石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (21)

2017-09-11 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」でまとめてご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0421BpGas2017.pdf

 

2017.9.11

前田 高行

 

(6) カタールと日本の輸出入の動向(2006~2016年)

本項では世界第二位の天然ガス輸出国であるカタール及び世界トップの輸入国である日本の両国について2006年から2016年までの11年間の輸出相手先或いは輸入相手先を見てみる。

 

(頭打ちのカタールのLNG輸出。パイプライン輸出が伸びUAEが最大の輸出先に!)

(6-1)カタールの場合

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G07.pdf 参照)

 カタールはLNGの輸出量が世界一であり、パイプラインとLNGの合計輸出量ではロシアに次いで世界第2位である(前項参照)。カタールは2007年からUAE及びオマーン向けにパイプライン(ドルフィン・パイプライン)による天然ガスの輸出を開始したが、これを含めて2006年から2016年までの同国の天然ガス輸出の動向を見ると以下のとおりである。

 

 2006年のカタールの天然ガスの輸出量は311億㎥で全量LNGであった。最大の輸出先は日本向けの99億㎥であり、これに次ぐ韓国向けが90億㎥、インド向け68億㎥であり、この3カ国だけで同国の輸出の83%を占め、また輸出国の数はこれら3カ国に加えスペイン、ベルギー及びメキシコの計6カ国であった。2007年には英国、台湾などが新たなLNGの輸出先に加わり、またUAE向けにパイプラインによる輸出も始まり、LNG380億㎥、パイプライン8億㎥の合計388億㎥に増加した。2008年にはパイプライン輸出が本格的になり、UAEが日本を抜いてカタールの最大の輸出相手先となった。

 

 2009年にはカタールの輸出は2006年の2倍を超える678億㎥に達し、その後2011年には1千億㎥を突破、2006年の4倍の1,149億㎥と飛躍的に増加している。対前年比増加率でみると、2007年から2011年までは毎年20~40%と言う驚異的な増加率を示している。2012年以降は輸出の伸びはとどまっているが、11年間の平均年間増加率は16%という高い数値を示している。

 

 輸出総量は2013年に1,200億㎥を超えたがその後は停滞し2016年は1,245億㎥であり、過去4年間はほとんど増加していない。同国は2010年以前にLNG年産7,700万トン体制を整え世界一のLNG輸出国になったが、その後増設凍結(モラトリアム)宣言を行っている。しかしその間にオーストラリアなど世界各国で大幅な設備新増設が現在も行われており、その結果カタールのシェア世界一の座が脅かされている。このため同国は今年になって新たな設備増設により年産1億トン体制を目指すことを表明しており、今後の世界の天然ガスの需給ともからみ同国の動向が注目される。

 

  日本向けの輸出量を見ると、2006年から2010年まで100億㎥前後で安定していたが、その間にカタールの総輸出量が急増したため日本のシェアは2006年の32%から2010年には12%まで低下した。2011年の東日本大震災をきっかけに日本の輸入が急増、2014年の日本のカタールからの輸入量は219億㎥に達した、しかしその後は下落する傾向にあり、2016年の日本のカタールからのLNG輸入量は158億㎥とピークの2014年の7割にまで低下している。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(9月11日)

2017-09-11 | 今日のニュース

・クウェイト、10月積アジア向け原油35セント/バレル値上げ

・インド、豪GorgonのLNG価格引き下げをExxonMobilと交渉

・ベネズエラ、中国元、日本円などドル以外で原油を販売:大統領が通告

・中国、露Rosneftの株14%をGlencore/カタール投資庁から91億ドルで買収

 

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今週の各社プレスリリースから(8/27-9/2)

2017-09-09 | 今週のエネルギー関連新聞発表

9/4 Total Total Divests its Remaining 15% Interest in Gina Krog Field in Norway to KUFPEC  

