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第四場
同上の人物、フィリップ
(セルジュ、フィリップを見ながら、アリアーヌに。) 時間をとってしまいました。申しわけありません。
(シュザンヌ) ええ、私たち、つけ上がってしまったのではないかと…
(アリアーヌ) いいえ、このようなお話ができたことはとても嬉しいです。
(セルジュ) ただもうひとつ、お訊ねしたかったことがあるのです。ヴィオレットと話される機会があれば、もしあなたが、あのバシニーとかいう男のことで、彼女がどういう心積もりなのか、彼女から探ることがお出来になるなら… ぼくは安心ではないのです… もしあなたが、あいつをご存じなら、あなたもぼくと同様にお考えになるでしょう…
(アリアーヌ) 最善をつくしますわ。わかりました。
(シュザンヌ) セルジュ、またやり始める気ではないでしょ? それでは、奥さま。お目にかかれてほんとうに嬉しゅうございました… (握手し合う。セルジュとシュザンヌ、外へ出る。)
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第五場
アリアーヌ、フィリップ
(フィリップ) さて、あのひとたちについて、とくに、ぼくには少なくとも風変りに思える、あの話のことを、説明してよ。
(アリアーヌ、うんざりした様子で。) もう言ったわ。セルジュ・フランシャールとは、もう治ったけど一時期私が世話をした女性の患者のところで再会したのよ。
(フィリップ) ヴィオレットというのは?
(アリアーヌ) その患者の妹よ。私、彼女と伴奏練習をするの…
(フィリップ) 解った。でもどうしてそのフランシャール氏は彼女にそんなに熱心に関心を持つんだい?
(アリアーヌ) ヴィオレットは彼の恋人だったの。そして彼は小さい娘さんの父親なのよ。
(フィリップ) 彼はその娘を放棄したのかい?
(アリアーヌ) そうは思わないわ。(つづく)
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(つづき)私の理解が正しければ、彼らは合意の上で別れたのよ。そして彼は、さっきの方と結婚したの。
(フィリップ) ほんとうに慎みのないのは誰だろう。
(アリアーヌ) 私たちには分からないわ…
(フィリップ) そのなかで、きみは?
(アリアーヌ) なんですって?
(フィリップ) この入り組んだ一件のなかで、きみがしなければならないことは何?
(アリアーヌ) 何も無いわ。もちろんのことよ。
(フィリップ) なぜ、あの人々は、きみの処へ来たの?
(アリアーヌ) 彼と再会したのは嬉しかったわ。彼には、一度私の処へ寄るように言ったのよ。
(フィリップ) しつこく嗅ぎまわる種類の男だな…
(アリアーヌ) 奥さんが同伴したのよ。でも彼はひとりで来たほうがよかったようね。
(フィリップ) それは妙だ…
(アリアーヌ) えっ?
(フィリップ) こういったすべてのことは、(つづく)
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