12月1日 NHKBS1「国際報道2020」
次世代のエネルギーとして注目される水素。
日本やEUなどが2050年までに“温室効果ガスの排出実質ゼロ”を目指し始めたなか
水素を使って温室効果ガスを減らそうという動きが本格化している。
その1つが水素を使った自動車である。
フランスの自動車の耐久レース
ル・マン24時間レース。
この過酷なレースに水素を使ったレーシングカーが挑もうとしている。
水素を燃料に走る水素レーシングカーのイメージ映像。
車から排出されるのはきれいな水。
“紅茶も飲めるほど不純物が少ない“とアピールしている。
2年前から開発が進められている最新型の水素レーシングカー。
試乗すると
「なんかちょっと狭いですね。」
「動き出しました。
ほとんど音がないですね。
エンジン音は感じません。」
「すごい・・・加速を感じます。」
「おお・・・いまカーブを曲がってるんですけどもすごい重力を感じます。」
最高速度はじ時速300km。
3秒余りで時速100kmに達するという。
「すごかったです。
スピードがすごくてもう夢中でした。」
この車の心臓部の仕掛けは
「水素タンクは全部で3つ積まれています。」
車内に注入さえた水素。
燃料電池の中で酸素と化学反応を起こし電気が発生する。
そしてこの電機がモーターを回転させる。
地球温暖化の原因となる二酸化炭素などは出さず
脱炭素社会の実現に向けて注目されている。
車の開発を進めているのは「ル・マン24時間レース」を主催する団体である。
2024年に水素を燃料にした自動車のレースを新たに開催することを目指している。
今回のプロジェクトにはエネルギー大手の「トタル」やタイヤメーカーの「ミシュラン」なども参加。
レースを通じて車の性能を高めていく計画である。
(プロジェクトの開発担当者 ニクロさん)
「水素や燃料電池は伸びしろがある技術。
開発を進めるにはレースをするのがベストだ。」
いま課題の1つとしてあげられているのが水素の補給である。
1回最大で4分ほどかかる補給作業。
1分1秒を争うレースでは
時間をいかに短くするかが重要である。
燃料となる水素は圧縮した形でタンクに入れられる。
しかし急激に入れるとタンク内の温度が高くなってしまう。
安全性を高めながらどう補給時間を短くできるのか
さまざまな角度から研究が続けられている。
(水素スタンド 開発担当者)
「目標は
2024年には
ル・マン24時間レースを走る車に2分以内で必要な水素を補給できるようにすることだ。」
(プロジェクトの開発担当者 ニクロさん)
「二酸化炭素の排出がゼロで信頼でき経済的な車を誕生させることが我々の挑戦だ。」
フランス西部にあるルマン市。
博物館には100年近く続く24時間レースの歴史が記録されている。
館長のブリゴさん。
“24時間走る続ける過酷なレースは自動車の技術革新に一役買ってきた”という。
(ル・マン24時間レース博物館 ブリゴ館長)
「このエンジンにはパワーを増やす2つのターボが右と左にある。」
車を加速させるターボ技術もその1つ。
ル・マンのレースで注目され
その後世界各国のチームで使われるようになった。
(ル・マン24時間レース博物館 ブリゴ館長)
「ル・マン24時間のような厳しいレースでは
自らの技術を試し
より信頼できる効率的な技術が生まれる。
ル・マンで証明された技術は一般の車にも応用されていく。」
長年24時間レースを支えてきたルマンの町。
ここでも水素を使った自動車の実用化が進んでいる。
市内を走る路線バスも誕生した。
1回の補給で250kmほど走ることができ
通常の路線バスとほとんど変わらないという。
ルマン市の近郊では海水から水素を作る工場の建設も始まった。
水素はほとんどが化石燃料で作られているが
この工場では風力を使って発電し
二酸化炭素を出さない計画である。
(水素製造会社 ゲネCEO)
「化石燃料を治療して水素を製造すれば
ガソリンと何も変わらない。
だからこそ二酸化炭素を排出せず製造される水素が必要だ。」
水素レーシングカーの開発をきっかけに広がる取り組み。
脱炭素社会の実現に向けて動き始めている。