度重なる自治会トラブルや、雑務の追われる欲求不満などで、創作活動が実質ストップしたのが半年前でありました。とても印刀を持つ気にもなれず、様々な忙しさで大好きな篆刻が出来なかったのです。
また、ヤフオクで印材を中心に蒐集していましたが、これぞレアな銘石と信じて、7万円という大枚をはたいて落札したものが「人造石」であったことにダメージをうけ、なかなか立ち直れませんでした。心労が重なって医者に安定剤を処方されるまでになっていましたが、自治会長を退任し、九州の兄のところに行って「プチ転地療法」がきっかけになったか、ずいぶん回復して気力が出てきたのです。
そして、先週から摸刻を再開いたしました。古の篆刻の達人・名篆刻家さんの作を、マネして同じような(寸分たがわずというのは無理です)印を模倣して彫り、その技法・刀法を学ぶ、という大変地道で有効な練習であります。しばらく遠ざかっていたので、ウオーミングアップにもちょうどいいのです。
呉昌碩さんや園田湖城さんなどの銘刻を、一人静かに模刻して、ゆっくりした時間に身を置くことの素晴らしさであります。彫りミスや仕上げなどは意に介しません。いずれ、これらは磨り潰して、再度別の印を彫るのですから、さほど時間をかけることもなくオリジナルと違ってもスルーします。
気分を変えて、オリジナルの自作印もすこしずつ彫りました。
左の二つの遊印は人に頼まれたので、もう少し丁寧に手入れをし、側款を入れてプレゼントします。
一方、ヤフオクですが、偽物をつかまされたショックが思いのほか大きく、2,3週間ほどまともに入札しなかったのです。今月に入って4,5件落札しましたが、誰も入札しない安物・怪しげな印ばかりでした。案の定届いた品物はひどい代物ばかりで、ほとんどがそこらに突っ込んでしまってどこに行ったか不明で、写真にもとれません(笑)
一応言葉で代弁すれば①田黄石に似せたプラスチック樹脂 ②篆刻には硬くて使えない「ラピスラズリ」 ③薄意(浮彫)があるものの、いささか下手な彫り(失礼)の駄石などであったのです。例えばこれ。
全然気に入らないので、だいぶ手入れして補刻いたしました。
心身ともに絶不調な時は、ざっとこんなものであります。まぁ一個当たり2千円程度なのでさほど腹も立ちません。
そして、篆刻を再開し、心の傷も癒えてきてヤフオクで落札したのが、この二件であります。
下のは5本で1,980円、書道をやっていた人の自刻印らしく4センチ角の「ばかでかい」印ばかりでありました。しかも、左の二つは紫色に着色しています。(素地は不透明な茶色の石)、竹野さんという方が使っていたようですが、基本的には印の価値はないので、彫は全部つぶして、大きい石は2,3個に切り離して使おうと思います。いずれにせよ一個400円ですから、損はありませんね。
先日届いたのがこれであります。落札額3980円なり。
箱には「福建寿山石微雕」とあります。これは福建省の寿山石に微彫(つまり薄意)を施しているという意味です。実は箱の裏には吴肖斌(ゴ ショウブン)さんという薄意作家の名前と住所連絡先が印刷されておりました。箱やそのラベルの様子から2,30年くらい前のものに見えます。
石は「高山凍」とみて間違いないです。印材の王様「田黄石」によく似た半透明で明るい琥珀色に、やや乳白色が混じるのが典型的な高山凍の特徴です。良材は田黄並みに扱われるくらい希少で美しい石であります。
表裏には丁寧な山河などの風景が描かれ、しかも一文字1ミリちょっとの大きさで漢詩が刻まれております。
作者さんが有名であろうがなかろうが、これを職業としていてこれだけの微細な技術を用いて時間をかけている印材であります。しかも自然石(たぶん水坑で採取している)の銘石を使っているのですから、人民元では安くても1000元位(日本円だと17千円くらい)で売られていたのではなかろうかと思います。
なんとなく潮目が変わった、やっと本来の自分が戻ってきたのだ、と実感しているのです。これに気をよくして昨夜、目をつけていた箱入りの未刻印数点に入札しました。出品者さんは、古美術商で古い書道具店からの委託品と思しき品を出品していました。ゴルフコンペが中止になった分の浮いたお金で、えいやとばかり落札したのが5点でありました。興味深いのがその石の種類、きちんと印材として一級品とされる名前が明示され、なおかつ定価のラベルも張られていたのです。
到着したら、子細に調べて本ブログで紹介いたしましょう。またテンションがダダ下がりにならぬことを願うばかりでありますが
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