12月2日 NHKBS1「国際報道2020」
アメリカのロックバンド BON JOBIのヴォーカル ジョン・ボン・ジョヴィさん。
ジョンさんは間もなくデビューから40年。
ロックのスーパースターにとっても今年は苦しい年だった。
新型コロナウィルスの感染拡大
そしてアメリカ社会を揺るがした黒人差別や社会の分断。
この激動の年にジョンさんは新しいアルバムを発表した。
その名も「2020」。
いったんは完成したものの新型コロナ禍を受けて発表を延期し
ジョンさんは2曲を加えた。
ジョン・ボン・ジョヴィさんが拠点としているニューヨーク。
アメリカの中でも特に新型コロナが猛威を振るった都市の1つである。
バンドのメンバーやジョンさんの家族も感染。
予定していたツアーは中止に追い込まれた。
Q. 息子さんが感染されたと聞きましたが今は大丈夫ですか?
(ジョン・ボン・ジョヴィさん)
「ええ 今は皆元気です。
ビジネスにとっては厳しい環境が続いていますがなんとかやっています。」
2020年10月に発表された新しいアルバム。
コロナ禍と正面から向き合ったのがこの曲である。
(Do Wyat You Can ユニバーサル・ミュージック)
♪ 普段することができないときは
今できることをしよう
これは私の祈りでなく
思いついたことなんだけど
Do What You Can
新型コロナのせいで普段の仕事や行動ができないなら
“代わりにできることをやろう“。
ジョンさんはそう呼びかけた。
この曲が生まれたきっかけ。
それは妻のドロシアさんが撮った写真だった。
洗いものをするジョンさん。
彼にとってはこれが“今できること”だった。
この写真にドロシアさんが添えたメッセージが曲名となったのである。
実はジョンさんは15年前から「 JSBソウル・キッチン」と名付けたレストランを運営している。
目的は低所得の人たちへの支援。
メニューには値段が書かれていない。
寄付をできる客は寄付をする。
そうした余裕がない低所得の人でも同じ料理を無料で食べることができる。
(ジョンさん)
「もし来ることができたら20ドル寄付をしてほしいのです。
その20ドルがあなたと隣の誰かの食事費用を賄います。
一方 寄付ができない人はボランティアでレストランを手伝えます。
しかしコロナのせいでボランティアがいなくなりました。
そこで毎日私が皿洗いをしていたのです。
そうやってソウル・キッチンはパンデミックでも運営を続け
何千もの人々に食事を提供できました。」
こうした経験の中で生まれた Do What You Can。
“コロナ禍でも人は何かを成し遂げられる“
そういうメッセージを込めた。
(ジョンさん)
「曲を書き始めてから
ここアメリカでは実に多くの出来事が起きました。
私はこれは時事的なアルバムなのだと認識しました。
私は発表を差し止め
曲作りを続けました。
一部の曲は歌詞を書き直し
新しい曲も書き続けたのです。」
曲作りはファンとの共同作業でもあった。
コロナの感染が急拡大した3月
直面している困難を教えてほしいと呼び掛け
歌詞に反映させた。
(Do What You Can ユニバーサル・ミュージック)
♪ 窓越しに見て何をするべきか考えても
仕事には1年か2年は就けない
Q.ファンと一緒にこの曲を書いたということですね。
その過程はいかがでしたか?
(ジョンさん)
「いったんは曲を書き終えたのですが
我々はまだ特別な事態を経験している最中だとも感じていました。
日本の皆さんもニュージャージーの人たちも
みな同じ事態をくぐり抜けています。
そこではじめの1小節と歌詞をネット上に掲載してこう書きました。
『歌詞を書いてください ご自身のストーリーを書いてください それを私が歌います』と。
ファンとのやりとりがあり
ファンが送ってくれたストーリーは私と共通するような体験ばかりで
なんて特別な曲なのだと気づかされたのです。」
この曲でとりわけ強い印象を受けた一節。
(DOo What You Can ユニバーサル・ミュージック)
♪ ソーシャル・ディスタンスは保つけど
世界が必要としているのはハグだ
ワクチンが見つかるまで
愛情の代わりはない
自分と家族を愛そう
隣人と友だちを愛そう
そろそろ見知らぬ人を愛するときじゃないか?
彼らはまだ巡り会う前の友人たちなんだ
Q.“愛情の代わりはない”という歌詞でどのようなメッセージを伝えたかったのですか?
(ジョンさん)
「私たちは皆限界まで追いやられました。
このウィルスの前では私たちは平等なのです。
日本人であろうとアメリカ人であろうと
共和党員でも民主党員でも関係ないのです。
コロナは相手を選びません。
そのような状態に追いやられ
人々は家族・健康・友人などが最も大切だと気づかされました。
それらに代わるものはないのだと認識すべきです。
仕事・レコード制作・旅行に忙しく駆け回って過ごすことよりも大切なのだと。
そこには人を謙虚にさせる要素があります。」
世界的なロックスターが
自分にできることとして
低所得者向けのレストランを運営する。
それはどういう意味合いを持つのか。
Q.ソウル・キッチンはあなたにとってどれほど大事なのですか?
(ジョンさん)
「気持ちの上でとても大切です。
これまでにないような喜びを与えてくれました。
いいことをするとステージで大声でシャウトするのと同じくらいいい気分になると気づきました。
その活動がひとりひとりの人生に大きな違いを生み出している。
そう考えるのが魔法のようですね。」
Q.巨大なステージでたくさんのファンに囲まれている時の喜びとはまた少し違いますか?
(ジョンさん)
「どちらも大きな喜びです。
私にとってステージに立つのはすばらしいことで
私はそれが好きだし
得意でもあります。
ただ
それは仕事であり
ありのままの自分とは違うように感じるのです。
支援活動は私が私らしくあるために取り組んでいることなのです。」
(Do What You Can ユニバーサル・ミュージック)
♪ 普段することができないときは
今できることをしよう