メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

あなたが好き!

2018-12-12 10:43:52 | 咲人
こうして咲人との電話は所謂ラブラブな感じになっていった。
でもあくまで日本語の練習をしているというテイだったし、
私は相変わらずエラそうで素直じゃなかったし、
何より、咲人から真剣にそういう話をしてくる気配はなかった。
例えばさ、付き合うとかさ、会ってみようとかさ…モゴモゴ。


私はもう自分が咲人にご執心なのはよく理解していた。
でも会ったこともな人に恋して痛い目に遭ったばかりっていうかまだ遭ってる最中じゃねーかと思っていた。


でも咲人と仁は人柄も何もかも全然違っていたから、
同じ結果が待ってるとは思いたくなかったし、思えなかった。


だけど、咲人が会おうと行動に起こさないのは
彼もオンラインでの疑似恋愛を楽しんでいるだけで、それで十分なのかなって。


でも、じゃぁそれだけで人はこんなにマメに連絡取れちゃうもの?
自分の睡眠を削ってまで?
好き好き言うものなのかなぁ。


考えれば考えるほどわからなくなった。



ある日、私たちは3度目のビデオコールをしていた。




「そういえば初めてのビデオコールはどうだった?あなたにとって」



そうきかれた咲人は相変わらずのさしてハンサムじゃない顔で、首を傾げた。
あたし、本当にこの人のこと好きなんだろうか。笑



「どうって?」

「んー、たとえば、写真と違ってガッカリしたとか色々あるじゃん」




咲人は、うーんとちょっと考えてから答えた。




「結論から言うとよかったよ。話してから、君と話したいっていう気持ちが増した」

「本当?」

「おう。3倍になった」



と、手で表現した。(笑)



「それは良かったわ」

「うん。………時々、それと逆なこと起こるからな(笑)」

「は?あぁ、ガッカリするってこと?」

「そう(笑)俺の友達がこんな話ししてくれたんだけど……」




咲人の話によれば、彼はオンラインでひどく美しい女性に出会ったらしい。
2ヶ月ほど愛を育む会話を楽しみ、何度か写真を交換し合い、
彼はすっかり恋に落ちていた。
だがしかし




「ある日、奴はビデオコールを提案した。そりゃそうだ、彼女を見たかったんだ。
でも彼女は断固として拒否し続けた。
でも奴も譲らなかった。
ついに彼女は承諾していざ電話が始まったんだが……」


咲人は堪え切れないように震えながら言った。


「画面に出てきたのは、超ーーー長い髭を生やした中年の男だったんだとさ」



(・▽・)



「…えっ、えぇぇーーーー!?」

「マジかよって思うよな(笑)ははは」

「そ、それは可哀想〜。彼、きっと恋してたのに。。。」

「ま、そうだな」

「で、でもそのヒゲは何目的でそんな事してたんだろう?」

「知らねーよ(笑)でもまぁ、男が好きなんだろうな。
友達も何度か自分の写真送ったって言ってたからな」




あ、あぁそうかぁ。。。
可哀想だけど、中年ヒゲ男の生贄になっていたのね。。。
どんな写真送ってたのか気になるけど言わずもがなかな(笑)


暫くして、私がアクビをするとそれを見て咲人は吹き出した。



「もう寝ろよ(笑)」


私はソファの上で体勢を直して、ニヤリと不敵な笑いを見せた。


「そ、の、前に。あなた今日、十分日本語の練習した?」



咲人は笑った。



「いや?」

「じゃ、眠いけど、寝る前に少しだけ練習に付き合ってあげる」

「マジで?ずいぶん親切な先生だな」

「ええ勿論」



すると咲人はからかうように、どうしてそんなに親切なの?と聞いた。
私は物ともせず、学生を愛しているからよん、と答えてやった。
咲人はただでさえデカイ目を見開いた。




「はー?マジで?ずいぶんいい先生だな」

「とーぜん。Why not?」

「はは、確かに君はいい先生だよ。じゃぁ、練習させてもらおうかな」




画面の中の咲人が、私を見つめ直して、ゆっくり喋り始めた。




「咲人は、メイサが、好き。 合ってる?」





もう何度も繰り返された言葉だけど、やっぱり、声だけじゃなくて
こうして見つめて言ってもらえると
すごく、嬉しくて
すごくすごく愛おしく感じた。


私は少し照れ笑いしたけれど、咲人は真っ直ぐこちらを見つめたままでいてくれた。
彼のキャラクターからすると、苦笑したり誤魔化したりしそうなものだけど、
それはもう散々今までの会話でしたから(笑)
少し素直になれていたのかもしれない。




「いいよ、合ってる」

「よかった」

「ねぇサ……」




ブツっと





突然、電話が切れた。
しまった。話に夢中になって(あと眠くて)電池が空っぽなのに気づかなかった。
こうなってしまうと今更充電器につないだところですぐにはリカバリーしてくれない。
再起動するのに5分はかかるだろう。



仕方がなく携帯と充電コードを持って寝室へ移動した。
枕元で充電しながら、私は寝る支度を始めた。
確かにもういい時間で、咲人にとってはもっといい時間だ。
さっさと寝ないとお互いの明日に差し支える。(ていうかすでに差し支えてる)


私はため息をついた。
良いところだったのにぃー。



咲人の日本語を聞くのは大好きだ。
電話を切る前に毎回やるこの儀式は、私達の気持ちを強くしてくれていると思う。
言霊という言葉があるように、誰かを思う気持ちを口に出すことは、
不確かだったそれを形あるものにして生み出すような行為だと思う。
メイサが好きだと言われるたびに、私の心に咲人の気持ちが積もっていくようだった。
咲人は毎回たくさん褒めてくれたし、好きだと言ってくれた。
褒めてくれるたびに、たまらなく会いたくなった。


突如、パッと携帯が光った。
ようやくリカバリーしたようだ。
すぐにトーク画面を開き、ゴメンネと書き出した。



『大丈夫。もう寝よう。メイサの目、もうすごく眠そうだったし、俺の目も同じだったから(笑)』



すぐに咲人らしい優しい返事が届いた。
咲人らしいって書いたけど、結構辛辣なこと言う人だったよな。
きっと、好きな子には優しいだけ、だな。



私はせっかくのラブリータイムが終わってしまったことがとても残念で、
だけどここからまた話すのはちょっと現実的ではなかったので、
仕方がなくベッドに横になったが、胸の中いっぱいの気持ちが消化できなくて、
吐き出した方がいいと思った。
形あるものにしてしまったほうが、いいと思った。



今まで一度も私は



言ったことがなかったけど





『咲人、私はもっとあなたと話したかった。すごく』




すぐに既読マークがつき、彼が何かを入力している事も分かった。
けれど、それを待たずに私は続けた。







『それから』








『私は咲人が大好き!』






ピロリン






『俺も』






と、



嬉しそうな絵文字付きで送られてきた2文字は



私の心を明るく優しく、温めてくれた。




咲人



咲人



いつになったら会えるの




会いたいって思わないの?




私だけバカなのかな。





そんな日々は




ある日突然終わりました。





続きます。


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