事 アゼルバイジャン共和国 カスピ海ACG 鉱区の権益期限の延長について  

9/14 BP The Azerbaijan government and co-venturers sign amended and restated Azeri-Chirag-Deepwater Gunashli PSA 

9/15 国際石油開発帝石 ノルウェー王国 バレンツ海西部PL767 鉱区(探鉱鉱区)の権益取得について  

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (24完)

2017-09-15 | BP統計

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」でまとめてご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0421BpGas2017.pdf

 

2017.9.15

前田 高行

 

7.天然ガスの価格(続き)

(かつてはヨーロッパ、米国の方が日本より高かった時代もあった!)

(2)日本のLNG価格を1とした場合のヨーロッパ、米国の天然ガス価格

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-5-G02.pdf 参照)

 ここで取り上げた日本とEUと米国の天然ガスの価格は日本がCIF価格であり、米国はパイプラインの受け渡しポイントHenry Hubにおける価格である。従って米国と日本を単純比較することはできないが、その点を含んだ上で日本のLNG価格を1とした場合の2000年から2016年までのヨーロッパ及び米国との格差を比較すると、まず2000年のヨーロッパ価格は日本の0.57倍、米国は0.89倍であった。つまりヨーロッパ価格は日本より4割安く米国価格は1割程度安かったのである。

 

 その後2002年までは3者の価格差に大きな変化はなかったが、2003年には米国Henry Hub価格が上昇、日本との相対価格は1.18倍に逆転した。原油価格が安定したため原油にリンクした日本のLNG価格が低く抑えられたのである。その後も米国の価格は上昇、2005年には米国価格は日本の1.45倍まで格差が広がった。つまり2003年から2005年までの3年間は米国の天然ガス価格の方が日本のLNG価格より高かったのである。一方この間にヨーロッパの対日相対価格も徐々に上昇し2005年には日本価格を上回り1.2倍になり、翌年も1.1倍となった。即ち2005年は日本価格が米国価格及びヨーロッパ価格のいずれよりも安かったのである。

 

 しかし2007年には再び日本価格がヨーロッパ及び米国価格を上回るようになり、特に2009年以降は原油価格の急騰に伴い日本の価格が急上昇したのに対しヨーロッパ価格はさほど大きな変動が見られず、米国はシェールガスの開発が本格化し日本とは逆に価格が急速に下落した。その結果、3地域の価格格差は拡大し、2012年には日本の価格は米国の6倍強になっている。2014年以降は原油価格が下落し、原油にリンクした日本のLNG価格も下がり、ヨーロッパ及び米国との価格差は縮小している。2016年は日本=1に対してヨーロッパ価格は3割強安い0.68倍であり、米国価格は日本の3分の1強の水準である。

 

 今後この格差がどうなるか予断を許さないが、豪州、東アフリカ等世界各地で天然ガスの開発が進み、また米国のLNG輸出が開始されるとLNGのスポット価格は下がる可能性がある。またパプアニューギニア、豪州、モザンビーク、米国シェールガスなどのLNGプロジェクトに日本企業が資本参加することで安定的な価格と量の確保が可能となる。さらに原油価格は現在1バレル50ドル前後の水準にとどまっており、日本の輸入LNG価格もそれに引きずられた形で低位安定することが見込まれる。一方米国ではシェールガスの減産により市場価格が回復すれば、日米の価格差が縮小する可能性もあると言えよう。

 

 歴史を遡って見ると、LNGが本格的に市場に登場したのは1997年にカタールと日本の中部電力が長期需給契約を締結した時からである。この時、米国或いはヨーロッパにおけるパイプラインを介した天然ガス価格はLNG価格算定の参考にならず、日本向けLNG価格は原油価格とリンクした価格体系が編み出された。

 

 1990年代後半は1980年代のOPEC支配の時代が終わり第二次オイルショック時には40ドル/バレルに達した原油価格が1998年には12ドル台にまで暴落し原油は市況商品とみなされるようになっていた。従ってこの時点でLNG価格を原油価格にリンクさせることは長期的な安定取引を望むカタール及び日本の双方にとってメリットがあったことは間違いなかったのである。

 

