<卓上四季>
帰ってくるあの山親爺
山でばったり出くわしたら、一体どうなるだろう。ヒグマである。恐怖で体が固まりそうだし、気の弱い人は失神してしまうかもしれない。事故が近年増えていることを考えても遭遇は絶対に避けたい▼こちらのクマさんならぜひ会ってみたい。北海道の銘菓「山親爺(やまおやじ)」のヒグマのキャラクターだ。<出てきた、出てきた、山親爺>。軽快な曲とともに顔を出し、ササの葉とサケを背にスキーで滑り降りる―。童話のようなかわいらしいCMだった。懐かしく思うのは30代以上の方だろうか▼これがおよそ四半世紀ぶりに復活する。道産子アーティスト2人が新たなCMソングを担う。歌手YUKI(ユキ)さんが歌い、音楽プロデューサー蔦谷好位置(つたやこういち)さんが編曲した▼YUKIさんはこのCMソングをコンサートの合間に歌うほど親しんでいたそうだ。「故郷に錦を飾るとはこのことです」「ガッツポーズをしました」…。今回出したコメントからは弾む心が伝わってくる。キュートで元気な歌声を聞かせてくれるに違いない▼山親爺はバターとミルクの風味が豊かな洋風せんべいだ。1930年に販売が始まったころは、酪農王国の雰囲気を伝えるハイカラなお菓子だったろう。それから94年にわたって千秋庵製菓の看板となってきた▼6年後に誕生から1世紀の節目を迎える。18日に登場する新CMが道内のスイーツ全体の後押しにもつながってほしい。
2024・3・14 北海道新聞 卓上四季