原題は“FIRE SALE”なんだけどな…。
楽しみに待っていたサラ・パレツキーの新作(早川書房)。
前作の『ブラック・リスト』が2004年だから、あれから2年近くがたったことになります。
この作品で12作め。
第1作の『サマータイム・ブルース』がアメリカで出版されたのが1982年だから、じつに20年以上、女探偵V・I・ウォーショースキーは読者に愛されてきたことになります。
フェミニストで気が強い。がむしゃらでタフだし、不正はあくまでも追及。闘争という言葉がけっこうぴったりくるV・Iだけど、この本ではちょっとイメチェン。
シカゴのサウスサイド。出身校であるバーサ・パーマー高校の恩師に、病気の自分の代わりにバスケット部のコーチをやってくれと頼まれ、しぶしぶ女子生徒の面倒見を引き受けるのです。
そして、部の女子生徒たちの抱えるトラブル解決にのりだし、最後までケアするV・I。
マクファーレンコーチが回復の見込みのうすいガンであることを知ると、練習の帰りにコーチの家によっては、食糧を届けたり、話し相手になったり。
優しい…。
とことん彼女たちを面倒をみようという姿勢に、「落ち着いたな」という感想をもつのは、わたしだけではないと思うなー。
もっとも、タフなのは相変わらず。
工場の爆破で肩に大怪我を負ったり、夜を徹してゴミの埋立地を歩き回ったり、
おお、そのアクションは拳銃でドンパチやらなくても、手に汗握る緊張感。
ピリリと芥子のついた揚げたての春巻きです。
春巻きがいやなら、焼きブタ、それともなかったらシュウマイというのはいかが?
中華料理の飲茶じゃないんですが、とにかく、そんなふうに美味しくて、楽しくて、満足できる作品です。
V・Iの恋人であるモレルのジャーナリスト仲間として、英国人の女性ジャーナリストが登場するのだけど、この女性がいくらなんでも軽薄じゃあありませんか、ワレツキーさん、V・Iに肩入れするあまり、優秀な対抗馬をひどいめにあわせちゃって。
読者としては溜飲が下がったりするんだけど、やっぱり、こういうキャラの設定は、どうでしょね。
それでも、相変わらず読ませてくれます。
だから、サラ・パレツキーは大好き。
またまた、次回作を待ち望むのです。
ところで、今回のウィンディ・ストリートというタイトル、どういう意味なんだろう?
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サラ
ナツミ
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