今回は三回目です。陪審による事実審理(Trial)からです。
○ 合衆国憲法第7修正では、陪審審理を受ける権利が保証されています。
「In Suits at common law, where the value in controversy shall exceed twenty dollars, the right of trial by jury shall be preserved, and no fact tried by a jury, shall be otherwise re-examined in any Court of the United States, than according to the rules of the common law.」
・ コモン・ロー上の訴訟では、と記載されていますが、現在では、コモン・ロー裁判所とエクイティ裁判所は分かれていませんね。後半は分かりにくいですが、陪審により審理された事実は、コモン・ローのルールによるほか、合衆国の裁判所で再度審理されることは無いとしています。即ち陪審が認定した事実がファイナルですよと言っていますね。陪審が事実審理を行います。一定の手続きに従い選任された陪審員の前で行います。(陪審に付されずに事実審理を行う事件もあります)
○ 事実審理:進め方は以下です。
1) 原告の冒頭陳述(opening statement)- 原告側弁護士が事件の概要を説明します。
2) 被告の冒頭陳述。
3) 原告側の証明(Case in chief)- 自らの請求の根拠となる主要事実を証明するために、証拠を提出する。書証については原本の提出が原則ですね。
4) 被告側の証明(Case in defense)- 被告は、原告の主張事実の存在を否定するための、また自らが依拠している抗弁を構成する事実を証明するための証明を行う。
5) 原告の反証(evidence in rebuttal)-被告側の証拠に反駁する証拠の提出
6) 被告の反証(evidence in rebuttal)-上記に反駁する証拠の提出
7) 最終弁論(closing argument; summation)-これまでに提出された証拠を基に、そこから導き出される論理的結論を、原告・被告側が述べる。
8) 裁判官による説示(instruction)-陪審の職務は事実の認定ですが、それに法を適用するには、適用する法律を陪審にきちんと説明する必要があります。裁判官による適用する法律の説明が説示です。
○ 陪審の評決(verdict):
裁判官による説示を受けた後、陪審員は陪審室に行き非公開で、評議を行い評決します。評決には、一般評決(general verdict)と特別評決(special verdict)があります。一般評決が一般的で、どちらが勝訴し、その救済の内容を示します。評決の根拠は開示されません。また、評決は原則的には陪審員全員の一致です。特別評決では、争点毎の認定事実を示し、裁判官がそれに法律を適用します。
・ 陪審が評決に達すれば、法廷に戻り陪審長又は裁判所の書記官が評決を読み上げます。
評決に必要な数の賛成が得られないときは、不一致陪審(hung jury)の為審理は不設立(mistrial)となり、別の陪審により審理をやり直すことになります。
・ 陪審により評決が下されると、裁判所は判決を判決簿に登録します。
○その他
・ 終局判決(final judgment)=当該審級を締めくくる判決が下されると、敗訴当事者又は一部勝訴当事者は上訴することが出来ます(final judgment rule)
・ 終局判決が下されると、当事者間で同じ請求について、訴訟をもう一度提起できなくなります。まあ当然ですね。これを請求排除の効力(claim preclusion)といいます。日本の民訴では既判力といっていますね。
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