9/5 JOGMEC 北海道大学と資源・エネルギー分野での連携・協力協定を締結~共同研究、人材交流・養成等の連携・協力等の推進へ~ 

9/5 出光興産 機構変更および人事異動に関するお知らせ 

9/6 JXTGエネルギー SSブランドの「ENEOS」への統一について 

9/6 BP New state-of-the-art subsea construction vessel launched in Baku to support Shah Deniz Stage 2 

9/7 JOGMEC ロシア連邦イルクーツク石油会社との共同探鉱事業開始に係る合意書締結について 

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(9月8日)

2017-09-08 | 今日のニュース

・メキシコ湾岸製油所操業再開で原油価格3日間続騰。WTI $49.16, Brent $54.20

 

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BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (20)

2017-09-07 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」でまとめてご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0421BpGas2017.pdf

 

2017.9.7

前田 高行

 

(ロシアと日本がそれぞれ輸出入世界一!)

(5) 2016年の天然ガス貿易(パイプライン + LNG合計)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G06.pdf 参照)

 2016年のパイプライン(以下P/L)とLNGを合わせた天然ガスの輸出(入)量は世界全体で1兆841億㎥であった。輸出量トップはロシアの1,830億㎥であり、内訳はP/Lによるものが1,690億㎥、LNGが140億㎥であった。世界の輸出全体に占める同国の割合は17%である。これに次ぐのがカタールの1,245億㎥であり、内訳はLNG輸出が1,044億㎥、P/L(ドルフィンP/L)はUAE向けの200億㎥である。第3位はノルウェーの1,161億㎥で、同国の場合は殆どがP/Lによる欧州各国向けの輸出である。上記3カ国が天然ガスの三大輸出国であり、3カ国の合計シェアは世界の39%に達する。その他の主な輸出国はカナダ、アルジェリア、オーストラリア、トルクメニスタンなどである。

 

 一方輸入国としては日本が1,085億㎥と最も多く、次いでドイツの993億㎥が世界第2位である。日本は全量がLNG、ドイツは全量P/Lと両国の特色が分かれている。世界第3位の輸入国は中国(724億㎥)であり、第4位以下にイタリア(651億㎥)、トルコ(451億㎥)、メキシコ(443億㎥)、韓国(438億㎥)と続いている。なお米国は名目上の輸入量は849億㎥であるが、一方647億㎥を輸出している。これを差し引いたNETの輸入量は202億㎥となり、世界13位の輸入国となる。さらに米国は近年シェールガスの開発生産が急増、国内での自給率が高まっている(第3項消費量(5)「主要国の需給ギャップ」参照)。従って輸入量は引き続き減少し、いずれ天然ガスの純輸出国になるものと思われる。

 

 輸入上位2カ国(日本、ドイツ)の世界全体に占める合計シェアは19%であり、輸出上位2カ国(ロシア及びカタール)のシェア28%に比べてかなり低い。輸出は少数の国に握られ、輸入は多くの国が群がっていると言えよう。

 

(続く)

 

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ニュースピックアップ:世界のメディアから(9月6日)

2017-09-06 | 今日のニュース

・仏Total、ノルウェー北海油田の権益をクウェイトに3億ドルで売却

 

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BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (19)

2017-09-06 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」でまとめてご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0421BpGas2017.pdf

 

2017.9.6

前田 高行

 

(4) パイプラインによる輸出入(2016年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G05.pdf 参照)

 2016年のパイプラインによる天然ガスの主な国の輸出入量は概略以下のとおりである。なおパイプライン貿易では米国とカナダのように相互に輸出入を行っている国がある。例えば2016年に米国はカナダから824億㎥の天然ガスを輸入する一方、カナダとメキシコへ合わせて603億㎥を輸出している。国境をまたぐ多数の天然ガスパイプラインがあるためである。この他国境をまたがるパイプラインが発達しているヨーロッパでは輸入した天然ガスを再輸出するケースも少なくない。本項で述べる各国の天然ガス輸出量或いは輸入量は輸出入を相殺したNETの数量である。

 

(世界のパイプライン貿易の2割強を支配するロシア!)

