2013年7月5日発行の日本経済新聞紙朝刊の一面トップ記事は「特許ビジネス 官民連携 ファンドで買い取り海外へ貸与」です。サブ見出しは「日本の知財収入を拡大」です。
日本経済新聞社のWebサイト「日経電子版」では、当該記事は見出し「特許ビジネスで官民ファンド」と「知財の対価 新興国から」の二つの記事に分割されています。
この記事は、7月中に経済産業省系の官民ファンドの産業革新機構(東京都千代田区)が大部分の資金を出資し、パナソニックと三井物産がそれぞれ10億から20億円を出資して、合計約300億円の知的財産ファンドを官民連携でつくると、伝えています。
この記事では、特許庁の2012年の調査では、日本企業が国内で保有する特許約135万件の内で、未利用の特許は約47パーセントを占めているので、この「休眠特許」を内容を整備しグループ分けし、アジアなどの国々に、特許実施権のライセンスをして、日本企業の特許収入を増やすことを目指すという狙いです。
日本の大手電機メーカーが保有し、未利用な特許の中で「携帯電話機や液晶パネル、光ディスクなどに関連する未利用特許は、これから事業化を図るアジア諸国に、特許実施権のライセンスできると、パナソニックや三井物産が考えている」と記事は伝えています。見出しの中の「貸与」とは「特許実施権のライセンス」を意味していると理解できます。
今回、官民ファンドの産業革新機構が知的財産ファンドを今つくると、特許ライセンス事業が可能になると判断したかの理由は記事には書いてありません。ここが重要なのですが。
日本企業が出願した特許の約半分が未利用特許の「休眠特許」である傾向は、ここ20年間続いています。研究開発成果は当初の予定と違うものもいくつもでてくるために、何使えるか分からない未完の技術シーズもたくさん見つかるからです。そこが基盤研究のよさです。
このため、日本では日立製作所やNEC(日本電気)などは自社の未利用特許を外部企業向けの「開放特許」と名付けて、外部企業に販売してきました。
うわさでは、未利用特許事業に手慣れた日立製作所やNECでも、特許営業にかかる人件費と諸費用で、事業収支はトントンとみられています。意外と、未利用特許の特許実施権のライセンスは手間がかかります。
これもうわさですが、技術力が高い大手企業に特許実施権のライセンスすることは、実施権の供与だけで済むので、利益がでます。これに対して、あまり技術力がない中小企業や小企業に対して、特許実施権ライセンスをしても、彼らは使いこなせないために、ノウハウを含めた利用術を教えてほしいという事態に陥ります。
技術力がない中小企業や小企業にノウハウを含めた利用術を教えるには、大手企業の当該技術に詳しい技術者・研究者を約1年ぐらい、技術指導に派遣する必要があります。大手企業の技術者・研究者を約1年ぐらい派遣すると、1人当たり1000万円の人件費が発生します。この費用を、特許実施権のライセンス経費に含めることができないと、特許実施権のライセンス事業は赤字になります。この点が課題になり、日本企業の特許実施権のライセンス事業は利益が低調になっています。
米国では未利用特許の特許実施権のライセンス事業を専門に手がけるベンチャー企業がありますが、彼らはそれなりの対価を求めて、特許実施権のライセンス事業という技術移転事業を成功させる工夫をしています。その当該特許を提供した企業の従業員ではない専門家がノウハウを含めた利用術を考えるようです。
もう一つの問題点は、日本の大手企業が使わない未利用特許を、アジアの中堅企業が使いこなせるかという課題です。既に、韓国や中国、台湾などの大手企業は、日本企業の中で当該事業から撤退した企業から、当該特許を購入しています。この企業に続く二番手企業が、日本企業の携帯電話機や液晶パネル、光ディスクなど未利用特許を導入して、その事業に成功するのかどうかが問題です。
仮に、アジアの二番手企業が、日本企業の特許などを基にして、新規事業に参入する場合は、その当該日本企業と合弁事業を始めるケースが増えています。こうした合間をかいくぐって、今回設立する合計約300億円の知的財産ファンド会社が成功するには、かなり優秀な人材を投入する必要があります。
以前、NECが知的資産事業本部を新設し、未利用特許の特許実施権のライセンス事業を始めた時にも、同社のエース級人材を投入するといっていました。実際に営業のエースを投入しました。
たしか、1990年代には、日立製作所をまねて、日本の大手企業のいくつかは未利用特許の特許実施権のライセンス事業を始めました。しかし、日立製作所のようにはうまくいかなかったとみられています。
以前だめだったから今回もだめとは単純には判断できません。約300億円という巨額を投資してつくられる未利用特許の特許実施権のライセンス事業会社が成功する模索を続けてほしいものです。パナソニックと三井物産が優れた特許ビジネスを打ち立てることを願っています。
2010年8月に、産業革新機構はライフサイエンス系の知的財産(主に特許)に投資を行うファンド「LSIP」(エルシップ)を設立しています。この時は、知的財産戦略ネットワーク(IPSN、東京都千代田区)と共同で知的財産投資ファンドを設立しています。産業革新機構は「10億円を上限として出資を行う」と発表しています。
