古い言葉で「メ」は鳥の総称だったそうだ。国語学者の金田一春彦さんが書いている。植え込みで忙しいスズメ。海辺を漂うカモメ。そしていま、ツバメが初夏の訪れを告げている
▼数多い渡り鳥の中でも特に愛されるのは、人家に近いところで子を育て、成長までを見せてくれるからだろう。きのう、駅への道をちょっと遠回りして、心当たりの古いビルを目指した。駐車場になっている1階の天井の隅。お、いたいた
▼枯れ草をくわえた1羽は、きょろきょろと辺りを見回すと巣へ。つがいのもう1羽が飛び出し、電線で赤いのどをふるわせる。頭上でするどくカーブを描くと、軽やかに飛んでいった
▼〈ついと出ちや/くるつとまはつて/すぐもどる/つういと/すこうし行つちや/また戻る(略)おるすの/赤ちやん/気にかかる〉。作者である金子みすゞも、小さな命をいつくしんで、一緒に空を舞っているのだろう。詩「燕(つばめ)の母さん」である
▼この燕という文字は、翼を広げて飛ぶ様を写した象形文字なのだそうだ。でもじっくり見ていると、口を大きく開けたヒナの顔にも見えてくる。目をつぶって、うぶ毛に包まれているようだ
▼見上げた巣は補修中らしく、ヒナたちが顔をのぞかせるには、もう少し時間がかかりそうだった。つがいを邪魔せぬようにそっと離れた。駐車場の持ち主さん、掃除が大変だとは思いますが、南からの居候をしばらく許してあげてください。夏本番まで。つばめ、ついばめ、ヒナをはぐくめ。
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