(4-1)国別輸出量

 パイプラインによる天然ガス輸出が最も多い国はロシアでありその輸出量は1,690億㎥、世界の総輸出量の23%を占めている。ロシアの輸出先は東ヨーロッパ及び西ヨーロッパ諸国である。第2位のノルウェーの輸出量は1,098億㎥(シェア15%)であり、年間輸出量が1千億㎥を超えているのはこの2カ国だけである。両国に次いで輸出量が多いのはカナダ(605億㎥)、トルクメニスタン(373億㎥)、アルジェリア(371億㎥)であり、カナダの輸出先は米国、アルジェリアは地中海の海底パイプラインにより西ヨーロッパ諸国に輸出している。なお冒頭に述べたようにカナダは米国と相互に輸出入を行っており、Grossの輸出量は824億㎥である。

 

 上記5カ国による輸出量は全世界の6割弱を占めている。従来パイプラインによる輸出は北米大陸とヨーロッパ大陸が主流であったが、最近ではトルクメニスタンから中国への輸出、或いはドルフィン・パイプラインによるカタールからUAEへの輸出など北米、ヨーロッパ以外の地域でもパイプラインによる天然ガス貿易が拡大しつつあり、カタールのパイプラインによる輸出量は200億㎥に達し世界第6位である。

 

(パイプラインによる天然ガス輸入量トップはドイツ!)

(4-2)国別輸入量

 2016年にパイプラインによる天然ガスの輸入量が最も多かったのはドイツで993億㎥であった。これに次ぐのがイタリア(594億㎥)、メキシコ(384億㎥)、中国(380億㎥)、トルコ(374億㎥)、フランス(323億㎥)、英国(241億㎥)である。ドイツの主たる輸入先はロシア及びノルウェーであり、イタリアはロシア、アルジェリア等から輸入している。英国はかつて天然ガスの輸出国であったが最近では純輸入国に転落しており、パイプラインによるほかカタールからのLNG輸入にも踏み切っている。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (18)

2017-09-05 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」でまとめてご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0421BpGas2017.pdf

 

2017.9.5

前田 高行

 

(3) LNG貿易(続き)

(今も圧倒的な日本の輸入シェア!)

(3-3) 2007年~2016年の国別輸入量の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G04.pdf 参照)

 LNG輸入の全体量は2007年の2,264億㎥から2016年には1.5倍の3,466億㎥に増加している。10年間を通じて国別輸入量が最も多いのは日本であり、2007年の888億㎥が2016年には1,085億㎥に増加している。この間2007年から2014年までは(2012年を除き)毎年一貫して増加しており、特に2010年、2011年の対前年伸び率は22.6%及び11.2%と2年連続で二桁の大幅な伸びを示している。これは日本において原発の運転停止のため火力発電用LNGの輸入が急増したことが主な要因である。

 

 しかし日本のLNG輸入量はその後伸び悩み2015年および2016年は2年連続して減少、特に2016年は対前年比8.1%と大きく減少、同年の輸入量は福島原発事故当時の2011年の水準に逆戻りしている。過去10年間における日本のLNG輸入が世界全体に占める割合は2008年の41%をピークに2010年には一旦31%に下がったが、その後2012年、2013年は37%に上昇、2015年、2016年は連続してシェアが低下し2016年のシェアは過去10年で最も低い31.3%となっている。

 

 日本に次いで輸入量が多いのは韓国であるが日本との差は大きい。同国の輸入量は2007年が344億㎥であり、2016年には439億㎥に増加しているが、それでも日本の輸入量の4割以下であり世界に占める割合は13%である。日本は近年輸入量が減少しているが当分の間世界一であり続けることは間違いない。

 

 LNGの輸入で近年大きな存在感を示しているのは中国である。2007年の同国のLNG輸入量は39億㎥にすぎず世界に占める割合も2%に満たなかったが、その後2010年には100億㎥、また2012年には200億㎥を超え、2016年のLNG輸入量は343億㎥に達している。この結果、世界のLNG輸入に占める割合も10年前の1.7%から2016年には9.9%に高まっている。