 EU或いは米国との価格差をとらえて、日本企業のLNG取引の稚拙さを非難する声があるがそれはあくまで結果論と言えよう。エネルギー資源の無い日本にとって石油及び天然ガスを長期安定的に確保することが至上命題であり、その時々の価格の高低に一喜一憂することは余り意味のあることとは思えない。

 

(天然ガス篇完)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(9月15日)

2017-09-15 | 今日のニュース

・クウェイト石油相:11月総会で協調減産再延長が合意できなければ、来年3月に臨時総会開催も

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

天然ガスは目先買い手市場に:BPエネルギー統計2016年版解説シリーズ(天然ガス篇23)  

2017-09-14 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」でまとめてご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0421BpGas2017.pdf

 

7.天然ガスの価格

(2012年の日米化各社は6.1倍、昨年は2.8倍に縮まる!)

(1)2000年~2016年の天然ガス価格の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-5-G01.pdf 参照)

 天然ガスの取引価格には通常US$ per million BTU(百万BTU当たりのドル価格)と呼ばれる単位が使われている。BTUとはBritish Thermal Unitの略であり、およそ252カロリー、天然ガス25㎥に相当する[1]

 

 市場の自由取引にゆだねられた商品は価格が一本化されるものであるが(一物一価の法則)、天然ガスについては歴史的経緯により現在大きく分けて三つの価格帯がある。LNGを輸入する日本では原油価格にスライドして決定されている。巨額の初期投資を必要とするLNG事業では販売者(カタール・オーストラリアなどのガス開発事業者)と購入者(日本の商社、電力・ガス会社などのユーザー)の間で20年以上の長期安定的な契約を締結することが普通である。この場合価格も両者間で決定されるが、その指標として原油価格が使われているのである。

 

 これに対してヨーロッパでは供給者(ロシア、ノルウェー、アルジェリアなど)と消費者(ヨーロッパ各国)がそれぞれ複数あり、パイプライン事業者を介して天然ガスが取引されており、EU独自の価格体系が形成されている。また完全な自由競争である米国では天然ガス価格は独立した多数の供給者と需要家が市場を介して取引をしており需給バランスにより変動する市況価格として形成される。その指標となる価格が「Henry Hub価格」と呼ばれるものである。

 

 ここでは日本向けLNG価格(以下日本価格)、英国Heren NBP index価格(以下ヨーロッパ価格)及び米国Henry Hub価格(以下米国価格)について2000年から2015年までの推移を比較することとする。なお参考までに百万BTU当たりに換算した原油価格も合わせて比較の対象とした。

 

 2000年の日本価格は4.7ドル、ヨーロッパ価格2.7ドル、米国価格4.2ドルであり、当時の原油価格は4.8ドルであった(いずれも百万BTU当たり)。ヨーロッパ価格が低く、日本価格及び米国価格及び原油価格は4ドル台で原油が最も高かった。この傾向は2002年まで続き、2003年には米国価格が一時的に原油価格、日本価格、ヨーロッパ価格のいずれをも上回った。

 

 2004年以降原油価格の上昇に伴い天然ガス価格もアップし、2005年の価格は米国価格8.8ドル、原油価格8.7ドル、ヨーロッパ価格7.4ドル、日本価格6.1ドルとなり、日本向け価格が最も安くなった。しかしその後2008年にかけて原油価格が急騰する中で日本価格とヨーロッパ価格が原油価格を後追いする形で急激に上昇した中で、米国価格は横ばい傾向を示したのである。その結果2008年は原油価格16.8ドルに対し日本価格12.6ドル、ヨーロッパ価格10.8ドル、米国価格は8.9ドルとなり、日本価格と米国価格の格差は1.4倍に広がった。

 

 2008年の反動で2009年には原油価格が急落、日本、EU、米国それぞれのガス価格も下落したが米国の下落幅が大きく、日米の価格差は2倍以上に広がった。2009年以降原油価格は再び急上昇したが、この時3地域の天然ガス価格は明暗を分けた。日本価格は原油価格に連動して上昇の一途をたどったのに比べヨーロッパ価格は緩やかな上昇にとどまった。そして米国価格は逆に下落した。この結果2012年は日本価格16.8ドルに対し米国価格は2.8ドルとなり、日本価格は実に米国価格の6倍を超えたのである。

