10月に入り、寒さとともに街中がピンクに染まりだした。
とくに病院はエゲツナイほどピンク。そう、今月は今の私には当然になってるピンクリボン月間だけど、3年前にこの月を迎えたときには、
派手可愛い病院に唖然としたもの。
その頃、私は術前抗がん剤を終え、手術までの間をハーセプチンだけでつないでいた、切ない乳がん1年生だった。
同時にある本が出版された。
形成外科医 佐武利彦先生の「乳がんを美しく治す」だ。
全摘後さらに放射線と言われていた、この頃の私には遠い言葉に思えた、美しく治す・・・・・・それでも、手に取ってしまった。
以降、この本は、私の再建までのバイブルとなっている。
医学的・技術的な内容は私がこまごま書いてもなんなんで、ここでは割愛するけど・・・・・
なにに惹かれたかというと、佐武先生の患者一人ひとりに真摯に向き合って、患者の苦悩をしっかり受け止めて再建の成功への力へ変えていこうとする姿勢が文章の随所に感じられたこと。読みながら、いつの間にか、泣けていたところもあった。
失ってみた当事者でなければ分かり得ない「苦しみ」を、「再建の喜び」を合わせ鏡とするように感じとってくれているように思えた。マイナスをプラスの力で引き寄せる。まるで磁石のN極とS極が引かれあうかのように。そして一つとなる。患者と医師が、そこでは確かにまじわっていた。佐武先生は「患者」を知っていた。
再建というのは、こんな先生と出会い、作り上げていくことなのだなぁ~と最高でいて当然の事を教えてくれた。そんな本だった。
そして穿通枝皮弁もわかりやすく、先端の事が書かれているのだから、当然、私のバイブルになるのだ!
そんな本との出会いがあり、もう一つの偶然が重なった。
何度かここでも書いたけど、私が再建したい!!そう本能の部分で感じたのが、実際に再建した人・その胸を目の前で見せて頂き、触れたときだった。うそのような光景・・・・そう思えるほど、気持ちがぐらぐら揺れたのを思い出す。だってね、そこには、自分と同じように片方の胸を失ったはずの人が、見事なシルエットでそこにいたのだから。
私がその頃頭で描く想像の中の乳がん女性の体は自分と同じ片方を無くした半分な人。なのに彼女はまったく普通の女性のシルエットでやわらかな胸をもっていた。まるで幽霊!?そんな一瞬の衝撃のあとは、感動としかいえない。
私もこうなりたいと心から欲したなぁ。
それが、佐武先生の患者さんでした。
そんな偶然は今では必然だったのかとも思います。
出会いが重なって、重なって、思いを重ねて、重ねて、今はとても大切に思える自分の体を授かった。
「乳がんを美しく治す」。現実になった。
思いをかなえてくれた私の再建の主治医、チームの先生にも改めて感謝。この出会いも必然だったと思う。