2021年6月16日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
気候変動対策の切り札とされる水素。
その新しい活用法として今注目されているのが
水素と二酸化炭素から作られた透明な液体。
ガソリンや軽油として使うことができ
e-fuel と呼ばれている。
なぜ注目なのか。
多くの車はガソリンなどの化石燃料を燃やして走り
排出された二酸化炭素は地球温暖化をもたらす要因の1つとなっている。
この燃料をe-fuelに換えると
化石燃料と同じように二酸化炭素は排出するが
これを大気中から回収して水素とまた合成することで再びe-fuelを作ることができる。
二酸化炭素を循環させることで排出量を実質0にすることができる。
さらにこの水素は水を電気分解して作るが
この電力は風力や太陽光など再生可能エネルギーでまかなう。
既存のエンジンがそのまま使えて
二酸化炭素も増やさないとして
各地で緊急開発が進められているe-fuel。
水素と二酸化炭素から作るe-fuel。
開発が最も進んでいるのがヨーロッパである。
(みずほリサーチ&テクノロジーズ 米田さん)
「今ヨーロッパが先行して実証している。
2030年に自動車にして数千~数万台分という目標はたてられている。
今後10年がチャレンジ。」
ドイツの実証実験施設。
ドイツ政府の後押しを受けて企業や大学が共同で開発を進めている。
ヨーロッパで開発が進んでいる背景には
e-fuelには欠かせないクリーンな電力が豊富に生み出されるようになっていることがある。
(みずほリサーチ&テクノロジーズ 米田さん)
「欧州中心に再生可能エネルギー普及が進んでいる。
水素を安く作れる見通しがかなり具体的に見えてきている。
欧州水素戦略のなかで
2030年には再生可能エネルギーで水素1,000万トン作ると考えられており
約5兆円を官民で投資して普及させようという計画である。」
普通のガソリンや軽油として使えるe-fuelには大きな利点があるという。
(みずほリサーチ&テクノロジーズ 米田さん)
「e-fuelの一番のメリットは既存のインフラを使えること。
ガソリンスタンド ガソリンを運ぶインフラはほぼそのまま使える。
化石燃料の需要が減少するなかで石油会社は
e-fuelは事業の選択肢として考えられる。」
その一方で大きな課題として米田さんが指摘するのがコストの高さである。
(みずほリサーチ&テクノロジーズ 米田さん)
「全体的にコストを下げなければならない。
水素にする
水素を二酸化炭素にする
その電解装置のコストが高い。
二酸化炭素を回収するコストが高いというのもある。
大気中の二酸化炭素の濃度は約0,04%。
その薄い二酸化炭素を濃縮して回収するには多くのエネルギーが必要。
そのあたりが技術革新に求められている状況。」
e-fuelをはじめ様々な分野で活用が広がりつつある水素。
太陽光や風力発電による発電の不安定さの解消にもひと役買うと期待されている。
(みずほリサーチ&テクノロジーズ 米田さん)
「再生可能エネルギーは捨てている電力もある。
よりたくさん長い間貯められる水素がエネルギー貯蔵の候補として考えられている。」
「水素を使った発電施設
水素で駆動する電車
水素は必要不可欠なエネルギーである。
水素を活用する社会を実現しなければいけない。」
いま水素の活用はe-fuel以外にも大きく広がっている。
すでに実用化されている燃料電気自動車
水素を直接燃焼させる火力発電所
製鉄の分野でも大量に二酸化炭素を排出するコークスの代わりに水素を使う技術が開発されている。
こうした様々な活用法を組み合わせて水素の利用を増やしていくことが
脱炭素に向けた水素戦略になっている。
水素の活用はヨーロッパだけでなく
中国やアメリカ
現在は産油国の中東などでもさかんに進められている。
日本でも世界に先駆けて技術開発が進んでいる分野もあるという。
各国がしのぎを削るなかで
競争から画期的な技術が生まれてくることが期待されている。