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「アレクサンドロス大王のモザイク画」200万個のタイルの調達先
アレキサンダー・2004年アメリカ合衆国映画・監督オリヴァー・ストーン。紀元前4世紀のマケドニア王アレクサンドロス3世の生涯を描く。
広大な領土を広げ32歳でこの男のあまりの制服欲に部下がついてこなくなる。それゆえのストレスからくる過度の飲酒による死を迎えた稀代の男の生涯を描いている。最後のインド遠征が最近の興味と重なって面白かった。
インドではアショカ王碑石があちこちに発見されているが、19世紀の英国考古学者によるとインド西部の一つはアレキサンダーの碑石ではないかと一時は思われたらしい。この時代にフビライなどと同じくらい広大なエリアを占領した男がいた。
ヒットラーのように人類にとって迷惑な男だったのか、あるいは文明の発展と拡張に避けられない人物だったのか。2千数百年を隔てるとどちらが正解なのだろうか。疑問を残したままだ。オリヴァー・ストーンは意見を表明することなく淡々と描く。
このアレキサンダーはインドネシアではイスカンダールと呼ばれる。かつてバリに滞在していた頃にイスカンダールさんと呼ばれる日本人の女性がいたので記憶に残っている。おそらくアレキサンダーが紀元前にインド西部にやってきてその末裔を残したのか、あるいは名のみ受け継いだのか、バリとインドの結びつきを垣間見る思いがする。
16年前のナポリ・ポンペイ旅行ではモザイク壁画を見た。
紀元前333年イッソスの戦いでペルシア王ダレイオス3世とアレキサンダーの一騎打ち
ペルシャ王のアップ。
ポンペイ遺跡の「ファウヌスの家」で発見されたアレクサンドロス大王のモザイク画は、ポンペイの中でも最高傑作とされる。横約5.8メートル、縦約3.1メートル、約200万個のテッセラ(モザイクに使われる小片)で構成され、現在はナポリ国立考古学博物館に展示されている。このモザイク画は、紀元前333年の「イッソスの戦い」を描いたもので、マケドニア軍がペルシャ軍を打ち破る様子が壮大に表現されている。
テッセラの調査と色彩の発見
2020年、ナポリ国立考古学博物館がこのモザイクの非侵襲的修復プロジェクトを開始。赤外線サーモグラフィ(IRT)や携帯型X線蛍光分析装置(pXRF) などの技術を用いて、テッセラの元素を特定した。その結果、このモザイクが白、茶、赤、黄、ピンク、緑、灰、青、黒、ガラス質の計10色のテッセラで構成されていることが判明した。特に、アレクサンドロス大王の顔には異なる化学組成のピンクのテッセラが使用され、光の反射を巧みに操ることで、表情豊かに見せる技法が用いられていた。この芸術的な技術こそが、「古代美術における彼の肖像として最も象徴的なもの」 と研究者たちは評価している。
テッセラの産地と意外な調達先
研究チームは、ローマ時代に使用されていた採石場を調査し、テッセラの産地を特定することに成功した。
- 白色のテッセラ:イタリアのアプアン・アルプス採石場の「マルモル・ルネンシス」と関連。
- ピンクのテッセラ:ポルトガル産。
- 黄色のテッセラ:現在のチュニジアの古代都市シミットゥス。
- 濃い赤のテッセラ:ギリシャのマタパン岬産。
この研究結果は、ローマ帝国の広範な貿易ネットワークと、芸術作品に対する高度な素材選定の実態を示している。
修復の課題とモザイクの脆弱性
研究者たちは、モザイクから天然ワックスと石膏の痕跡を検出。これは1831年の発見時に行われた修復作業で施された保護層と考えられる。また、モザイクの裏面を内視鏡検査したところ、ポンペイからナポリ国立考古学博物館へ移送された際の石膏ベースに空洞部分が多く存在することが明らかになった。これにより、モザイクの構造的な脆弱性が確認され、修復の際に慎重な対応が求められると指摘されている。
まとめ
アレクサンドロス大王のモザイク画のテッセラは、ローマ帝国全域から慎重に選ばれた素材で構成され、巧妙な技術によって壮麗な色彩と表現を実現していた。一方で、修復の課題も浮き彫りになり、今後の保存と保護に向けたさらなる対応が求められることが明らかになった。