うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

声なく声が、響く

2020年10月11日 | ほくろたれ蔵の事

母ちゃんは、

お前が可愛くってしょうがないんだ。

なのに、

どうして気付いてやらなかったんだろう・・・

 

おはようございます。

小さな頃は、甘ったれの食いしん坊で、

ついでに、いつも目を離したすきに、ウンチを垂らして泣いていた。

 

ようやく自分で歩けるようになったかと思いきや、

もっと小さな子達がやってきて、

いつからだろうか。

お前は甘えなくなったし、泣かなくなった。

その代わりに、母ちゃんの手伝いをするようになっていた。

「たれ蔵、赤ちゃんに触るなよ」

母ちゃんがそう言うと、近くで大人しく見ていたし、

「たれ蔵、優しくな」と言えば、

はしゃぎたい盛りのくせに、赤ん坊には、そっと手を伸ばした。

 

生後3か月、まだまだ小さなお前に、

母ちゃんは、長い留守番をさせるようになった。

「たれ蔵、姉ちゃん達と居るから、留守番できるな?」

母ちゃんは、お前の返事も聞かずに、赤ちゃん達だけを連れて仕事へ出掛けた。

 

そんなある日、

母ちゃんが帰ってくるなり、お前の鳴き声を久しぶりに聞いたんだ。

キーーーって、超音波みたいな高音で、絞り出すような声だった。

あれ以来、お前の声は、いつも超音波みたいで聞き取りづらい。

いつ聞いても、そうなんだ。

 

病院で、簡単に調べてもらっても、

何の異常も見つからなかったから、

母ちゃんは安心して、

「たれ蔵の声は、そういう声なんだな?」と、

お前の頭を撫ぜると、お前は静かに撫ぜられた。

 

どうして、気が付かなかったんだろう。

今になって、母ちゃんは思い出したんだ。

たれ蔵の声は、そんな声じゃなかった。

お前を初めて抱いた、あの日、

お前は、そんな声で泣いちゃいない。

キンキンに冷えた小さな体から信じられないくらい、

大きな声が鳴り響いていた。

甘ったれの食いしん坊だった頃も、たれ蔵の声はうるさいくらいの声だった。

 

お前、

長い留守番をしていた間、ずっと泣いていたのか?

そのせいで、声をつぶしてしまったんじゃないか?

 

あの頃、

私はあえて、まだ幼いたれ蔵を留守番させた。

次に来た、子猫達とばかり居るようでは、

我が家の猫達のルールを覚えられない。

そう考えて、子猫達と引き離した。

たれ蔵にとったら、晴天の霹靂だったろう。

「どうして、僕だけ置いて行かれるの?」

と思ったに違いないが、

私は、たれ蔵を置いて行ったんだ。

 

その結果、

あの大人しいおたまが、たれ蔵には本気で唸るようになっていた。

置いてけぼりで、どうしていいか分からないたれ蔵は、

わんわん鳴いていたのかもしれない。

それが原因で、

成猫達が、たれ蔵を怖がるようになったのではないだろうか。

そんな事知りもしない私は、本気で威嚇しているおたまを叱りつけた。

あやも叱った。

「たれ蔵を虐めたら、許さんぞ!」

あの頃の私は、

時間も心も、余裕なんてものは、全く無くなっていたんだ。

もはや八つ当たりのように、おたまに詰め寄る私の足元で、

たれ蔵は体を擦り付けてきた。

まるで

「どうしたの?やめてよ、母ちゃん」と言っているようで、

その都度、私は冷静になれた。

 

気付いた頃には、

たれ蔵は、おたまやあやとも、良い関係性を築いていた。

おたまなんて、たれ蔵を誘って追いかけっこしている。

あやからは、おたまと並んで叱られているから、笑っちゃう。

 

私は、たれ蔵が可愛くって仕方ないのに、

たれ蔵に、なんにもしてやれてなかったって訳だ。

たれ蔵の声さえ、聞いてやれなかったんだ。

 

たれ蔵、ごめんな。

声、また出るようになるといいな。

 

今、これこれ、聞こえる?

聞こえるわけないよね、動画じゃないんだから。

小さな声で、キーって言ってるんだよ。

 

これは、あくびしてるだけなんだよ。ごめん。

 

たれ蔵、ずっと母ちゃんの側にいるんだぞ。

 

母ちゃんは、えっらそうにしてるが、

本当は、君たちのようになりたくて、

だから、君たちを見上げて、追い掛けているんだよ。