『ハムレット』と『オセロ』の主人公が入れ替わったら、どんな結末になるか。英国で学んだ大学時代、政治の試験でこんな問題が出た。想定外で一瞬、頭の中が真っ白になった。必死に考えて出した結論は「どちらも悲劇が避けられた」だった
▼ハムレットは慎重で賢い。「あなたの妻が浮気をしています」と言う部下にだまされず、妻も自分も死ぬことはなかっただろう。一方、オセロは直情型で勇敢だ。「生きるべきか死ぬべきか」などと迷わず、さっさと叔父を始末して恋人と幸せになったはずだ
▼組み合わせの違いで悲劇も大団円になり得ると気づかせたかったのか。だが試験を終え、同級生と回答を比べ合って驚いた。ハムレットが離婚したり、オセロが同性婚の合法化を訴えたりしている。想像力の欠如を痛感した
▼あれから30年以上たち、英国を含む海外では同性婚の合法化が進んだ。後れを取る日本では、現行法は「異性間で同じ名字」の結婚の形しか認めていない。だが、家族の姿は多様化している。事実婚や、出生時の性別にとらわれない生き方も
▼そうしたなか、同性パートナーと戸籍上同じ名字にすることを求めた審判で、名古屋家裁が変更を認めた。様々な支障に悩む2人が「社会観念上、夫婦と同様」と判断されたのは良かった。ただ、同性婚が認められたわけではない
▼いま、あの試験を受けたら何と答えようか。悲劇ではなく自由で寛容な結末がいい。
ハムレットたちにはどんな家族が似合うだろう。
郷冨佐子女史が担当者だと推測されます。
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