久しぶりに一気読み 『JSA 共同警備区域』(金 重明)
もう20年近く前に韓国の新人作家が書いた小説で、時間を忘れ目の疲れを忘れて読んでしまいました。
映画も作られ評判も良かったようですが、小説とはかなり内容が異なるようです。私はこの小説だけで充分、そしてこの小説のイメージを壊したくないので映画は観ていません。
出版当時の書評では、「ありえない荒唐無稽」ということで、酷評も有ったらしい。
その有りえないことというのは、朝鮮半島の南北境界線を警備する南北の兵士同士が交流し友情を剥ぐく育むということですが、後に実際にそういった事例が有ったということが分かり、作品の評価が一変したようです。
境界線を挟んだ南北兵士の交流と友情が、やがて取り返しのつかない悲劇に変わり、南北それぞれに都合の良い解釈(結論)で事件の解決が図られる。
中立国監視委員会所属の主人公(スイス人)の視点から書かれているが、韓国人の父を持つ主人公の葛藤や同じ民族なるが故の南北の深い溝など、巧にというよりはむしろ朴訥な書き方が、ノンフィクション風の現実味を感じさせます。
以前に読んだ実際の事件をもとにした『シルミド』(城内康伸)と本書は、不安定な半島の隣国人として、大変興味深い二冊でした。
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