内容の一部が書かれています。
FOXからNPRまでのアメリカの報道番組に、つぶさに目を通し、「LAロー」や「NYPDブルー」系のドラマをワン・シーズン分、一気に見たような…そんな映画でした。
えっと、出てこなかったのは同性愛、中絶、宗教問題…それでも、これだけあるのね。人種問題、それとリンクする社会問題は殆ど炙り出されているような、そんな内容でした。
人種の坩堝、いや、人種のサラダ・ボウル、ロスアンゼルス。
人々は、一個人である前に肌の色や言葉で判断される。判断されるばかりではない。多人種のタフな社会で行き抜くには、それぞれのステレオ・タイプからはみ出さない知恵さえも求められる。
しかしながら、人はそれほどまでに「エスニシティ」というものを正しく、緻密に認識しているのだろうか?
実際には、ペルシャ人とアラブ人を混同し、アジア人は皆同じ、南米系の人は誰であろうがメキシコ人と決めつけてしまっているではないか。思わず「うーん」と唸ってしまうような…そこの辺りの矛盾を巧みに描写する。
社会生活における人種間の格差を改めようとする制度や法律も、所詮不完全な人間の手によって作られたものであり、当然のように、あちこちに綻びが出る。人々の苦難や軋轢はますます深まるばかり。
racial profiling(人種差別的捜査…と日本では訳されている)を憎む若い白人警官がいた。澄んだ目が印象的だった。しかし、社会の複雑さは彼の想像など及ぶところではない。人種差別を憎む正義感と、普通にカントリー音楽やロデオ情報を流すラジオを愛聴する姿のギャップが、それを象徴しているかのようだった。その彼が、結果的には最も残酷な結果となる行動を取ることになる。
映画は、いわゆる「群像劇」であり、最初に20人近い人物がそれぞれに登場し、ストリーが進むに従って、その関係性が明らかになる。脚本はよく出来ていると思う。最後は、それぞれが少しばかりの「救い」を見出すことになる。
しかしながら、複雑且つ厳しい社会の中で身についた考えや行動様式は、そんなに容易に変わるものなのだろうか?
時期はクリスマス。LAには珍しく雪が舞う。あちこちに見られる聖母像。最後はLAの夜景、雪、ゆらめく炎とともに、現実を超越しているかのような世界を提示し、まるでファンタジーのように人々の救いを描いていたのが印象に残った。そういえば、前述の若い警官が、拘束されそうになった黒人を説得し、助けたのは教会の前だった。
あからさまな差別や対立の中で人とふれ合い、ぶつかり合い、もがき苦しむこと。それ自体が人を「一すじの真理」に導く一助となるのかもしれない。それは、ぶつかり合うチャンスもない世界、もがき苦しむ必要もない世界で安穏と生きるよりは「真理」に近い「生」なのだ。
良くも悪くも、アメリカのパワーって、それを信じる事によって肯定されたものなんだと思う。
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