観点別評価が高校でも導入されました。観点別評価というのは従来のペーパーテストだけの評価から脱却し、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3つの観点から評価するというものです。
理念としてはすばらしいのは言うまでもありません。生徒一人一人を様々な観点から評価することは理想的です。しかし現状では大きな問題があります。評価すべき生徒の数が多すぎて、きちんと評価がしきれないのです。特に「思考力、判断力、表現力等」の評価はむずかしい。きちんと評価がしきれないのに、観点別評価をしなければならないので労力だけが増えてしまいます。理念倒れの状態なのです。
もし高校のクラスが少人数だったら可能かもしれません。ひとりひとりとの対話を通じて評価することができます。しかし1クラス40人を、週2~3時間受け持って、一人一人の「思考力、判断力、表現力等」を評価するなど本当にできるのでしょうか。
「思考力、判断力、表現力等」の評価は簡単ではありません。例えば表現力を評価するために作文を書かせます。その作文をきちんと評価するのは想像以上に時間がかかります。しかも自分の評価に自信がもてません。これは想像すればわかることでしょう。
さらにひどい例を1つ上げます。表現力を図るために小論文の宿題を出します。すると毎回何人かはネットのコピペで提出してくるのです。それを教師はどうやって調べればいいというのでしょうか。おそらくこれからはチャットGPTで書いてくる生徒が何人もでてきます。これを評価できるのでしょうか。評価のための労力は増える一方であるのにも関わらず、その評価には自信が持てないのです。これでは教師の心身の疲労が増加する一方です。
このような状況を改善するために文部科学省はICTの活用によって業務の効率化をすると言うのです。そして新たなICT技術を身につけなさいと言ってきます。また新しいことをさせるのかとうんざりしてしまいます。
教育の状況は大きく変わり、それに対応するために毎年新たな取り組みをしなければならない。その労力は非常に大きく、教師に大きな負担を与えます。その大きな負担を解消させるための新たな方法を身に着けるためにさらに大きな負担を与えている。このサイクルが今の教育現場の実態です。
改善するためには、教職員の倍増が必要です。教員だけが増えるのではなく、事務職員も増えなければなりません。例えばコンピューター専門の職員も必要です。進路関係専門の職員も必要です。従来の教員がなんでもやる学校から脱却して、しかも教員数も増やしていく必要があります。
真の教育改革のためには、具体的な事実をしっかりと認識する必要があります。理念と経済と効率で教育を語ることのないようにお願いします。
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