ものぐさ屁理屈研究室

誰も私に問わなければ、
私はそれを知っている。
誰か問う者に説明しようとすれば、
私はそれを知ってはいない。

「女神の見えざる手/Miss Sloane」

2021-02-19 00:00:00 | 映画
*2021.2.19追記 
 
新コロナ騒動にせよ、森喜朗会長辞任劇にせよ、アメリカの大統領選挙騒動にせよ、SNS等の通信技術革新によって、洪水とも言いべき情報の氾濫の最中にあっては、”事実”というものが、如何に不確かなものであるのかということを、改めて目の前に突き付けられているように感じる今日この頃である、そう思うのは私だけであろうか。

なお、森氏の件の発言については、あるいは元の発言自体を確認をしていない方がいるかも知れないので、リンクを貼っておくので、これが果たして巷間言われているような女性蔑視発言に当たるのかどうか、この機に今一度考えてみていただきたい。

「森氏 3日の発言「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」

そして、アメリカの大統領選挙であるが、いろいろな意見があろうが、これは信じる信じないといったことではなく、これも結局不正があったのかどうかという”事実”に帰着すると至極単純に私は考えている。

この件に関しては私自身は相当に疑わしいと思っているが、今現在の時点においては、勿論確実なことは言えはしない。

この選挙不正については「証拠もなしに」と散々言われてきたが、前に述べたように、弾劾裁判が反トランプ側の”切り札”であったと思われる現在、いよいよこれからトランプ側が”切り札”を出してくると考えるのは、むしろ戦術上至極もっともな考え方のように思われる。

以下のトランプ側の選挙不正に関する裁判の一覧では、26がactiveになっていて、これから争われることになる。恐らくこれらの裁判においてトランプ側の”切り札”が出てくることになるのではないか。勿論、立証責任は訴えを起こしたトランプ側にあるので、疑わしいというというだけでは、推定無罪=敗訴になる可能性が高いことは言うまでもない。

2020 US Presidential Election Related Lawsuits

そして、”切り札”となるのは、具体的なドミニオン機器の解析による不正行為の証明であろうが、以下のMike Lindellのビデオが参考になろう。英語がわからない方も、一つ目のビデオAbsolute Proof Trailerの13:07~と19:46~辺りを見れば、それがどういったレベルのものであろうか大体想像がつくであろう。おそらくもっと詳細なものが裁判で提出され、その証拠能力が争われることになると思われる。

Absolute Proof

さらに注目すべきことは、トランプは辞める直前の1月18日に「法執行官、裁判官、検察官及びその家族を保護する大統領令」を出していることである。つまり、今後行われるであろう裁判を審議する裁判官への脅迫や脅しを排除する手を、事前に打っていたということになる訳である。

Executive Order 13977—Protecting Law Enforcement Officers, Judges, Prosecutors, and Their Families

といったようなことで、次の大統領選挙にトランプが出るのではないかといった早まった観測もあるようだが、いやいや2020年のアメリカ大統領選挙自体が、未だ決着がついていないのではないかと考える次第。


*2021.1.15「オバマゲート」諜報書類 機密解除

FISA Abuse Investigation


*2021.1.14追記 

この映画はは2016年に制作されたものであるが、アメリカの大統領選挙結果決着前夜の現在においては、いよいよその作品としての光芒、面白さを増して来ているように思われる。未見の方は、ぜひ見ることをお勧めする次第である。



Lobbying is about foresight, about anticipating your oponents' movesand devising countermeasures.
The winner plots one step ahead of the opposition and plays the trump cardjust after they play theirs.
It's about making sure you surprise them and they don't surprise you.

