【tv】ぶらぶら美術博物館「鳥獣戯画のすべて」
開催中の美術展や博物展を紹介する番組。今回は、東京国立博物館平成館で開催中(2021.5.15現在、緊急事態宣言により休館中)の「国宝 鳥獣戯画のすべて」を取り上げていた。見たいと思っていたのでメモ取りながら鑑賞。備忘メモとして残しておく。
甲巻・乙巻・丙巻・丁巻の4巻の全場面を一挙展示するという、史上初の企画展。
講師は東京国立博物館 絵画・彫刻室の土屋貴裕さん。今回の企画は土屋さんによるもの。
「鳥獣戯画」(Wikipedia)は国宝の中でも最も謎が多い作品。いつ誰が描いたのか全く分かっていない。高山寺に伝わっているが、いつ来たのかも不明。開祖である明恵上人(Wikipedia)が亡くなった際に、寺所有の美術品目録を作ったが記載がない。
【甲巻】
今展の話題でもある動く歩道での鑑賞。本来、絵巻物は巻き取りながら広げて鑑賞するもので、これにより物語が動いているように見える。それを再現するためには、動く歩道を導入した。
最も有名なのが「甲巻」だが、前半と後半で画力に違いがある。前半は動物たちもズングリしているが、後半はスマートで上手い。おそらく描き手が違うが、どちらが先に描かれたのかは不明。
①異時同図
平安時代後半の絵巻物に多用された"異時同図"で描かれる。例えば兎と蛙が相撲をしている場面で、取組みから投げ飛ばすシーンが同じ図の中に描かれている。別の2組を描いているわけではない。
②逆行性の構図
通常、絵巻物は右から左に向かって描かれるが、兎が猿を追いかける場面が左から右に向かって描かれている。
③土屋さんオススメの場面
甲巻と丙巻にしか登場しない猫が登場しており、兎に隠れて2匹の鼠が猫の様子をうかがっている姿が描かれている。後半の兎が猿を追いかける場面の直ぐ後。
【乙巻】
平安時代。動物が動物として描かれている。前半は日本にもいる動物、後半は外国もしくは空想の動物が描かれている。「動物生体図鑑」のような感じ。動物の並びの順番の理由はよく分からないが、甲巻と乙巻に登場する動物は重複していない。棲み分け?
犀(玄武):当時の人は空想だと分かっていた? 曖昧だったのではないか?
麒麟:花の角の方はメス。女子力がある。
豹:敷物として輸入されていた。手本帳を見て描いたのではないか?
山羊:もともと日本にはいなかった。飛鳥時代に海外から献上された。
虎:子供は犬化している。大人の虎は手本帳にあったが、子どもはなく身近な動物を手本にしたのではないか?
十二神将の織物なので、乗るスペースが必要なため胴長に描かれている。
獅子:阿形と吽形で描かれる。背景に牡丹が描かれている。獅子と牡丹は定型。
龍:雨を呼ぶと言われているので、雲とセットで描かれている。
象:普賢菩薩の乗り物。仏画を見ていたのではないか? 獏:霊獣。獏 vs 象。霊獣と動物。
【丙巻】
新事実発見! 前半は人物、後半は動物が描かれる。
前半、ボードゲーム始まり。賭け双六で身ぐるみはがされた人、妻が泣いている。
耳に紐をかけて競う。次の選手が準備している。
首引き。若い僧と老尼が首に紐を賭けて競う。尼が若い僧の足をくすぐっている。
濃い線と薄い線がある。濃い線は後世に描き足したと思われる。丙巻は鎌倉時代に描かれたと思われていたが、実は平安時代なのでは? 鎌倉時代よりも前に描かれた可能性が出て来た。
後半は動物。鹿の上に猿が乗っていて、兎が鹿の爪をチェックしている。競馬の蹄鉄チェックのようなイメージ。レース前?
実は2009年に解体修理を行った際、前半と後半は表裏に描かれていたものを、剥がして1枚ずつにしたことが分かった。相剝ぎという作業で、江戸時代に行われた。表裏どちらが先に描かれたのかは不明だが、タイムラグがあると思われる。
【丁巻】
鎌倉時代。描かている人物を見ると、あまり上手くない? かなり早いスピードで描いている。墨の濃淡を計算している。
甲巻 法会場面
法会の場面。甲巻の兎と蛙の法会シーンと一致。甲巻を見て描いている。狐がお経を読んでいるシーンは、鼻をかむシーンに変えていたりとパロディの要素が見られる。
複数の侍が描かかれたシーンでは、一人だけ侍が振り返っており、顔がきちんと描かれている。本来はちゃんと描けるという自己主張?
ただの下手ではない? 適当なんだよねという出演者の意見もあり。味という評価はあった? 丁巻が後世に残っているということは、単なるイタズラ描きではないのは?
【明恵上人ゆかりの美術品】
「重文 明恵上人像」
28年振りに公開される秘仏。60歳で死去。亡くなった後、50代の姿を彫る。平安時代終わり、1173年和歌山生まれ。東大寺で修行し、後鳥羽上皇より高山寺を賜る。
高山寺は学問寺であった。図書館や大学のような場所。そこに何故「鳥獣戯画」が伝わったのか? 書物などが持ち込まれた中に含まれていた?
明恵上人は厳しい修行をした人で、耳を切り献上した。像も右耳の上部分が欠けて表されている。CTスキャンにより胎内に巻物が収められていることが分かったが、重要文化財は簡単に解体できない。解体修理の機会があれば、その際に取り出して調査することになると思うが、いつになるかは分からない。
「夢記」
明恵上人は22歳から60歳で亡くなるまで、夢を記録していた。夢はお釈迦様からのメッセージだととらえており、仏教に結び付けて解釈していた。例えば、女性の姿を見た場合、女性は毘盧遮那仏を表しているのだと考え、その場面を絵に描いている。
女性と親しい関係になったなど赤裸々な記述もあり、明恵上人は焼き捨てるように指示して亡くなったが、弟子たちが残してしまう。
「重文 子犬」
明恵上人が運慶の息子である湛慶に作らせた。江戸時代には「重文 明恵上人像」と一緒に安置されていた。肉球も彫ってある!
この肉球を土屋さんが推しているそうで、壁に「重文 子犬」の肉球の画像を展示しているので注目!
昨年の7月に開催予定だったけれど、新型コロナウィルスの影響で開催延期となり、2021年4月に開催されたばかり。しかし、4月25日からの緊急事態宣言による東京都の休業要請により現在休館中💦 国宝は年間で展示できる日数の制限があるそうなので、再開されるかどうか微妙なところ🤔
美術品の管轄は文化庁なのかな? こういう時期だけに、なんとか特別ルールでお願いしたい🙏 是非見たい🙏🙏🙏
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