適性評価は「セキュリティークリアランス」という聞き慣れないカタカナで分かりにくいが、特定秘密保護法を拡大適用するのが実態だ。
政府は安全保障のために必要だとしているが、具体的に守りたい経済の重要情報を示さない。あいまいさを解消するためにも国会での熟議が必要だ。だが、政策の是非を判断できる情報も時間も与えられていない。「国民のため」と言われても、無条件に政府を信じろと言われているのに等しく、ひどい状況だ。
2012年末に発足した第2次安倍政権では、特定秘密保護法に続いて、安全保障法制の整備も進んだ。戦後日本が長い間、憲法9条の下では不可能としてきた集団的自衛権の行使を一部容認する内容だった。いずれも米国と日本の安全保障政策を一体化させる狙いがあり、今回の法案もその流れの中に位置づけられる。
「安全保障の考え方は経済分野にも広がっている」という政府の主張は、まさに米国の考え方だ。彼らは、人工知能(AI)や半導体の技術は軍事転用が可能であり、同盟国や同志国で中国を封じ込めなければならないと言う。日本にも適性評価制度が必要だというが、そのために民間人が政府の監視対象になることが許されるのか。
法案の問題点を、どれだけ広く深く、多くの有権者に知ってもらえるかが重要だ。民間企業に勤める普通のサラリーマンが適性評価の対象になる可能性がある。家族も含めて身辺を探られ、プライバシーが侵害されたり厳罰に処せられたりする可能性があるということを、一人ひとりの国民が考えてほしい。(聞き手・目黒隆行)
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なかの・こういち 1970年生まれ。上智大学
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