12月1日 BIZ+SUNDAY
岡藤社長は自身の経営哲学を社員に浸透させるためにある改革を行った。
夜の残業禁止である。
国内2500人の社員に対し夜8時以降の残業は原則禁止。
夜10時以降は全館消灯。
必要な場合は早朝勤務を認めている。
早朝の時間外手当は5割増しにした。
夜遅くまで働くのは当たり前という商社マンの働き方を根底から変える今回の改革は
働き方だけではなく社員の生活スタイルそのものまで見直そうというものである。
夜の残業禁止が始まった10月1日。
早朝から社員が次々と出社していた。
早朝勤務をした人には会社が無料の朝食を用意している。
ITビジネス第一課の山田哲生さんは朝6時から仕事に取り掛かった。
「早朝勤務は初めてなので新鮮さがある。
頭はクリアかなと思う。
人もいないし仕事がはかどると思う。」
この日の夜 8時前次々と職場を後にする社員たち。
山田さんたちはぎりぎりまで机に向かっていた。
この日95%の社員が夜8時までに退社した。
10月中旬 山田さんの課では働き方の見直しを進めていた。
ITビジネス第一課 松永公人課長は残業が増える原因だった夜の会議を大幅に減らした。
その一方で席替えを実施。
交渉が大詰めを迎えていた山田さんを隣に移し打ち合わせをしやすくした。
(ITビジネス第一課 松永公人課長)
「不安は残っているが前向きに取り組み
今よりいい成果を出そうと始めている。」
入社1年目の社員も仕事の優先順位を強く意識するようになった。
「前はちょっと雑多になっていた。
業務を5個に区切ってTo Do管理している。」
10月の集計では夜8時過ぎて残業した社員は1日あたり91人。
1年前と比べて5分の1にまで減った。
(伊藤忠商事社長 岡藤正弘社長)
「残業禁止は社員は総じて歓迎。
ほぼすべての経営者の方がいい話だとおっしゃる。
“勝って兜の尾を締めろ”
いい時にこそ改革改善をしようということ。」
「接待も仕事と同じでメリハリをつけて接待の中身を濃いものにしないとダメ。
お客さんも迷惑。
呑んだり食べたりすると本音の話が出来て親しくなる。
これは大事。」
「残業禁止はマイナスはないと思う。
受験勉強と同じで夜勉強して朝ボケーッとして学校に行くよりは朝起きて勉強するほうが効率がいい。」
「改革の原動力は早く手を打つ。
すばらしい会社が打つ手が遅れたために苦しい目に合っているところがたくさんある。」
「我々はとにかく商品であれ資本参加をした会社であれ
我々の手で付加価値をつけようと考えている。
付加価値をつけることによって商社の機能を発揮する。
我々はその付加価値を進化させていけるような会社を目指したい。
強いところでその機能を発揮する。
その機能をその他のところがフォローする。
それによって全体がレベルアップする。」