暴力団の侵食を食い止める盾がない-。宗教法人法に暴力団排除規定を追加するよう福岡など9県が要望を続けながら、国が応じていないことが分かった。9県が危惧するのは「法の穴」だ。宗教法人は税優遇措置があるのに現行法に暴排規定がなく、脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)を狙う反社会的勢力が法人役員となって支配することが懸念される。暴力団員にも「信教の自由」が保障されているとはいえ、専門家は「暴力団員の信仰と、法人の役員になれるかは別問題」と指摘する。
現実と乖離
「宗教法人法には暴力団の介入を防ぐ規定がない。70年以上前に制定された古い法律とはいえ、現代にそぐわなくなってきているのではないか」。福岡県の宗教法人担当者は、暴排規定の追加を要望するに至った思いをこう打ち明ける。
背景にあるのは、特定危険指定暴力団「工藤会」(本部・北九州市)の存在だ。工藤会を巡っては市民を巻き込んだ銃撃事件などが相次ぎ発生。