8月1日 キャッチ!ワールドEYES
議会下院選挙を経て政治の大きな転換tンを迎えているパキスタン。
クリケットの元スター選手 カーン氏の政党「正義運動」は
今回の議会下院選挙で116議席を獲得。
第3党から第1党へと大きく躍進した。
それを受けて
これまでに無所属議員の取り込みや
少数政党との連立交渉で大筋合意し
議会でカーン氏は首相に選出される見通しである。
軍事政権時代を除き
これまで2大政党が交代で政権をになってきたパキスタン。
カーン氏はなぜ多くの支持を獲得したのか。
(「パキスタン正義運動」 イムラン・カーン氏)
「もがいて浮き沈みする段階もあったが
神は私に次のステージを与えてくれた。
権力を得て公約や理念を実現する時だ。」
議会後のテレビ演説で勝利宣言を行なったイスラン・カーン氏(65)。
政治の改革に向けて不退転の決意をにじませた。
カーン氏は地元で人気のスポーツ クリケットの元スター選手である。
1992年にはキャプテンとしてワールドカップで優勝を達成するなど
“国民的英雄”を呼ばれている。
1996年 反汚職というクリーンなイメージを掲げ
新たな政党「正義運動」を起ち上げ政界に転身。
2002年の議会下院選挙で初当選した。
その後 既存の政党とは一線を画す姿勢で支持を訴えてきたが
2大政党の前にその勢力は伸び悩んでいた。
そのカーン氏が今回の選挙を前に特に強調したのが
“若者の雇用の改善”だった。
(カーン氏)
「最大の挑戦は若者世代に雇用を与えることだ。
そのための対策を私たちは打ち出している。
ばく大な人口を強みに変える必要があるのに
これまで何も対策を講じられてこなかった。」
去年 人口が初めて2億を超えたパキスタン。
厳しい経済状況のなか
増え続ける若い世代の雇用を将来にわたって安定的に確保するのだ容易ではない。
カーン氏は
低い識字率の向上など教育の充実や職業訓練の強化などを通じて
若者が就職しやすい環境を整える必要性を訴えた。
こうした若者の実情を踏まえた姿勢が多くの共感を得たものとみられる。
(有権者)
「汚職や失業が多いので
社会に不安が広がっています。
過去の政権には失望しました。」
もうひとつカーン氏が強く訴えたのは
結党以来の公約である“汚職の撲滅”である。
パキスタンでは長年与党の汚職体質が続いてきた。
一昨年にはいわゆる“パナマ文書”によって
当時のシャリフ首相が不正に得た資金で英国で不動産を購入していたことが明るみに。
シャリフ氏は首相を辞任。
6月には禁錮10年の有罪判決を受けた。
カーン氏が痛烈に批判してきた与党の汚職の実態が暴かれたことで
国民の幅広い層の支持がカーン氏に集まった。
(有権者)
「私たちが求めているのは変革です。
この30年 汚職が横行しています。」
今回のカーン氏の躍進を語るとき無視できないのが軍の存在である。
独立以来 過去3回にわたってクーデターを起こすなど
パキスタンの政治に強い影響力を持ってきた軍は
対立するインドに融和的な姿勢を示したシャリフ元首相に強く反発していた。
政治基盤が弱いカーン氏を取り込むことで
外交や安全保障の手綱を握りたいという思惑があると見られている。
外交で焦点となっているのが
隣国アフガニスタンで軍事作戦を続けるアメリカとの関係である。
トランプ政権はパキスタンについて
“過激派に安全な避難場所を提供してきた”と非難。
武器の供与や経済援助の凍結を凍結するなど
両国の関係はぎくしゃくしている。
カーン氏は撤退時期を明示せずに関与を続けるトランプ政権を批判。
今後 アフガニスタンの和平をめぐって主導権を確保しておきたい軍の意向をうかがわせた。
(カーン氏)
「アメリカ軍の駐留が長引けば
それだけ政治的解決のチャンスは減る。
もし米軍が撤退期限を定めれば
タリバンを含めアフガニスタン側と交渉することができる。」
政治と経済の現状に疲弊したパキスタン国民の期待のどう応えるか。
手腕が問われている。