6月29日 編集手帳
トイレには、
女神様がいる。
だから、
毎日きれいにしたら、
女神様みたいにべっぴんさんになれる―。
亡き祖母の教えを歌った植村花菜さんの『トイレの神様』である。
紅白に出場するヒット曲となったのは、
似たような思い出を持つ人が多いからだろう。
わが家では、
母が「男前になれる」と言って、
トイレ掃除を推奨した。
あれから、
うん十年。
力及ばず、
母の野望は叶かなえられなかったが、
人様が嫌 がることをすすんでやる尊さは学んだつもりである。
女性活躍相が設置した有識者会議が、
日本のトイレを海外に売り込むアイデアを提言した。
快適さをPRして温水洗浄便座の輸出増につなげるという。
政府の成長戦略にも盛り込まれる。
近頃、
便座の進歩はめざましい。
個室では自動でふたが上がる。
立てば自然に水 が流れる。
母国にない心地よさを土産にしたいと、
隣国の客人が“爆買い”するのもうなずける。
だが、
快適の秘訣(ひけつ)はハイテクだけではあるまい。
<その家の人を見るよりトイレ見よ>(TOTOトイレ川柳 大ちゃん)。
家々で育まれる当たり前の心がけも、
世界に伝えたい日本の美徳である。