○ 種類株式、例えば配当優先株等は、一般的に特定少数の者に付与されますね。1人のときも多いですね。議決権の無い優先株式の場合もありますが、内容(議決権や配当)は普通株と同じ、但し残余財産分配権を普通株式よりも優先するというだけで(継続企業の前提のある企業ですので)実質普通株と変わらないものまであります。普通株に、取得請求権をつけて、財源規制のかからない一般株主と同様の普通株への転換条項をつけるときもありますね。いろんなバリエーションの種類株が出てきました。
○ 一方、会社法では、108①IIXで拒否権付種類株式を発行できるようになりました。即ち、「株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、--)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの」という規定で発行できるようになりましたね。しかし、わざわざ「拒否権付種類株式」などと言って発行しなくても、定款の規定の仕方にもよりますが、かなりの総会決議事項で、同様の効果即ち拒否権を持つ種類株主が作れると思いますので、今回は、「拒否権付種類株式では無い拒否権のある種類株式」について考えて見ましょう。
○ 種類株主総会の規定は321以下ですね。322(ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会)の柱書では以下の様に規定しています。「種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該行為は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。」続いて13号に亘って「次に掲げる行為」の記載があります。募集新株・新株予約権、株式併合・分割、合併、会社分割、株式交換・移転等が該当行為とされています。(株式分割がなぜ記載されているのかよくわかりませんが)
○ 種類株主は、通常特定少数に発行されます。もし1人だけに発行されれば、その株主がこの種類株主総会で承認を拒否すれば、拒否権をもつことになりますね。損害を及ぼすおそれという限定が付いていますが、解釈にもよりますが、広く解釈すれば損害を及ぼすおそれの無い場合というのはかなり限定される、即ち殆どのケース種類株主総会で承認を取らないといけませんが、種類株主が1人の場合は、その株主が拒否権を持つことになります。仮に、甲種種類株式を1株10万円でA社が保有し、普通株は100万株x10万円で多くの株主に発行していてもですね。
― 例えば、創業社長が甲種種類株式1株を保有し、ベンチャーキャピタルその他には多くの普通株式を募集すれば、お金は少しで、会社をかなりコントロールできるということですね。私も会社を作るときは、こういった種類株を持ちたいですね。もっとも私の場合は出資してくれる奇特な人がいるかわかりませんが?
○ 上記と関連し、種類株主の総会決議が必要だという規定は、合併、株式交換・移転等の規定のところにもあります。「損害を及ぼすおそれ」という限定はありませんが。吸収合併・株式交換の総会決議の規定は783③ですね。「吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社が種類株式発行会社である場合において、合併対価等の全部又は一部が譲渡制限株式等(譲渡制限株式その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。)であるときは、吸収合併又は株式交換は、当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く。)の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。」(一部省略)
― ここで言う法務省令は、規則186ですね。合併(存続会社、新設会社)・完全親会社の取得条項付株式又は取得条項付新株予約権(いずれも譲渡制限株式に限定)としています。
なぜ、譲渡制限の無い株式ではいけないのか、私にはよくわかりません。また、「当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く。)」の規定の仕方もよくわかりません。「譲渡制限株式等(譲渡制限株式を除く)」というような書きぶりは他の条文にもありますが、「なんでこんな変な書き方すんね!」という感じですね。
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