 

 2014年から2016年にかけては原油価格が暴落したため、2016年のガス価格は3地域とも大幅に下落した。中でも原油価格にリンクした日本向け価格は大きく下がり、2016年は6.94ドルと対前年の3分の2になった。米国でもシェールガスの増産により価格が下落したが、下落幅は日本よりも小さく、その結果日米の価格格差は2.8倍に縮まっている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュースピックアップ:世界のメディアから(9月13日)

2017-09-13 | 今日のニュース

・サウジ、ベネズエラ、カザフスタン:OPEC・非OPEC協調減産延長で合意

・OPEC、来年の生産量を3,283万B/Dに上方修正

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (22)

2017-09-12 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」でまとめてご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0421BpGas2017.pdf

 

2017.9.12

前田 高行

 

6.カタールと日本の輸出入の動向(2006~2016年)(続き)

(減少に転じた日本のLNG輸入!)

(6-2)日本の場合

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G08.pdf参照)

 日本は世界一の天然ガス輸入国である。日本の輸入は全てLNGであり従って世界一のLNG輸入国でもある。日本のLNG輸入量は2006年の819億㎥から2008年には921億㎥に達した後、2009年、2010年と横ばい状態であった。しかし2011年には一挙に1千億㎥を突破、2012年には1,188億㎥に達した。これは再三触れてきたように原発停止による火力発電用燃料として天然ガスの需要が急増したためである。2011年及び2012年のLNG輸入の対前年増加率は14.4%、11.1%と二桁台の大幅な伸びであった。しかしその後は輸入の伸びは頭打ちとなり、2015年は対前年比で1.1%減少し、さらに2016年は前年比8.1%と大幅に減少、輸入量は1,085億㎥と5年前の2011年の水準にとどまった。

 

 2006年から2016年までの日本のLNG輸入を相手国別に見ると、2006年はインドネシアからの輸入が186億㎥と最も多く、これに次いでオーストラリアが157億㎥、マレーシアが156億㎥であり、第4位以下にカタール(99億㎥)、ブルネイ(87億㎥)が続いていた。しかしインドネシアからの輸入は2008年の188億㎥をピークに2012年には100億㎥を下回り、2016年の輸入量は87億㎥にとどまっている。インドネシアは国内の天然ガス消費の増加により輸出余力が無くなっており数年先には純輸入国に転落するものと思われる。またマレーシアも同様の事情であり日本の輸入はここ数年200億㎥前後で頭打ち状態にある。

 

 これら両国に代わる輸入先がカタール、オーストラリア及びロシアである。特にカタールは原発事故以後のLNGの緊急輸入先として大きな存在感を示した。即ちカタールからのLNG輸入量は2006年から2010年まで100億㎥前後で推移していたが、2011年には1.5倍の158億㎥に急増、さらに2012年には200億㎥の大台を超え前年比35%増の213億㎥に達し、2015年まではこの水準を維持していた。しかし2016年の同国からの輸入量は158億㎥で前年比22%の大幅な減少となっている。同年の日本の総輸入量は対前年比8.1%減であり、カタールからの輸入量はこれを大幅に上回っている。次に述べるようにオーストラリアからの輸入が急増しており、LNGの輸入源は2016年を境に大きく変化しつつあることを示している。

 

 オーストラリアの2016年輸入量は292億㎥であり、5年連続して輸入国のトップである。オーストラリアでは日本企業が関与したLNGプロジェクトが次々と稼働を開始しつつあり、今後安定した供給先となることが期待されている。ロシアは2009年に極東LNGプロジェクトが操業を開始し、同年37億㎥が日本に輸入された。その後輸入量は順調に増え2013年には116億㎥に達したが、その後は伸び悩み2016年の輸入量は95億㎥にとどまりオーストラリア、カタール、マレーシアに次ぐ第4位の輸入国となっている。なお上記各国の他、UAE、エクアトール・ギニア、オマーン、ブルネイなど約20カ国からスポット物を含めたLNGが輸入されており調達先が多様化している。

 

(貿易量完)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする