気ままに

大船での気ままな生活日誌

大エルミタージュ美術館展

2012-05-11 09:51:06 | Weblog
中野孝次は、日本エッセイスト・クラブ賞受賞作”ブリューゲルの旅”の中で、こんなふうなことを述べている。青年時代から、西洋絵画というと”印象派”ではなければだめだ、というイメージが強く頭の中にあったが、ウイーンに留学し、美術史美術館に通っているうち、それが間違いであることがわかった。ブリューゲルの”雪中の狩人”に出会い、感動し、それ以来、ブリューゲルの作品に会うために欧州各国の美術館に訪ね歩くのだ。何故、こんなことをはじめに、書いたかというと、ぼくも似たような経験をもつからだ。ぼくは、食物と同様、美術も和風が好きで、西洋絵画というと、モネらの印象派が中心だった。それが、ここ二年ほどの間に、オランダ、ベルギー、ロンドン、パリの美術館を巡っているうちに、印象派前後以外の絵画にも、すばらしい画家、作品があって、なかなかいいじゃん、と思うようになってきたのだ。レオナルドとフェルメールは別格として、ブリューゲルもルーベンスも気になる画家となったし、(ぼくにとっては)”無名の画家”の名前も少しづつ知るようになった。

国立新美術館のエルミタージュ展。16世紀ルネサンス時代から始まり、400年にわたる西欧絵画の歴史がわかるように、時代順に5章に分けて展示されている。以前のぼくであれば、1~3章は駆け足で通り過ぎ、やっと、4,5章で立ち止まるという見方だったかもしれない。今回は各章、ほぼ平等の時間配分でみて、それなりに楽しむこともできた。杏さんの音声ガイドもよかった。いくつか印象に残った絵を書きとめておこう。

第1章 16世紀 ルネサンス:人間の世紀

16世紀ヴェネツィア派の画家の作品が中心。はじめに現れた、”祝福するキリスト”。巨匠ティツィアーノ・ヴェチェリオの晩年の作とのこと。一瞬、ロンドンで観たレオナルドの”救世主キリスト”を思い出した。ポーズが似ているだけですが。レオナルドダビンチ派のモナリザの”裸婦”もあった。この変型はよくみる。誰でも、モナリザを裸にしてみたいのだ。いつみてもいい(汗)。ロレンツォ・ロットの ”エジプト逃避途上の休息と聖ユステナ”そして、パルマを中心に活躍した初期バロックの画家、バルトロメオ・スケドーニ の描いた”風景の中のクピド”も印象に残った。女性画家ソフォニスバ・アングィソーラの”若い女性の肖像”。ウイレム・クラースゾーン・ヘダ”蟹のある食卓”。モノクローム風だった。

ティツィアーノ”祝福するキリスト”


第2章 17世紀 バロック:黄金の世紀

この章では、オランダ、ベルギー旅行でたっぷり観てきた巨匠たちが登場。17世紀フランドル美術を代表する画家ルーベンス、ヴァン・ダイク。そしてオランダ美術の巨匠レンブラントやライスダールら。レンブラントの”老婦人の肖像”。まるでモデルであることを忘れているように、何かを考え込んでいる老婦。こういう絵の前では長い時間、佇んでいたくなる。ペーテル・パウル・ルーベンスは”虹のある風景”と”ローマの慈愛”。アントウェルペン大聖堂の祭壇画のようないかにもバロック風な絵もみたかったですがね。そして、アンソニー・ヴァン・ダイク の”自画像”。イケメンですね。ルーベンスがお師匠さんとか。ヤン・ステーンもこの章、”結婚の契約”。

ルーベンス”虹のある風景”


レンブラントの”老婦人の肖像”


第3章 18世紀 ロココと新古典派:革命の世紀

18世紀のヨーロッパでは、フランスを中心として「ロココ」とよばれる美術様式が流行しました。太陽王ルイ14世時代の壮麗なバロック様式が、ルイ15世と愛妾ポンパドゥール夫人のもとで繊細で優美な表現に変化したのです。一方、イギリス産業革命やアメリカ独立戦争、そしてフランス大革命がおこり、市民革命と近代化の波が怒涛のように押しよせたのもこの時代です。ロココ美術は、王侯貴族の雅な生活を彩る最後の輝きであったといえます。(案内より)

ニコル・ランクルの ”踊るカマルゴ嬢”。オペラ座の人気ダンサーだった。エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランのうつくしい”自画像”。自分にうっとりし、自画像を随分、描いているらしい(笑)。マリー・アントワネットの肖像画もヴェルサイユ宮殿で描いている。西美でみたユベール・ロベールもここに。”古代ローマの公衆浴場跡”。リチャード・ブロンプトンの”エカテリーナ2世の肖像”。エルミタージュ美術館の実質的な生みの親だ。そして、ポスターでエロい姿をみせていた(笑)、ジョシュア・レノルズ の”ウェヌスの帯を解くクピド”。モデルの女性は、美貌と才気を武器に数々の著名人と浮き名を流し、特に対ナポレオン戦争の英雄ネルソン提督との恋で知られるそうだ。このポスターに魅かれて、美術展に行った男性も多いことだろう(爆)。ピエール=ナルシス・ゲラン の”モルフェウスとイリス”もよかった。この章は美貌の女性ばかりが目に付いた。

ピエール=ナルシス・ゲラン ”モルフェウスとイリス”


第4章 19世紀 ロマン派からポスト印象派まで:進化する世紀

市民社会が形成され科学技術が目覚ましく進歩した19世紀。芸術の都パリでは、画家たちが新たな表現を模索し、さまざまな絵画様式がめまぐるしく展開されました。

この章ではお馴染みの画家が登場。ウジェーヌ・ドラクロワ ”馬に鞍をおくアラブ人”、ルノワール”黒い服を着た婦人”、クロード・モネ ”霧のウォータールー橋”、映画”哀愁”で知られるロンドンの橋。そして、セザンヌ”カーテンのある静物”コロー、シスレー、ボナ、ボナール、ドニも。

セザンヌ”カーテンのある静物”


第5章 20世紀 マティスとその周辺:アヴァンギャルドの世紀

アンリ・ルソー ”ポルト・ド・ヴァンヴから見た市壁”、パブロ・ピカソ ”マンドリンを弾く女”、ドラン”木立”、そして、ちらしの表紙を飾る、アンリ・マティスの”赤い部屋(赤のハーモニー)”。東京では実に約30年ぶりの展示とのこと。

パブロ・ピカソ ”マンドリンを弾く女”



見終えて、ギフトショップでうろついていたら、こんにちわと女性の声。高校の同級生だ。シャンソン歌手をやっていて、来月、みんなで彼女のステージをみにいくことになっている。不思議とこの美術館では知り合いと会う。去年も、元職場の人から声をかけられた。

楽しい展覧会だった。さて、今日はどこへ行くか、いい天気になったし。







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