今朝、日本経済新聞紙の朝刊をみて、その一面記事について、感じたことをお伝えしました。本来は、別の話題を弊ブログに載せる予定だったのですが……。
日本経済新聞社のWebサイト「日経電子版」では、当該記事は見出し「特許ビジネスで官民ファンド」と「知財の対価 新興国から」の二つの記事に分割されています。
この記事は、7月中に経済産業省系の官民ファンドの産業革新機構(東京都千代田区)が大部分の資金を出資し、パナソニックと三井物産がそれぞれ10億から20億円を出資して、合計約300億円の知的財産ファンドを官民連携でつくると、伝えています。
この記事では、特許庁の2012年の調査では、日本企業が国内で保有する特許約135万件の内で、未利用の特許は約47パーセントを占めているので、この「休眠特許」を内容を整備しグループ分けし、アジアなどの国々に、特許実施権のライセンスをして、日本企業の特許収入を増やすことを目指すという狙いです。
日本の大手電機メーカーが保有し、未利用な特許の中で「携帯電話機や液晶パネル、光ディスクなどに関連する未利用特許は、これから事業化を図るアジア諸国に、特許実施権のライセンスできると、パナソニックや三井物産が考えている」と記事は伝えています。見出しの中の「貸与」とは「特許実施権のライセンス」を意味していると理解できます。
今回、官民ファンドの産業革新機構が知的財産ファンドを今つくると、特許ライセンス事業が可能になると判断したかの理由は記事には書いてありません。ここが重要なのですが。
日本企業が出願した特許の約半分が未利用特許の「休眠特許」である傾向は、ここ20年間続いています。研究開発成果は当初の予定と違うものもいくつもでてくるために、何使えるか分からない未完の技術シーズもたくさん見つかるからです。そこが基盤研究のよさです。
このため、日本では日立製作所やNEC(日本電気)などは自社の未利用特許を外部企業向けの「開放特許」と名付けて、外部企業に販売してきました。
うわさでは、未利用特許事業に手慣れた日立製作所やNECでも、特許営業にかかる人件費と諸費用で、事業収支はトントンとみられています。意外と、未利用特許の特許実施権のライセンスは手間がかかります。
これもうわさですが、技術力が高い大手企業に特許実施権のライセンスすることは、実施権の供与だけで済むので、利益がでます。これに対して、あまり技術力がない中小企業や小企業に対して、特許実施権ライセンスをしても、彼らは使いこなせないために、ノウハウを含めた利用術を教えてほしいという事態に陥ります。
技術力がない中小企業や小企業にノウハウを含めた利用術を教えるには、大手企業の当該技術に詳しい技術者・研究者を約1年ぐらい、技術指導に派遣する必要があります。大手企業の技術者・研究者を約1年ぐらい派遣すると、1人当たり1000万円の人件費が発生します。この費用を、特許実施権のライセンス経費に含めることができないと、特許実施権のライセンス事業は赤字になります。この点が課題になり、日本企業の特許実施権のライセンス事業は利益が低調になっています。
米国では未利用特許の特許実施権のライセンス事業を専門に手がけるベンチャー企業がありますが、彼らはそれなりの対価を求めて、特許実施権のライセンス事業という技術移転事業を成功させる工夫をしています。その当該特許を提供した企業の従業員ではない専門家がノウハウを含めた利用術を考えるようです。
もう一つの問題点は、日本の大手企業が使わない未利用特許を、アジアの中堅企業が使いこなせるかという課題です。既に、韓国や中国、台湾などの大手企業は、日本企業の中で当該事業から撤退した企業から、当該特許を購入しています。この企業に続く二番手企業が、日本企業の携帯電話機や液晶パネル、光ディスクなど未利用特許を導入して、その事業に成功するのかどうかが問題です。
仮に、アジアの二番手企業が、日本企業の特許などを基にして、新規事業に参入する場合は、その当該日本企業と合弁事業を始めるケースが増えています。こうした合間をかいくぐって、今回設立する合計約300億円の知的財産ファンド会社が成功するには、かなり優秀な人材を投入する必要があります。
以前、NECが知的資産事業本部を新設し、未利用特許の特許実施権のライセンス事業を始めた時にも、同社のエース級人材を投入するといっていました。実際に営業のエースを投入しました。
たしか、1990年代には、日立製作所をまねて、日本の大手企業のいくつかは未利用特許の特許実施権のライセンス事業を始めました。しかし、日立製作所のようにはうまくいかなかったとみられています。
以前だめだったから今回もだめとは単純には判断できません。約300億円という巨額を投資してつくられる未利用特許の特許実施権のライセンス事業会社が成功する模索を続けてほしいものです。パナソニックと三井物産が優れた特許ビジネスを打ち立てることを願っています。
2010年8月に、産業革新機構はライフサイエンス系の知的財産(主に特許)に投資を行うファンド「LSIP」(エルシップ)を設立しています。この時は、知的財産戦略ネットワーク(IPSN、東京都千代田区)と共同で知的財産投資ファンドを設立しています。産業革新機構は「10億円を上限として出資を行う」と発表しています。
今朝、日本経済新聞紙の朝刊をみて、その一面記事について、感じたことをお伝えしました。本来は、別の話題を弊ブログに載せる予定だったのですが……。