ワヤンクリッはヒンドゥーの叙事詩ラーマーヤナとマハーバラタをダラン(影絵師)の操る人形により演じる。
ダラン(影絵師)は槌で人形の箱を叩き演奏が始まる。カヨン(生命樹)の影がスクリーンに映し出され、次にワヤンクリッが現れる。ワヤンクリッの最後には再びカヨンが現れて終わる。
以下は絵画やバティックに描かれたワヤンクリッ文様で、絵画はバリのレストランで、バティックはなぜかシンガポールの博物館に豊富に展示されておりそこで撮影した作品群です。
参考
ワヤンの人形遣い師は、僧侶やバリアンと同様に宗教的な専門家とされダランと言う。ダランはひとりでいくつもの人形を操り登場人物を声色で演じ分ける。1回の上演に100体の人形が使われることもあるそうだ。
ダランは古代ジャワ語カウィ語などの言語に通じていなければならない。レゴンで吟唱する人もダランと呼ばれる。
スクリーン中央にダランが座る上に小さな椰子油ランプがぶら下がっている。ダランの座る左手に大きな四角で薄い箱があり人形が入っている。
開演時にダランは、左手に木片(Japala)を持ち、箱を打ち鳴らす。人形を操りながら右足の指に木片を挟み打ち鳴らす。
ダランのうしろにはグンデル・ワヤン(青銅製鍵盤楽器のガムラン)があり大小一対計4台で演奏される。場面に合わせて早くなったり、ゆっくりになったりと玉を転がしたような音色を出す。
マハバラータはグンデルのみで、ラーマヤナはクンダン、チェンチェン、クンプルが加わる。
人形を右には善者を左には悪者と振り分けていく。ダランは新鮮なキンマの葉に石灰とガンビルをつけビンロウヤシのタネと一緒に噛む。シリーと呼ばれる嗜好品だ。
炎が不規則な模様をスクリーンに写し出しグヌンガン(カヨン)が揺れる。グヌンガンは先の尖った大きなうちわ風で宇宙を象徴していると言われワヤン・クリットの開演には必ず用いられる。
インドの古代叙事詩マハバラタのパンダワ物語でワヤンがスクリーンに影を映し出す。
他の演目にはラマヤナ、ワヤン・チャロナラン、登場人物をすべて動物に置き換えたワヤン・タントリがある。すべて善と悪の戦いであるが、最後には善が勝利をおさめる。3~5時間と長い上演でストーリーがわからないと退屈するかもしれない。