 

 この他の主なLNG輸入国はインド、台湾、スペイン、英国であるが、上位5か国は全てアジア諸国であり、特にそのうち4カ国(日本、韓国、中国、台湾)は極東アジアの工業国である。日本、韓国及び台湾は国内にガス資源が殆ど無く、またパイプラインで近隣国から輸入する手段も無いため天然ガスをLNGに依存しているのである。なお2000年には10カ国にとどまっていたLNGの輸入国の数は現在30カ国以上に増加している。LNG受入設備を建設中の国もあり、今後LNG輸入国はさらに多様化するであろう。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (17)

2017-09-04 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」でまとめてご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0421BpGas2017.pdf

 

2017.9.4

前田 高行

 

(3) LNG貿易(続き)

(全世界のLNG輸出の3割を占め続けるカタール!)

(3-2) 2007年~2016年の国別輸出量の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G03.pdf 参照)

 2007年に2,264億㎥であったLNGの輸出量は毎年伸び、特に2010年及び2011年の2カ年はそれぞれ前年比24%及び10%と言う二桁台の大幅な伸びを示し3,000億㎥を突破した。2012年及び2015年には前年比で減少したものの2016年のLNGの輸出総量は3,486億㎥であった。これは2007年の1.5倍であり、この間の年平均成長率は4.9%を記録している。

 

 国別で見ると2007年当時はカタールの輸出量は385億㎥で全世界に占める割合は17%であり、マレーシア、インドネシアが300億㎥弱であった。その後2009年から2011年にかけてカタールの輸出量が急激に増加、2011年には1千億億㎥を突破、世界に占める割合も3割を超えている。カタールは年産7,700万トン体制と呼ばれる世界最大のLNG生産能力を確立したことが飛躍の大きな要因である。このころから米国でシェールガスの開発が急速に発展しカタールの対米輸出の目論見が外れたため同国の過剰設備が危惧されたが[1]、福島原発事故によるLNGの突発的需要増で設備はフル稼働の状況となった。日本にとっては不幸な原発事故ではあったが、カタールには思わぬ僥倖だったと言えよう。但し2013年をピークにカタールの輸出量は足踏み状態となり、その結果市場シェアは下降気味である。

 

 一方でロシアがLNG輸出能力を高めつつあり、またオーストラリアでは新しいLNG輸出基地が稼働を始め、さらに米国でも輸出が始まるなどカタールの地位を脅かす動きが出ている。特にオーストラリアの伸びが著しく、2015年の輸出量は2007年の2倍弱の381億㎥に達し、世界シェアも10%を超えた。そして2016年は一挙に前年比1.5倍の568億㎥、世界シェアも16%に急上昇している。

 

 インドネシアはかつてカタールと並ぶLNG輸出大国であったが、ここ数年LNG輸出量の減少に歯止めがかからず2011年の386億㎥をピークに2016年は212億㎥とわずか5年で4割以上輸出が減っている。同国の天然ガスは生産量が頭打ちの傾向にある一方、国内の消費量は増加している。同国は大きな人口を抱えているため今後輸出余力が乏しくなるのは間違いなく、かつて石油の輸出国から純輸入国に転落したようにいずれ天然ガスについても同様の道を歩む可能性は否定できない。

 

(続く)

 

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[1] 拙稿「シェールガス、カタールを走らす」参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/0148ShaleGasQatar.pdf

 

 

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今週の各社プレスリリースから(8/27-9/2)

2017-09-02 | 今週のエネルギー関連新聞発表

8/27 ExxonMobil ExxonMobil Completes Acquisition of One of the World’s Largest Aromatics Plants  

9/1 JXTGエネルギー 組織の改正について 

9/1 国際石油開発帝石 オーストラリア イクシス LNG プロジェクト 台湾 CPC 向け LNG 船の命名式ついて  

 

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