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And This Is Not Elf Land

映画JERSEY BOYS公開に思う(1)

クリント・イーストウッド監督による映画版JERSEY BOYS,アメリカでは6月20に公開されました。公開週の批評家、観客、興行の推移を私なりに見守っていたこの週末でしたが…私は、映画には特に詳しい方ではないのですが…いろいろなことを考えさせられた数日間でした。

この数日間で感じたことを、いろいろ書きとめます。


まず、公開第一週の週末のグロスは13.5ミリオンで、最近のブロードウェイミュージカルの映画化としても、高い方ではありません。

舞台ファンとしては、舞台と同じ俳優が映画でも主演してくれるというのは「夢のまた夢」なのですが、それでも最近のミュージカル映画でも舞台と同じ俳優を起用したものRENT, THE PRODUCERSいずれも興行的には大失敗しています(JERSEY BOYSはこの二つよりは成功するとは思う)

とにかく~

ミュージカルの映画化というのは、やはりハリウッド有名俳優を起用しないと、興行的には難しい…

…痛感しましたね。

でも…ハリウッド俳優を起用すると、まずその「歌唱力」が問題になります。ミュージカル・ファンが、常に口うるさく言うのはそこ。もっとも、LES MISERABLESのような大作のプロジェクトになりますと、ヒュー・ジャックマン、アン・ハサウェイなど歌える有名俳優を多数起用することができますが、それでも要の役のひとつだったラッセル・クロウの歌唱は、舞台を見慣れている者にすれば、聞くに堪えないものでした。

THE PHANTOM OF THE OPERAの、怪人役の俳優ジェラルド・バトラーの歌唱も「音楽の天使」なのに下手すぎ…と、大ブーイングでした。この映画の場合は、ジェラルド・バトラー、エミー・ロッサムという当時まだ無名だった俳優を起用したこと、また、ジョエル・シュマッカー監督の独特のセンスには好き嫌いがあり(日本人には大いに受けましたが)、批評家の評価も低かったことで、作品が有名なわりには興行的には成功せず、やはり失敗作とされています。

一方、CHICAGO、MAMMA MIA!などは、映画化成功作品とされますが、作品そのものが、俳優の高い歌唱力をそれほど要求しないものであるということが(カラオケ・レベルで十分)、映画化には有利な条件だったでしょう。キャスティングし易いはず…MAMMA MIA!は批評家の評価は低いですが、、メリル・ストリープ等のスターを起用し、誰もが気楽に楽しめる映画として、大ヒットしています。

JERSEY BOYSでは、とにかく「小柄」で「ファルセットで歌える」という特徴を持った主演俳優が必要になります。似たようなケースは2007年に映画化したHAIRSPRAYにも当てはまりました。HAIRSPRAYの場合は、歌って踊れる太った女の子が必要でした。HAIRSPRAYの場合は全米でオーディションを行って、ニッキー・ブロンスキという適役を見つけ出し、「スター」になるには程遠い体型の女の子が夢をつかんだ物語をアピールし、キャスティングはトラボルタ、ザック・エフロンなど有名どころで脇を固めました。

JERSEY BOYSの場合は、なぜかネットで「ジャスティン・ビーバーがフランキー役を断られた」というような「噂」が飛び交っていましたが(笑)現存のアイドル・スターを起用しないまでも、HAIRSPRAYのように、大々的に「フランキー・オーディション」を敢行し、小柄で、イタリア系に見える風貌で、高い声で歌える俳優を発掘し、オーディション過程においても話題を作り、脇はハリウッドの俳優で固めるということもできたでしょう。

実際、主役がジョン・ロイド・ヤングだと発表されたときは、もちろん嬉しく思いましたが…でも、せめてボブ・ゴーディオ役ぐらいは、LES MISERABLEにも出演したアーロン・トヴェイトあたりにしないと、興行的に大丈夫かな…と思ったのですが、結局は、トミー役のヴィンセント・ピアッツァ以外は、すべて舞台出身者で固めてしまいました。

JERSEY BOYSの映画化については、フランキー・ヴァリやボブ・ゴーディオも中心となってプロジェクトを進めてきましたが、あくまでも「主役はフォー・シーズンズの音楽」であり、「主演俳優は、背後に本物のフランキー・ヴァリのイメージが見えないといけない」という立場を貫いたのではないでしょうか。

結局、クリント・イーストウッド監督の名前と人気ミュージカルの名前だけで拡大公開した映画であることを思えば、13.5ミリオンというのは妥当な数字であるように思えます。実際、アメリカのファンの友人たちは、日本にいる私よりも「ハリウッドの仕組み」については身近に感じていますし、顔なじみの俳優たちを銀幕で観られるという奇跡のような幸福に素直に浸っている人が多いですね。最初から、そんな大ヒットするはずはない、と見込んでたようです。

また、同じ日にイギリスでも公開しているのですが、イギリスでの状況も気になります。ミュージカルのJERSEY BOYSも、本家のフランキー・ヴァリ&ザ・フォーシーズンズも、イギリスではアメリカに負けない人気があります。むしろ、イギリスのほうが、こういう男性グループのドラマを楽しむ素地があるように思います。また、オーストラリアでは7月頭に公開ですが、オーストラリアにもファンはたくさんいます。

日本では9月末に公開ですが、日本もミュージカル映画がヒットする国です。外国ではコケた作品THE PHANTOM OF THE OPERAなどは、日本では異常なほどの(?)ヒットをしました。ただ、JERSEY BOYSの場合は作品的に「とりわけ日本人にアピールする」というものではないと思います。(日本人は、基本、ヨーロッパ系のミュージカルの方を好む)

また、日本で上演されたミュージカル演目であるかどうか…というのは、あんまり関係ない気がしますけど。たとえ、日本で上演されていても、観に行くのは都市部の人だけだし(苦笑)DREAMGIRLSなども、日本ではミュージカルとしてはあまり知られていませんでしたが、ヒットしています。…というか、DREAMGIRLSの場合は、ミュージカルとして見ていなかった人のほうが多いかもしれませんね。今回のJERSEY BOYSもイーストウッド監督は「ミュージカル的な要素を殺してしまった(?)」らしいですので、ミュージカルとして宣伝しなくても良いのかもしれません。(前の記事には、ミュージカルとして宣伝しろ!)と書きましたがね…いずれにしても、メロディアスで優しい感じの曲の数々、古いしきたりのコミュニティーで生きる登場人物たち…日本人に受け入れられる要素はたくあんある作品だと思います(少なくともDREAMGIRLSよりは、ストリー的にも音楽的にも受け入れられやすいはず)


まぁとにかく…公開週のグロスがROCK OF AGESよりも下回った、ということですが、ROCK OF AGESは有名俳優がたくさん出ている80年代ノリノリ・ロック・ミュージカルですので、出だしの客足が好調なのは当然でしょう。しかし、観客の評価は低く、次週からあっという間に客足は遠のいてしまいました。

JERSEY BOYSの場合は、批評家からは賛否両論ありますが、観客の評価は高いです。(音楽とストリーそのものの魅力が大きいですね)このあたりは別記事で書きますが…私はトータルでROCK OF AGESを下回ることは絶対にないと断言します。

To be continued…
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