ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

森樫溜池

2023-06-06 17:10:37 | 福岡県
2023年5月19日 森樫溜池

森樫(もりかじ)溜池は福岡県八女市黒木町大淵にある灌漑目的のアースフィルダムです。
八女市黒木町では9基の灌漑用溜池が堤高15メートル以上のダムとしてダム便覧に掲載されていますが、うち7基が位置未確認となっています。
森樫溜池はそのうちの一つで、ダム便覧には1919年(大正8年)に黒木町の事業により竣工と記されており、当時の町営事業で建設されたと思われます。
管理は受益者で組織される剣持耕地整理組合が行っています。
矢部川支流剣持川流域は狭隘な谷が続き平たん地がほとんどなく水田の大半は急斜面を開拓した小規模な棚田です。
池は剣持川右岸標高500メートルの高所に位置し、これらの水田開墾に合わせて建設されたようです。
森樫溜池はダム便覧に経緯度が記載されていますが数値が誤っており、正確な位置は八女市が作成した『森樫ため池ハザードマップ』特定できます。

ダムへのアクセスですが国土地理院地形図やグーグルマップは道路の表記が不正確なので注意が必要です。
池は中央部分がくびれたひょうたん型で、白線部分が天端、オレンジ丸が取水設備、黄色丸が底樋管、洪水吐は北側のピンク丸となります。



池へは北側からアプローチします。
洪水吐は道路と交差し、越流の際は道路のコンクリート部分を越えてゆきます。


貯水池から見ると。


洪水吐導流部。


北側の貯水池
写真左手前が洪水吐となります。


天端を通る道路
左が貯水池、右が下流面になりますが、共に竹林になっており見た目は何が何やらわからない。


左岸から
手前のトタン屋根と奥の茶畑の間の斜面の森が堤体となります。


南側の貯水池
左手が堤体になります。
貯水容量1万6000立米の小さな溜池ですが、平地のない山間部の農地にとっては貴重な水源です。


これが上流面となり、草むらの左手を天端道路が通ります。


左岸湖畔の取水設備。
木栓を使った昔ながらの池栓


草むらをかき分け左岸池下に到着。
防獣柵があるため、下流からは到達できません。


底樋管
田植え時期を控え水が流れています。


樋管のすぐ下流に簡易な分水工があります。
今は斜面の水田に水を送るため、右手の水路に水が送られています。


地図から想像するよりも険しい山地で、文字通り猫の額程度の農地を開拓するために標高500メートルの高所に水源を求めて作られたのが森樫溜池です。
高齢化等により池の草刈り等の余裕はないのでしょうが、比較的新しい木栓が今も貴重な水源であることを示しています。
一方池の周りには茶畑が広がっています。
八女茶ブランドが確立し当地での農業の主役は茶生産のようです。

2382 森樫溜池 (1985)
ため池データベース  402101035 
福岡県八女市黒木町大淵
矢部川水系剣持川右支流
15メートル
50メートル
16千㎥/16千㎥
剣持耕地整理組合
1919年