マリヤンカ mariyanka

日常のつれづれ、身の回りの自然や風景写真。音楽や映画や読書日記。手づくり作品の展示など。

セバスチャン・サルガード写真集

2010-05-29 | book
セバスチャン・サルガードの写真が見たくて図書館にリクエストして受け取りに行ったら
3㎏もある大きな本でした。とても高価な本なので図書館はありがたいです。

一粒のチョコレート、携帯に使われている金属…
食べたり、着たり、便利に使ったりしているもの全て
天から降ってくるわけでも地から湧いてくるわけでもなく
世界のどこかの大地で誰かの手で生産され、
誰かの手で大地から掘り出され、誰かの手で加工されている、
全ては労働の結晶であることを忘れてはならないと写真は訴えます。

先進国と言われる日本の都市に住む人々はその消費を支える過酷な生産の現場のことなど殆ど考えることはありません。
それどころか最近の間違った自然至上主義、極端な清潔志向は
ますます肉体労働への差別視を強めていると思います。
アフリカで中南米でアジアの各地で、
サトウキビ、カカオ、タバコ、茶…繊維工場、屠場で働く人々、
鉄や鉛、金、チタンなどの鉱山、油田や運河の建設現場で働く人々、
朝から晩まで来る日も来る日も…子どもも年寄りも男も女も…
しかしその人たちの働きで生まれる資源も富もすべて先進国へ流れていき
そこで働く人々にその恩恵がもたらされることは殆どないのです。
あまりに多くの物を奪われているために、
対等な取引の立場に立つきっかけすら見つけられない労働者たち、
いつかそんな状況が変わることがあるのでしょうか?

この写真集は見るのが辛い写真もありますが、
一方、人間がもっている本来の力、命の輝き、労働の尊さも伝えています。
そして写真を見る者に、大地に足をおろして生きるとはどういうことか、
自分はどこに立っているのか、と問いかけるのです。

サルガードは1944年ブラジル生まれ、地球規模で極限の写真を撮り続けています。

「人間の大地、労働」岩波書店 1994年

去年NHKの日曜美術館で特集されていたようです。知りませんでした。
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2009/1129/index.html
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