NTLというのは、イギリスの国立劇場ロイヤル・ナショナル・シアターが厳選した名舞台を映像化して映画館のスクリーンで上映する「ナショナル・シアター・ライブ」のことです。毎年数本が上映されます。その最新作『ディア・イングランド』を見ました。サッカーを題材にしているので、試合の場面など処理をどうするのか心配だったのですが、見事に処理され、逆に演出の手際のよさが目立つ作品に仕上がっていました。映画ファンも、演劇ファンも必見です。
サッカーの実在のイングランドチームを描くドキュメンタリー的な要素ももつ作品です。長い間低迷していたイングランドチームに、ガレス・サウスゲートが代表監督に就任します。サウスゲートはかつてイングランド代表チームの選手でした。彼はワールドカップでPKを外し、戦犯のような存在となっていました。サウスゲートは、代表チームを大きく改革します。中でも大きな改革は選手の心理面を重視し、カウンセリングを導入します。順調に成績を上げていきますが、やはりすべてがうまくいくわけではありません。時には内部の衝突もあります。しかし進むしかない。成功と失敗を繰り返しながらイングランドチームは進んでいきます。
現在でもサウスゲートは代表監督ですし、ここに出ている選手も多くがまだ現役代表のようです。ですからイングランド代表の応援演劇ともなっているのです。しかしそれだけではありません。特に描かれるのはPKです。決めて当たり前のPKを外してしまうシーンが数多く出てきます。人間の心の弱さと、それを克服しようと努力する精神力のぶつかり合いが心を打ちます。
エンターテイメント要素の強い演劇ですが、しかし深い作品です。
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