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震災と市場原理主義

2012-04-15 16:20:00 | 報道/ニュース


  4月1日 サンデーモーニング


  宮城県石巻市の市内中心部から5キロほど離れた新興住宅地である
  須江しらさぎ台。
  今年1月時点での公示地価で全国で最も高い60,7%の上昇率を記録した。

  不動産業者
  「震災前 土地は1件も売れなかった。
   震災後は77件お求めいただいている。」

  かたやここから国道を挟んでほど近い海沿いの吉野町は
  地価が大幅に下がり全国で下落率3位となった。
  市内の高台では地価高騰が進む一方
  大はばな地価下落に見舞われた沿岸部。
  石巻市や気仙沼市などの被災地では急速に地価の二極化が進んでいる。
  しかしこうした状況は
  今後、自治体が行なう高台移転のための用地買収にも影響し
  復興への大きな足かせとなる懸念がある。
  
  1993年7月の北海道南西沖地震で津波の大きな被害を受けた奥尻島では
  被災後の地価上昇によって町の土地取得費用が想定を大きく上回った。
  その結果 高台移転のための土地取得に8年も要した。

  値上がりを見越した業者による投機的な土地取引が背景にあるのでは
  とも言われている。
  しかし災害と言う非常時にその機会を利用し
  経済活動によって利益を得る行為は今回の震災に限らない。
  
  2004年12月のスマトラ沖地震で
  津波の被害を受け3万5千人が亡くなったスリランカは
  復興の名のもとに巨大資本による沿岸部のリゾート開発で
  そこに暮らしていた漁師たちは住居も職も奪われた。
  2005年8月のアメリカ南部を襲ったハリケーン・カトリーナでは
  ニューオリンズの低所得者のエリアが甚大な被害を受けた。
  不動産業者が好機ととらえ跡地へのマンション建設計画を進めた。

  惨事に便乗するような資本家たちの状況を著書のなかで克明に描いたのが
  カナダのジャーナリスト ナオミ・クラインさん。
   社会が破壊されるほどの大惨事
   人々が精神的な拠り所も物理的な居場所も失って
   無防備な状態にあるその時こそ
   彼ら(資本家)にとっては
   世界改変の作業に着手するチャンスなのである
                     「ショック・ドクトリン」より


  彼女が指摘したのは80年代以降世界に広がった市場原理主義の問題点だった。
  規制を排するなど市場のメカニズムに任せ
  自由競争を促せば社会は豊かになる。
  日本でも小泉政権当時こうした市場原理主義的な政策が推し進められた。
  しかしクラインさんはこうした市場原理主義が行き過ぎると
  人の不幸さえ利用する風潮が生まれると訴えた。
  
  大きな災害の際、
  その機会を利用して経済的利益を手にすることを災害資本主義とよび
  その危険性を指摘する。

  京都大学大学院工学研究科 藤井聡教授
  「市場原理主義の進行形として『災害資本主義』がある。
   資本化の論理としては合理的だが
   暴走させると大資本家は金儲けできるが
   被災者は不幸になる。」

  震災のような非常時にしばしば暴走する市場原理主義。
  これをコントロールすることが政治の役目だと藤井教授は言う。

  「震災復興の常識から考えると迅速な対応が必要だった。
   政治がまず復興・復旧を遂げ
   基礎体力がついたときに資本主義的なものを入れる。
   資本主義のレベルを調整することが必要で
   これを行なうのが政治の仕事。」

    



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