・・・霧多布湿原・・・
~1989年・夏・北海道の旅~
JRの周遊券の期限(二十日間)はあと二日となりました。
根室から次に向かうのは、「霧多布」です。
その半年前、初めて北海道に来て最初に泊まったのが、
霧多布近くの浜中YH(ユースホステル)でした。
その時に、霧多布岬に行ってみて、
あまりの寂しさに北海道の洗礼を受けた・・・というか、
ある意味、北海道が好きになった気がします。
そんな中、YHはとても温かく、旅の良さを教えてもらいました。
というわけで、この夏の旅の終わりは、
霧多布で〆ようかと思ったのであります。
根室YHで、同年代の青年2人組がジープで霧多布に向かうと言って、
乗せてくれるというので、
もう一人、社会人のお兄さんと一緒に、
便乗させてもらいました。
正直なところ、根室本線の海を臨む車窓や、
ちょっと荒涼とした中を汽車に揺られるのも楽しみだったのですが、
せっかくのお誘い、断るのもなんだし・・・。
さて、ジープでの移動。
いわゆる、横座りで、幌がかかっているジープは、
乗るのも初めてで、
窓は、透明ビニールなので景色はあまり見えず、
若い青年の運転はなんだか荒くて、
ときたま、体が浮き上がり跳ね上がり、
ドアがないので後ろから転げないかと、
一緒に乗った社会人兄さんは、「大丈夫か・・・」みたいに言っていたけれど、
数時間かけて無事に霧多布に到着
途中、オフロードの道も通ったので、ジープの本領も発揮していたし、
ジープに乗れたのはまぁ楽しかったです。
その後の人生でも、ジープに乗ることはなかったし、
今となっては貴重な体験となりました。
前回、一人で冬の霧多布岬に行ったときは、
市街地から延々歩いたのですが、
今回は岬の近くまでジープであっという間でした。
4人で岬の灯台のほうへ行きましたが、
8月の上旬、道東は霧が発生しやすい時期で、
気温も低くて、長袖をはおるようでした。
「ボー」っと灯台から鳴っているのか霧笛(?)も響いて、
夏なのに冬景色のような・・・。
さすが名前のとおり「きりたっぷ(り)」です。
冬に見た海は穏やかに見えたのに、
この日の海は大荒れに思われました。
岬に行ったあとは、霧多布のバスターミナルまで送ってもらい、
ここで同行者とお別れ・・・。
残る半日かけて、ある場所へ行ってみるつもりでした。
それは「涙岬」という、あまり観光ガイドにはなかった場所です。
霧多布から厚岸方面へ海沿いの道路を通って行くのです。
ただし、バスの本数は少なく、歩いて行くには遠いので、
霧多布でレンタサイクルを借りて行きました。
涙岬までは片道10数㎞はあると思われ、
霧多布を出発したのが午後になってからだったので、
往復で30㎞・・・あまりのんびりしていると、
予定しているバスに乗れなくなると思い、
・・・結構必死にペダルをこぎました。
夏休みで、同じような若者も数人見かけましたが、
やっぱり、ほとんどすれ違う人も車も少なく・・・。
ほどなく、霧多布湿原を見下ろす、
「琵琶瀬展望台」に着きました。
ここで、しばし湿原を見て・・・なんだか涙が出てきた。
湿原が雄大とかすばらしいとか、
そういった気持ちもあるにはありましたが、
旅の終わりを感じさせるのにぴったりな景色でもあり・・・。
まわりに観光客もいないし、感傷に浸りました。
地元のおじさん(漁業の?)が、
「気をつけて行きなさいよ」と言ってくれたので、
涙岬に向かってもうひとこぎです。 ~つづく~