先日、名鉄資料館のMさんにお会いした際に「初三郎と印刷美術・デザインの進化」を本にまとめたらどうか、とのアドバイスをいただきました。拙著「美しき九州~大正広重・吉田初三郎」には2ページで簡単に記していますが、膨大な資料と印刷博物館などの取材協力によって本にまとめるだけの情報は持っています。初三郎のデザインに注力したビジュアル本を考えていましたが、印刷やデザインの知識や歴史をご存知ない方にとっては、それらの歴史を踏まえた解説が欲しいんだそうです。来年の課題として、まとめる気分になってきました(笑)。
写真は、関東大震災で印刷会社の多くが倒壊被災したを受けて日本国内に急速に普及したオフセット印刷やグラビア印刷など、当時の最先端印刷の見本や技術を紹介する「印刷美術大観」昭和7年版。
京都の和多田印刷、名古屋の一誠社などが吉田初三郎の鳥瞰図を見本として出品しています。初三郎の観光社資料を受け継いだご遺族宅や和多田印刷で、毎年発行さえれていたこれら書籍資料を確認し、自力で入手していたものです。
関東大震災から日中戦争が始まるまでの10数年、実は日本のカラー印刷製版技術は素晴らしく進化しました。それも戦争で崩壊し(機械破壊、職人技術者の枯渇)、戦前の先端カラー印刷技術に回復するのは昭和40年代以降のこと。NHK「花子とアン」でも村岡印刷を復興して、イギリスに負けない印刷製本をと夢を語るシーンがちょうど放送中ですが、私はドラマを出版・編集技術の視点からも楽しんでいます。
ちなみに「花子とアン」に登場する宇田川満代の主要モデルは作家・吉屋信子だと思うんですが、吉屋と初三郎は親しかった事が判っています(初三郎の直筆住所録にも吉屋信子や吉川英治、服部良一らの名と住所あり)。