『君の名は』を映画館で観たとき、
新海誠監督の存在をまったく知らなかっただけに
新鮮だった。
あれだけの大ヒットの理由もよくわかる。
“時間を巻き戻すことができたら…”
それは誰もがもつ共通の、切実な願いなのだから。
天気についても、似ているといえば似ている。
映画の中にこんなセリフがあった。
「天気って不思議だ。ただの空模様にこんなにも気持ちを動かされてしまう」
天気は自然現象の大元。
雨ばかり続くと「晴れてほしい」と切実に願う。
そして久しぶりの晴れ間は、ほんとに心がホッとする嬉しさがある。
犬も猫も昆虫も、植物も、喜ぶ。
さて、このアニメ映画はファンタジーSFだ。
その天気の扱い方も、現実とは少しずれている。
雨がつづいて、ずっと続くのだ。
ようやく晴れてもまた雨。
そういう天候のなかで、“100パーセントの晴れ女”
である陽菜の不思議な存在がある。
アニメの中の神主の説明によると、
何百年も前に「天気の巫女」と呼ばれる
天気を治療する巫女がいた。
陽菜は今に生きる天気の巫女。
雨を止めて天気を晴れにすることができる、特殊な能力の持ち主。
そして、最後のシーン等から鑑みるに
世界の天気は陽菜の肩にかかっているという設定のようだ。
結末は賛否別れるらしい。
映画のセリフにこういうのがある。
「あの夏の日、あの空の上で、わたしたちは世界の形を決定的に変えてしまったんだ。」
SFをほとんど読まないから、世界を救う「セカイ系」作品群のことは知らないけれど、
そういう作品群に親しんでいれば、少女一人の肩に世界の形がかかっている
という突飛さは、突飛でもなんでもないのかな。
アニメに描かれる東京の景色は、見慣れたものであるのに美しかった。
東京タワーも歌舞伎町も、あれもこれも、見たことあるよねー。
伊豆七島から家出してきた少年は
新宿近くのうらぶれたビルの地下にある編集プロダクションに拾われ
ライターの仕事を手伝ってなんとか生活していく。
そんなときに出会ったのが、晴れ女の陽菜という少女。
映画は息もつかせぬ展開で、面白かった。
どっちかというと裏社会路線で興味深い。
家出少年を雇う、小さな編集プロダクションを営む圭介のキャラがなかなかいい。
わたしの好きなハードボイルドに出てきそうなキャラだ。
小栗旬が声を演じていた。
ラッドウィンプスの歌も映画の内容にマッチして
巧みに挿入され、盛り上がる。
歌詞もいいのだ。例えば
「あきらめたものと、賢いものだけが勝者の時代に、どこで息を吸う」
なんて、なかなか書けないなー。
だからこの映画は、興味深い内容の、『君の名は」とは違ったテイストのアニメ。
結末の賛否なんて、それぞれ勝手に考えればいいんじゃないかな。