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バリに滞在生活を6年間送ってからすでに11年が経った。ようやくこの書をまとめることができた。
はじめに
バリの聖地巡礼をまとめる動機はバリ・ヒンドゥーと、かつてこの地にも栄えた仏教の関係への興味だった。
ボロブドールの石畳を踏みしめながら、静かにそびえるストゥーパを見上げた。ジャワ島の大地に根を下ろすこの巨大な仏教遺跡は、かつてこの地に栄えた仏教の名残を伝えている。しかし今、インドでもジャワでも、仏教は影を潜め、代わりにヒンドゥーの神々がその姿をとどめている。
この地で栄えたかつての仏教は日本の大乗仏教とは異なる趣を持つ。信仰の形も、祀られる神々も、ヒンドゥーの影響を色濃く受けていた。もしかすると、それが仏教の衰退を招いたのかもしれない。仏教とヒンドゥーとの境界が曖昧になり、やがて違いを失っていったのだろうか。それとも、悉皆成仏を説く平等の思想が、厳格な階級社会には馴染まなかったのか。
謎はそう簡単には解けないが眼前に遺跡を観て何かを深いところで感じた。宗教はそれぞれの地で受け入れ可能な形に変容し、結果受け入れられ、あるいは異教の攻撃を受けて滅び忘れ去られていく。まさに諸行無常であり仏教の本質なのだ。仏教は如何に異教の攻撃に弱いかもこれらの歴史が示している。(日本では幸いにも攻撃的な異教が存在しなかった)
この「バリ聖地巡礼」でそれが感じられればそれでいいのだ、それで十分ではないかと旅の後で感じている。なおジャワ島のボロブドールも「バリ聖地巡礼」で一括りにしたことをお断りしておく。
2025年2月26日
内容
はじめに
ボロブドール
プランバナン
べサキ
スマラプラ
サラスワティ
ゴアガジャ
タマン・アユン
タナロット
ウルワツ
ティルタ・エンプル
グヌンカウイ
聖地巡礼の豆知識