認知症と診断された人が、それまでの住まいから施設に入居したとき、
その環境変化を受け入れられるようになるには、早くて1ヶ月、長いと半年はかかります。
落ち着いていただくために、最低限の安定剤を服用していただくことは多いです。
施設は、どんなに入居人数が少なくても「共同生活」です。
周りの方々と、トラブルなく、お互いに受け入れあえるように支援するのはわたしたちの仕事ですが、技術や経験だけでは出来ないこともあるのです。
ご家族の了承と、医療との連携は最低限、いや、絶対欠かせない。
そのためにも伝言ゲームではなく、直接的に伝えないと伝わりません。
報告は必要ですが、その言葉の捉え方で内容が変わります。
「え?なんで?」
という処方変更があったりします。
入居前には、施設へ行くことを楽しみにしていた方でも、いざ入居してみると、
見事な帰宅願望にヘンシ~ン!
なんてことは、珍しくありません。
それだけ環境変化に精神が付いていけなくなるのだろうと思います。
とても面白い事実を見つけました。
Aさんは、一番新しく来た人です。
でも、スタッフは何かと家事を先輩のBさんにお願いしてしていただきます。
「アラ、あたしがしなきゃいけないのに、先輩にしてもらって申し訳ない!」と、Aさん。
Bさんは、先か後かという見当識はありません。
何しろ、2年間席を隣にしている人同士で「はじめて会う人!」の世界です。
「はじめて会う人」でも、その順位があるのではないでしょうか。
家族の顔を忘れた人でも「何か懐かしい人だ」という肌感覚みたいなものは残っています。
出来事の全てを忘れてしまう「認知症」ですが、別なところで新たな記憶を作られているような気もします。
馴染みになった顔(顔のつくり?声?雰囲気?)は覚えていられる。
全てが消えていくわけではないのですよ。