36人が死亡した2019年の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人などの罪に問われ、25日に一審・京都地裁の裁判員裁判で死刑判決を受けた青葉真司被告(45)が26日午後、大阪拘置所で朝日新聞記者との面会に初めて応じた。
青葉被告は裁判の時と同様、車いすを押されて面会室に姿を見せた。約20分間、記者と終始、目を合わせて語った。
青葉被告は死刑判決について「厳粛に受け止めたい」と説明。25日の判決までの心境は「プレッシャーを感じていた」と説明。裁判に参加した被害者遺族らの表情も思い浮かべながら過ごしたと語った。
裁判では多くの遺族が意見陳述し、「命をもって罪を償って」と迫る人もいた。判決後、京アニは「無念さはいささかも変わりありません。亡くなられた社員の無念を思うと、心が痛むばかりです」との談話を出した。
事件で息子を亡くした男性は、青葉被告が記者との面会で判決を「厳粛に受け止めたい」と語ったことに、「心からの言葉として受け止めたい」と話した。
◇
面会の主なやり取りは次の通り。
――判決から1日経過したが、今の心境は
自分がやったことの責任はある。重く受け止めたい。
――法廷で死刑と聞いた瞬間の心境は
人間なので、やはり極刑を下されてショックを受けないことはない。厳粛に受け止めたい。
――控訴して裁判を続けていくつもりか
(裁判を)続けないと発信もできないので控訴するつもりです。
――何を発信したいのか
こういう事件を起こした一人として、(一審の)裁判で全部話していくことにしたが、後に教訓にしていただきたい部分が少しある。
――これまで面会を受けなかった。なぜ受けたのか
死刑になった以上、何かを隠しながら生きていくのはどうかと。これからは出て行こうと思いました。
――拘置所ではどのように過ごしているか
(やけどの影響で)汗が出ない体なので、空調を利かせた部屋じゃないといけない。中では本を読んだりしています。
――どんな本を読んでいるか
IT関連です。ちょっと関心がある。
――昨日の判決後はどのように過ごしたか
一言で言えば、人と会いたくない。弁護士とは会い、普通に話はしました。
――判決前はどんな心境で過ごしていたか
プレッシャーを感じていました。30人以上も亡くなられているので、極刑は避けられないだろうと思っていました。
――裁判では、遺族とのやり取りもあった。遺族の顔も思い浮かべたか
はい。浮かんできました。
――法廷での遺族とのやり取りを通じ、何を感じたか
それぞれの人生があることを重く受け止めないといけない。一人ひとり、周りに認められて、頑張っている人がいた。痛感したのは、(被害者)一人ひとりの「顔」があるということです。
――公判では、青葉被告自身の半生も語った
今となっては、言い訳に過ぎないと思う。この年になって境遇がどうかというのは、どうかと思うこともある。裁判長も、この年齢になって境遇は影響していないと言っていたので、そう受け止めたい。
――自分が起こした事件と社会との関係をどう考えるか
最終的に我慢の限度を超え、自分みたいな事件を起こす人が出てくるかもしれない。どうしようもないと思います。
――秋葉原の無差別殺傷事件にも言及していた
他人事に思えないところがあった。
――他人事に思えなかったのは、なぜか
今の時代は、生き残るために食い合いみたいになっている。そういう時代を考えると、ああいう事件が起こったのは他人事とは思えない。
――青葉被告が裁判に出るため、治療に当たった医師らがいた。どう感じているか
(10秒ほどの沈黙の後)そこは保留にしておきます。支えてくれた人にはありがたいの一言しかない。感謝の言葉しかないです。
◇
ここで面会時間が終了。青葉被告は深く頭を下げて面会室を後にした。(戸田和敬)
昭和五十三年五月十六日 火曜日 生誕
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