軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

雲場池の水鳥(26)ハシビロガモ

2024-01-26 00:00:00 | 野鳥
 今回はハシビロガモ(嘴広鴨)。嘴は幅広く、和名の由来になっている。また、英名shovelerもシャベル型の嘴に由来するとされる。

 この種は全国的には普通であるが、雲場池では珍しい種のようで、これまで5年近く雲場池にやってくる水鳥を見てきたが、今回初めて出会った。また、私自身過去にこの種に出会ったことが無かったので、実際に見て、その嘴の異様な大きさにぎょっとしたのであった。

 いつもの「原色日本鳥類図鑑」(小林桂助著 1973年保育者発行)の記述を見ると、次のようである。
 「形態 嘴きわめて大で扁平へら状である。嘴峰59~69mm、翼長217~252mm、尾長73~58mm、跗蹠32~37mm、♂は頭頸部は黒緑色。胸から背にかけては白く、背の中央部黒。白色肩羽は長く延び先端では空色と黒と白の縦しまとなる。腹以下は濃栗色。雨覆は空色で翼鏡は金緑色。♀は上面黒かっ色下面は黄かっ色と黒かっ色とのまだらで喉は黄かっ色無はん。

生態 欧亜大陸の中北部・北米で繁殖し冬期はアフリカ・中国南部・南米などに渡る。我国では少数のものは北海道北部で繁殖するが大部分のものは秋期シベリア大陸より渡来す。冬期各地の湖沼、沼沢地、海上に普通である。海上では数百の大群をなし岸に近い浅瀬に生活することが多い。

分布 北海道では少数繁殖するほか冬鳥として北海道・本州・八丈島・四国・九州・種子島などに渡来する。」

 雲場池で初めて見かけた時は、マガモやオカヨシガモが30羽ほどの群を作っている中にいて、マガモよりやや小さく、1羽だけ胸の白さが目立っていた。カメラの超望遠レンズ越しに見ると、嘴の大きさが明らかにマガモやオカヨシガモとは違っていて、すぐにハシビロガモと気づいた。

ハシビロガモ♂エクリプス 1/7(2023.12.25 撮影)

ハシビロガモ♂エクリプス 2/7(2023.12.25 撮影)

ハシビロガモ♂エクリプス 3/7(2023.12.25 撮影)

ハシビロガモ♂エクリプス 4/7(手前、奥はマガモのペア 2023.12.25 撮影)


ハシビロガモ♂エクリプス 5/7(手前、奥はコガモ♂ 2023.12.25 撮影)

ハシビロガモ♂エクリプス 6/7(中央、左右はコガモ 2023.12.25 撮影)

ハシビロガモ♂エクリプス 7/7(2023.12.25 撮影)

 雌雄の区別は、帰宅後図鑑を見て確認した。羽色と紋様は♀に近いものであったが、虹彩の色が黄色いところと嘴の色が黒いことから♂のエクリプスと判定した。
 ♀の場合、「虹彩は褐色で嘴はオレンジ色に黒みを帯びたものが多いが、ほとんど黒いものもいる。」(日本の鳥550・水辺の鳥、2000年 文一総合出版発行)、「♀は目が黒い、エクリプスは♀に似るが、目の色は黄色。」(野鳥観察図鑑、2005年 成美堂出版発行)とされている。

 この個体は翌日には姿を消してしまったので、もう見る機会はないのかと思っていたが、年が明けてしばらくたった1月16日に、今度は2羽が姿を見せた。


ハシビロガモ♂エクリプス2羽 1/3(2024.1.16 撮影)

ハシビロガモ♂エクリプス2羽 2/3(2024.1.16 撮影)


ハシビロガモ♂エクリプス2羽 3/3(2024.1.16 撮影)
 
 この2匹もまた♂エクリプスであると判定したが、これはやや難しかった。全体的な外観は先月来たものとほとんど同じであったが、同一個体が含まれているかどうかは判らない。問題は嘴で、その色は片方が黒く、もう片方はオレンジ色が混じっていた。前記の図鑑によると、♂の嘴は黒いとされているのである。一方、虹彩は2羽ともよく似ていて黄色である。

 嘴の色から片方が♀かもしれないと思えたが、虹彩の色が黄色いこと、胸の色が白く変化し始めていることから、2羽とも♂エクリプスであると判定した。

 嘴の黒い個体は次の通り。


嘴の色が黒いハシビロガモA 1/2(2024.1.16 撮影)


嘴の色が黒いハシビロガモA 2/2(2024.1.16 撮影)

 続いて嘴の色にオレンジが混じる個体。

嘴の色にオレンジ色が混じるハシビロガモB 1/2(2024.1.16 撮影)


嘴の色にオレンジ色が混じるハシビロガモB 2/2(2024.1.16 撮影)

 ところで、このハシビロガモの嘴だが、形状だけではなく、その機能も特異なものである。

 くちばしの側面には歯を思わせるくし状のものがあって、このくちばしを水面に付け、水を吸い込み、水とともに入ってくる植物プランクトンなどを濾しとり、水を排出するのだという。

 今回は2羽だけであったので、見ることはなかったが、水面を泳ぐ脚の動きで水を撹拌するため、植物プランクトンが水面近くへ動き、それを狙った次の個体が後方へ並ぶことがあるという。そのため何十羽も集まると、大きな渦になるとされる。

 その嘴の側面のくし状のものが分かる拡大写真と、水面を掬うようにして泳ぐ姿は次のようである。

嘴の側面のくし状のものが分かる拡大写真(2024.1.16 撮影)

水面を掬うようにして植物プランクトンを捉えながら泳ぐ姿(2024.1.16 撮影)




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