ロビー活動は予見すること、敵の動きを予測し、対策をを考えること。
勝者は敵の一歩先を読んで計画し、敵が切り札を使った後で自分の札を出す。
そして、不意を突かれたのが、どちら側であったのかが白日の下になる。


勿論、ことは熾烈な政治権力闘争であるから、最終的に勝敗がどちらの側に転ぶのかは神のみぞ知る、事後的にしか判らない事はいうまでもないが、色々な読み筋を考えると、この主人公の言葉通りのシナリオに沿って事は進んでいるように、私には思われてならない。

果たして、この後”激震”が起こるのかどうか、まだまだ目が離せない状況にあると個人的には考えている訳である。








いやあ、久しぶりにすこぶる面白い映画を見た。


「天才的な戦略を駆使して政治を影で動かすロビイストの知られざる実態に迫った社会派サスペンス」とのことであるが、これ以上書くとネタバレになるので、見ていない方は、これくらいでの事前知識だけで見る事をお勧めする。2016年制作。

以下、なるべくネタバレにならないように感想を記すが、それでも最低限作品の幾つかの特徴には触れざるを得ないので、以下の文章は鑑賞前には読まない方が良いだろうと改めて釘を刺して置く次第である。





中で、主人公がJohn Grisham を読んでいるがシーンが出て来るのに気付いた人も居られるだろう。John Grisham と言えば、私には第一作「法律事務所/The Firm」の印象が目覚ましい。尤も、最近の作品は読んでいないので何とも言えないが、見終ってみて、コン・ゲームとしてのストーリーの建付けは、グリシャムのこの傑作処女小説を思わせるものがあると思うのは、私だけではないだろう。



これは一例だが、かようにJohn Grisham という名前をさり気無く観客に示し、主人公の性格と同時にこの映画自体の性格をも暗に示唆しているのが良い例で、スピーディーかつ全く無駄なシーンやセリフが一切ない緻密なストーリー展開に危く振り落とさるところだった。危ない、危ない。

色々な伏線を確めるために、すぐさまもう一回見直して、さらにもう一回見直す羽目になったが、それ程脚本が素晴らしいとも言える。勿論、編集も素晴らしいことは言うまでもない。脚本はジョナサン・ペレラ。この名前は憶えて置こう。

色々な見方が出来ようが、主人公スローンと法務担当のポスナーのバディー・フィルムとしても見ることができる。会話の中でソクラテスの名前が数回出てくるが、聴聞会を裁判に見立てれば、さしずめポスナーはプラトンの役回りであろうか、そういったらちょっと穿ち過ぎな解釈かな。つまり、この映画は「ソクラテスの弁明」ならぬ「スローンの弁明」である、と。


まず見終って強い印象を受けたのは、主人公の際立った人物設定、彼女の行動が「理念」に基いているという点である。あるいは「大義」と言い換えてもいい。

この点でも主人公はソクラテスを思わせるが、大体こういった設定の場合、よくあるのは動機の精神的原因説明として、例えば主人公の過去に身内だとか知り合いだとかに銃乱射事件の犠牲者がいて、そのシーンがフラッシュバックされて示されるといった技法が使われる事が多いが、主人公はそういった動機から行動しているのではないことが一連の会話によって再三念を押すようにして一応は描かれてはいるが、そのことがが本心であった事が判るのが最後の最期になってからであるような描き方をしているのは素晴らしい。またこの主人公の人物設定を際立させるために、まさしくそういった人物としてエズメという脇役が対照的に設定されていることは明らかであろう。このエズメとの対比に置いて、この主人公の人物設定が一層際立つことになる訳で、聴聞会が終わって、場内で主人公とエズメが遠目に見つめ合う印象的なシーンが出て来るが、思わせぶりな目くばせだとか軽くうなずいてみせるといったベタな演出を取っていないのも非常に好ましい。エズメが目をそらして去っていくのであるが、これでこそ交差した二人の人生、それぞれの生き方の違いが際立つというものである。


そして、最終的に見終わって私が考えたのは、彼我の文化的な違いである。

こういった「理念」や「大儀」、「思想」を体現した人物というのは、「空気」で動いている日本社会においては現実から遊離した絵空事でしかないし、この映画で描かれているようなインテリジェンス活動の伝統を持たない日本では、これもまた非現実的な絵空事でしかないが(日本ではそれらは普通「陰謀論」としてカテゴライズされ一蹴されてしまうのが落ちであって、そのことはスノーデン問題に関する無関心でも明らかであるし、そもそも日本には”ロビイスト”という言葉自体が存在しない。ましてや存在をや)、「戦術」や「戦略」に基づく「共同謀議」がせめぎ合っている彼の地においては、この映画はもっと現実的な意味合いを持った映画として受け取られているのではないか、そう私には思われたということである。2018.11.14






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