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(ヴィオレット) マダム・ルプリユールは間違ってらっしゃらないと思うわ。
(ジェローム、大袈裟すぎる様子で。) この同盟は何ということだ? (立ち上がって。) それに、突然思い出したんだが、ぼくは明日までにスペイン舞踊に関する論説を提出する約束があるんだ。それを仕上げなくちゃ。失礼します、マドモアゼル。(出てゆく。)
十一場
アリアーヌ、ヴィオレット
(ヴィオレット、乾いた声で。) はっきり申します… それは出来ません。
(アリアーヌ) 何が出来ないと?
(ヴィオレット) 自分でもどうしてだか解りません、突然。あなたがすべてをご存じであることを、わたし、彼に言いませんでした。
(アリアーヌ) あなたは約束を守らなかった、と。それはとてもいけないことでしたね。
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(ヴィオレット) それでも、わたし、そうしていたら… でも、分かりません… わたしは何も解決させなかっただろうと、わたし、感じているのです… 反対に。
(アリアーヌ) それはほんとうね。
(ヴィオレット) どうして、そう思うことができますの?
(アリアーヌ) あなたの直観は私の直観と一致するのです。
(ヴィオレット) まあ! わたし、直観などありません。意識がゆるんでいて。それだけですわ。
(アリアーヌ) その反対だと私は思いますよ。
(ヴィオレット) いやですわ。それで、あなたは… わたしには、あなたが解りません… ある時はわたし、あなたを誰よりも讃嘆しますが、ある時は…
(アリアーヌ) え?
(ヴィオレット) 言葉がありません。当惑します。そう、まるで、わたし、倒れたみたいに。ぞっとします。どんな説明もしてくださる必要はありません。それどころか、あなたはどんな説明もわたしにしてくださることは出来ないと、わたし、思います。でも… ほとんど信じられないくらいのこの寛大さは… それから、あなたが強いたこの約束… そしていまのこの静けさ、すくなくとも表面的にはあるこの晴朗さ、これをあなたは守ることができていらっしゃる。わたしのほうは、自分のことを思うと… そう、このすべて、そしてほかの多くのこと… (つづく)
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(つづき) わたし、あなたに決して充分に言えません、どれほどわたしが、あなたとお近づきになったことだけでも、分に過ぎると感じているか。あなたを裏切ったこのわたしが… それでも、どうかわたしにお情けを…、わたしにお教えください。
(アリアーヌ) 私を讃嘆してはいけません。そして、もうひとつの、あなたが名づけることができないでいらっしゃる感情にも、ご自分を委ねてはならない、と私には思えます。いいですか、先ず、あなたが気を付けておられない事実があります。私は何年もの間、身体上の試練を忍ばなければならず、その試練を通過してきましたが、私の思うに、そういう試練を通過したなら、生というものを熟考しないことは不可能なのです… 言葉が正確ではありませんが、生をまったく新しい仕方で評価しないことは不可能なのです。ええ、そうです、さまざまな価値が違ってしまうのです。私が言おうとしたのは、道徳上のある種の取り決めは、健康を享受している人々によってしか、受け入れられ承認されることは出来ない、ということなのです。病気は、ヴィオレット… まあ! 私、勿論、どんな意味でも、病気がひとつの特権だとか、私たちに少しの免除でも与えるものだとか、言うつもりはありません。でも、私が私自身によって確かめることが出来たこと、それは、病気というものは、世界、つまり或る種の自然な秩序に対する、私たちの立ち位置を、変容してしまうものだ、ということなのです。それはまるで、私たちがそれまではうっすらと気づくことも出来ていなかった事物の一面に、はっきりと気づくようなものです。それは多分、世界のもうひとつ別の次元なのです。
(ヴィオレット) もしそれがほんとうなのでしたら、それは、それでも、特権ですわ。
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