安倍首相の消費増税延期をめぐって、マスコミがこぞって、デマを振りまいています。決して惑わされないようにしてください。
毎日新聞6月1日
「増税延期 株価にプラス 消費活性化には懐疑的」
http://mainichi.jp/articles/20160602/k00/00m/020/071000c
『安倍晋三首相が来年4月に予定されていた消費増税の先送りを表明したことを受け、市場では「個人消費を下支えし、株価は緩やかに上昇する」との期待が広がる。一方で「現在の消費低迷は社会保障制度の先行き懸念など将来不安が根本にあり、増税を延期しても長期的な消費活性化にはつながらない」との声もあり、評価と懸念が入り交じっている。
2014年4月の消費増税後、個人消費の停滞が長期化するなか、市場はすでに2年程度の消費増税の先送りを織り込んでいた。
(中略)
ただ、増税延期が株価にプラスになるとの見方は多い。大和総研の試算では、増税した場合と比較し、16年度は消費増税前の駆け込み消費が無くなるため個人消費は0.6%減少するが、17年度は1.9%上昇。同社の熊谷亮丸執行役員チーフエコノミストは「短期的に個人消費を押し上げる効果がある」と分析する。
一方で、長期的な消費への悪影響を懸念する声もある。SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリストは「消費者の財布のひもが固いのは年金がいくらもらえるのかなど将来不安が要因。社会保障制度を持続可能にし不安を解消するため増税を先送りすべきではなかった」と指摘する。
増税延期で財政再建が後退する懸念もあるが、国債市場への影響は限定的とみられている。日銀は現在、年間80兆円ペースで国債を購入しており、「日銀が国債を買い支えているため、短期的には影響は出ない」(関係者)との見方が多い。(後略)』
安倍首相が、消費増税を延期したのは、100%正しいことです。凍結したならもっと良かったし、5%に税率を下げたならベストでした。デフレ不況下の増税が禁じ手であることは、理論的にも、経験的にも自明のことです。
にもかかわらず、財界と大手マスコミは、消費増税延期の悪影響を喧伝してやみません。なぜか。財界は、法人税をさらに下げるための財源として消費増税を必要とするし、大手マスコミにとって財界はスポンサーなので、財界の意向には逆らえないからです。実にそれだけのことなのです。むろん大手マスコミは、財務省の増税原理主義の意向を忖度するという(コバンザメとしての重要な)役割も忘れていません。
記事中に「2014年4月の消費増税後、個人消費の停滞が長期化 」しているとあるにもかかわらず、他方では、「現在の消費低迷は社会保障制度の先行き懸念など将来不安が根本にあり、増税を延期しても長期的な消費活性化にはつながらない」とも(他人の口を借りて)主張します。明らかなかく乱戦法ですね。
個人消費の低迷やアベノミクスの失敗の原因は、2014年4月の消費増税であることは、財務省の『経済財政白書』の諸資料などを見れば、誰の目にも明らかです。消費の低迷を社会保障制度の先行き懸念などの将来不安に求めるのは、緊縮財政のイデオロギーとしての(虚妄の)「ケインズ効果」理論にほかならなりません。社会保障費が先細っているのは、税収の源泉としての経済成長が長期にわたって低迷しているからであり、経済成長が長期にわたって低迷している現状に対して決定的な役割を果たしたのは、1997年の消費増税です。
ついでながら、「社会保障費の財源をどうするのか」という増税派からの問題提起があるようですが、それは、単年度会計主義に脳を冒された者のうわごとのようなものです。というのは、消費増税延期による消費増と積極財政によって、次年度以降GDPが持続的に成長すれば、社会保障費の財源は、税収の自然増によっておのずと生まれるからです。
財政再建は、持続的な経済成長によってこそもたらされるのです。デフレ不況下での消費増税は、単年度では多少の税収増をもたらすかもしれませんが、次年度以降、脆弱化した経済に大きなダメージを与えることによって、税収減をもたらし、結局は財政をかえって悪化させることになるのです。