題名を見た時「これは高倉健さんの映画かな?」と思ったが、実際は香港映画だった。その中国題は「英雄本色」、英語題は「A Better Tomorrow」だそうだが、観終えた私は日本の題名が最も相応しいと思った。
映画はPart Ⅰが1986年(上映時間1h37m)、Part Ⅱ(1h45m)が翌年1987年に香港で制作されたもので、BSプレミアムで7月27日に一挙放映されたものを録画しておいたものを先日観賞した。
映画は、香港の偽札製造をする裏社会の組織に属した幹部の兄ホー(ティ・ロン)が肉親を思う気持ちから組織から離れようとする。しかし裏社会はそう簡単に離脱は許されない。ホーが思ったようにはいかずその間に肉親や親友たちを失うというある意味哀しいストーリーだが、その抗争での激しいガン(銃)アクションは驚くばかりの派手さである。本作はそれまでの香港映画の主流だったコメディ映画やカンフー映画とは一線を画し、公開時には大ヒットとなり香港映画の新しい流れを作った記念碑的映画と言われているという。
さてその題名であるが、私は日本の題名が最も相応しいのではないかと先述した。それは中国題の「英雄本色」という意味は「英雄の真の姿」というような意味らしいが、裏社会に属した幹部を “英雄” と呼ぶには違和感を感ずるのだ。さらに英語題の「A Better Tomorrow」は「明日は良い日になる」と解されるが、なぜ肉親や親友が次々と殺されるストーリーが明日に希望を見いだせるのか理解に苦しむ。対して日本題の「男たちの挽歌」は、親友や肉親の死を悲しみ、裏社会で幅を利かせていた男の晩年の悲しさを描いものと素直に解釈できるからである。
映画には香港が生んだ三大スターが競演している。一作目ではマーク、二作目ではケン(映画の中でマークとケンは双子とされている)を演じたチョウ・ユンファは香港映画からハリウッドに進出し国際俳優の道を歩んだという。また、組織の元幹部役のホーを演じたティ・ロンは早くからカンフー映画で人気を集めた俳優で、一時低迷するもこの映画で再び脚光を浴び香港映画で数多くの主演を務めたという。そしてホーの弟役キットを演じたレスリー・チャンはアイドル歌手としてデビューし、香港で熱狂的な人気をはくした俳優だそうだ。
※ 写真左からレスリー・チャン、ティ・ロン、(一人おいて)チョー・ユンファです。
そうした俳優たちが出演したこともこの映画の大ヒットに繋がっているようだが、何と言ってもこの映画の最大の特徴は前述したような派手なガンアクションである。銃のことはよく分からないが、単発式の銃はもちろん、連射式の機関銃のような銃も多用され、はては火薬を大量に用いた爆発シーンなど、日本映画ではお目にかからないような派手な戦闘シーンは驚くばかりであった。いったい何人の人が死んだり、負傷したのか??
映画を観終えて、つまらぬことを連想した。香港は近年の中国本土からの締め付けが強まり、香港が香港でなくなりつつあると言われている。はたして今の香港でこうした派手な映画を制作することは可能なのだろうか?などと連想してしまった…。